鈴木睦子『スリランカ 紅茶のふる里』~セイロンティーの歴史や現在の農園生活や経営事情を知れるおすすめ本!

紅茶のふる里 スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

鈴木睦子『スリランカ 紅茶のふる里~希望に向かって一歩を踏み出し始めた人々』概要と感想~セイロンティーの歴史や現在の農園生活や経営事情を知れるおすすめ本!

今回ご紹介するのは2015年にアールイーより発行された鈴木睦子著『スリランカ 紅茶のふる里~希望に向かって一歩を踏み出し始めた人々』です。

早速この本について見ていきましょう。

スリランカ紅茶農園にて労働に従事する女性たちのルポタージュ。本書はスリランカ紅茶農園の歴史、労働環境、生活、社会に照準を当て、これまで日本人が愛飲してきた紅茶の更なる理解を深めるよう編纂されている。

Amazon商品紹介ページより

スリランカといえば紅茶というイメージを持たれる方も多いと思います。かく言う私もその一人でした。

ただ、正直に申しますと私は紅茶よりもコーヒー派です。しかも筋金入りのコーヒー派ときています。

そんな私ではありましたが最近インドに行く機会があり、そこでひょんなことからダージリンティーを飲むことになったのです。せっかくだし飲んでみようかという軽い気持ちで口にした紅茶が美味いのなんの!衝撃の美味しさでした。その一杯のおかげで私はすっかり紅茶に興味津々となってしまったのでした。

しかも私はこれからスリランカを実際に訪れる予定です。こうなれば本場スリランカの紅茶の歴史を知りたくなるのも当然の流れ・・・。私は早速スリランカの紅茶についての本を探し、そこで出会ったのが本書『スリランカ 紅茶のふる里~希望に向かって一歩を踏み出し始めた人々』でありました。

本書はスリランカの紅茶の歴史や現在の農園事情を知るためのおすすめの入門書です。

著者は本書について「はじめに」で次のように述べています。

日本で紅茶は人気のある飲み物だが、茶畑で働いている人々についてはあまり知られていないように思う。農園コミュニティは私が関わってきたこの四半世紀に大きく変化してきたが、さらに、二〇一一年から訪れるたびに、ダイナミックな変化に接して、揺り動かされるような思いであった。コミュニティの近年の胎動についても多くの方に理解していただきたいと考えて、読み易い本に纏めることに挑戦した次第だ。

アールイー、鈴木睦子『スリランカ 紅茶のふる里~希望に向かって一歩を踏み出し始めた人々』P7

たしかに紅茶自体は私達もイメージできますがそこで働いている人がどのような環境で生産に関わっているのか、いや、そもそもどんな人が紅茶産業に携わっているかというとなかなかわからないですよね。

本書ではそんなスリランカの紅茶産業の実態についても知ることができます。

また、本書の副題「希望に向かって一歩を踏み出し始めた人々」にもありますようにスリランカの紅茶産業は近年大きな変化を迎えています。そのことについて本書の《おわりに》では次のように語られています。

紅茶農園で働いている人々に接するようになった初めの頃、茶畑で働き、農園で生活している、特に女性たちの険しい顔つき、または表情のない眼差しに、同性として胸が痛む思いがした。本書に載せた数枚のモノクロ写真からお分かりいただけると思うが、彼女たちや家族が置かれていた状況はとても厳しかった。

しかし、今日、まだまだ全てではないが、明るい表情で仲間と一緒に楽しげに茶摘仕事に励んでいる、健康そうな女性たちが増えてきたと思う。農園地帯で茶畑に向う女性たちに出会うと、にっこりと笑いかけてくれたり、また、外国人が珍しいのか、恥ずかしそうにしながらも私に近寄ってきて、親しげにしてくれる若いプラッカーたちもいる。

私が本書で書きたかったのは、「紅茶のふる里」の農園で働いている人々は可哀そうな境遇に置かれていたということを探り出すことではない。辛苦の時代を耐えてきたからこそ、今、人々はしなやかに、しっかりと、自分たちの道を前に向って歩き出していることを記したいと思ったのだ。

特に、ここ十数年、以前には、多分、誰も考えたこともないような大きな変化が起きている。その変化はまるで、禅語の「啐啄同時」のように、殻の内側と外側から同時に呼び合うことで起きたように私には思える。農園ワーカーと家族のコミュニティ内部から発展したいという意識が高まり、同時に、外部環境、つまり紅茶産業関係者や国際援助組織はその機をのがさないで、農園社会と人々をより良い方向に向うように図ったことによると考える。

本書の副題の「希望に向って一歩を踏み出し始めた人々」は、農園ワーカーのコミュニティの人々だけではなく、紅茶農園の管理層の人々やスタッフ、地域社会や教育関係の人々など、紅茶のふる里に暮らしている様々の分野の人々を含んでいる。皆、それぞれの立場で、古い社会規範や価値観、旧態のシステムなどを見直して、試練を超えて新しい希望に向って前進しようとしている。

ごく近年、グローバル・レべルでも劇的な変化が起きている。より良い社会に向うことが期待されていたはずなのに、いまだに混沌とし、社会によってはかえって悪化している状況にあるところも多い。そのような国際レベルの不安定な状況とは異なり、スリランカの農園コミュニティの変化はより良い方向に、順調に向っていると思う。人々自身が良い社会、明るく穏やかで、平和な社会へ発展したいという意識があるからこそ、今日の明るい方向へ向う道に繋がったのではないかということを記したかった。

アールイー、鈴木睦子『スリランカ 紅茶のふる里~希望に向かって一歩を踏み出し始めた人々』P274-275

これまで現代スリランカに関しては内戦や民族対立の面から見ることが多かった私にとってこの本は一種の解毒剤のようなものとなりました。

様々な困難がありながらも少しずつ状況を良くしようと生きている人たちがいる。そしてその成果が少しずつ目に見えるようになってきたということが本書には記されています。

もちろん、これで万事解決、バラ色の未来が待っているというわけではありません。ですがそれでも希望はあるのだということをこの本で感じられました。

スリランカの紅茶についてももっと興味が湧くようになりました。現地で飲めるのがものすごく楽しみです。

紅茶に興味がある方にぜひおすすめしたい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「鈴木睦子『スリランカ 紅茶のふる里』~セイロンティーの歴史や現在の農園生活や経営事情を知れるおすすめ本!」でした。

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