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『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』概要と感想~大乗仏塔起源を批判したショペンの説の概略を知れるおすすめ参考書
今回ご紹介するのは2011年に春秋社より発行された『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』です。
早速この本について見ていきましょう。
本巻は、大乗仏教・大乗経典の成立背景をたどりつつ、アビダルマ仏教やヒンドゥー教、上座部仏教などとの比較を通じて、大乗仏教の思想的特質を浮き彫りにする。大乗の成立をめぐる多角的論究。
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今作『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』は前作『シリーズ大乗仏教 第一巻 大乗仏教とは何か』に引き続き、最新の仏教研究の成果が盛り込まれた論集となっています。
この本の中で私が特にありがたいなと感じたのは下田正弘氏による第二章「経典を創出する—大乗世界の出現」の章の存在です。
この章の中でこれまで当ブログでも紹介したグレゴリー・ショペンの説がわかりやすくまとめられています。現代における仏教学においてとてつもない影響をもたらしたショペンの説の概略を学べるのは非常にありがたいものがありました。
その章の冒頭で下田正弘氏は次のように述べています。
さて、本題の考察に入るまえに、その前提となる重要な課題をいささかの紙幅を割いて検討しておかねばならない。それは近代仏教学の成果をさまざまに書き換えつつあるグレゴリー・ショペンの大乗仏教理解である。ショペンは紀元前後から五、六世紀にかけてのインド仏教の歴史を考察対象としながら、仏教学はもとより歴史学、考古学、碑文学などきわめて広範囲な分野の研究成果を調査し、これまでとはおよそ異なった大乗仏教像をうち立てた。一つの邦訳書をつうじて成果の一部は日本の学界でも知られてはいるものの、かれの研究が大乗仏教研究に有する意義は十分に理解されているとはいいがたい。本シリーズに登場する日本の学界の諸成果の意義を適切に評価するためにも、ショぺンの問題提起の趣旨をあらためて確認しておく必要がある。
春秋社、『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』P39
ここで語られた「一つの邦訳書」は『大乗教団における僧院』です。そして近年『インド大乗仏教の虚像と断片』という論集も邦訳されました。
この二冊を読んだ上で下田氏の解説を読むと、彼の説がいかに仏教学界に衝撃をもたらしたのかがよくわかります。またショペンの説が現在どのように受容され、どのような位置づけにあるかも知ることができます。
大乗仏教はいつどこで生まれたのか。これは仏教学における最大の問題の一つです。これは大乗仏教を受容した日本仏教においても非常に重要な問題です。
その問題を考える上でホットな話題を提供してくれているのがショペンなのではないでしょうか。彼の説自体は数十年前から登場していますが、こうして続々と彼の邦訳が出てきているというのは大きな意味があると思います。
ショペンの説に関心があった私にとって非常にありがたい参考書でした。ぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「『シリーズ大乗仏教 第二巻 大乗仏教の誕生』~大乗仏塔起源を批判したショペンの説の概略を知れるおすすめ参考書」でした。
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