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『NHKスペシャル 四大文明 インダス』あらすじと感想~貴重な写真や図版多数!入門書におすすめ!

インダス
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『NHKスペシャル 四大文明 インダス』概要と感想~貴重な写真や図版多数!入門書におすすめ!

今回ご紹介するのは2000年に日本放送出版協会より発行された『NHKスペシャル 四大文明 インダス』です。

早速この本について見ていきましょう。

   四大文明の中では比較的地味な存在のインダス文明。モヘンジョ・ダロやハラッパーの遺跡は広く知られているが、それ以外には一般読者の興味を引く派手なトピックがないのも事実だ。だが、本書では、NHKが世界で初めて取材に成功したというドーラビーラー遺跡を写真入りで大きく取り上げており、シリーズの他の3冊に負けない魅力を持っている。

   ドーラビーラー遺跡は、1967年に発見され、予備調査を経て約10年前から発掘が始まったが、インド考古局が長い間マスコミの取材を許可しなかったため、今までその姿を表に出すことはなかった。本書では、このドーラビーラーの遺跡を門や貯水槽、インダス文字の書かれた看板に至るまで細かく写真入りで紹介し、その謎に迫っている。ドーラビーラー以外にモヘンジョ・ダロ、ハラッパーも取り上げていて、優れた水道関連施設で知られるモヘンジョ・ダロに関しては、かなりのページを割き上下水道システムや当時の人々の生活について詳細な説明をしている。巻末の専門家による座談会は、文明の東西交流に貢献したインダスにふさわしく「交易」がトピック。四大文明の横のつながりを解明するという内容のため、シリーズ全巻で行われている座談会の中でも特に読みごたえがある。(土井英司)

Amazon商品紹介ページより
インダス文明の代表的な遺跡 モヘンジョ・ダロ Wikipediaより

この本はNHKスペシャルの取材が基になった作品で、インダス文明のおすすめの入門書となっています。

この本では上の商品紹介にありますように、ドービードーラーという当時発見されたばかりの貴重な遺跡や、インダス文明全体の貴重な写真や図版がたくさん紹介されています。また、普段私たちがなかなか触れることのない古代インドの世界をわかりやすく解説してくれます。私はこの本がインダス文明の本では一番最初に読んだ本でしたが、スムーズに読んでいくことができました。入門書として非常にクオリティーの高い逸品です。

そしてこの本の中で特に印象に残った箇所を紹介します。ドキュメンタリーらしい現地のリアルを感じられて私はぐっと来てしまいました。

七月、いよいよパキスタン・ロケ開始。「夏にパキスタン・インド地方に撮影に行く人なんていませんよ」という声を背に受けて、少々恐れながらのロケであった。しかし、なみなみと水をたたえたインダス川を撮影するためには、七月がべストなのだ。

ヒマラヤに降る雪や氷河がとけ、インダス川は増水し、人々も水辺に集まってくる。「夏」こそ取材に適した季節だと頭ではわかっていたのだが……。

インダス川撮影の初日。

すさまじい暑さ、強烈な光線が私たちを待ち受けていた。光にこれほどの攻撃力があるとは思わなかった。インダス川の水のきらめき、まぶしさに、目をこらそうとしても正視できない。光に身体中が刺される感触だ。あとからスタッフも言っていたが、この日を境に皆、暑さに対する恐怖感が生まれたという。

今日も刺し殺されるのではないか―。

この切実な不安と、私たちは毎朝、戦わなくてはならなかった。暑さに対してはさまざまな表現があると思う。焦げる、焼ける、水分が蒸発していく。だがパキスタンの暑さは、光線に一直線に射られる感じだ。時間はかからない。ビーム光線が命中すれば、もうへナへナである。

毎朝気温は四〇度を超えていた。そして、この光攻撃に毎日射抜かれている私の頭に、さらに打撃を加える予定外の事態が起きた。

異常気象のため、インダス川の水量が増水期であるにもかかわらず増水がみられない!

モンスーンによる雨季なのにほとんど雨が降らず、水が増えないのだ。さらに、今年はインダス川上流の地域のヒマラヤの気温が上がらないため、氷河がとけて流れてこないのである。七月にして気温の上昇がかんばしくないとすれば、今年はもう氷河はとけないということだ。

光攻撃に耐えてこの地を訪れたのは、とうとうと流れるインダスの水を撮影するためだった。本来ならこの時期、インダスは洪水のように水をあふれさせていたはずだ。「溢水いっすい」と呼ばれる現象。要は、川の水があふれ、まわりの農地を水浸しにしてしまうことだ。四五〇〇年前のインダス時代から、この地の人々はインダス川の洪水によって肥沃な土と水の恩恵を受け、農地を豊かに耕してきた。これは「テラス農耕」と呼ばれている。ところが、その現象が今年は起こらない。私たちはすっかり失望してしまった。

とにかく、インダス川の洪水に頼って今も農耕を行っているカンワプール村で、テラス農耕について取材してみることにした。

「インダス川の水があふれると、幸せな気持になる。うれしくて、楽しくて、村の人みんなでお祭りをするんだ」

防波堤を可能なかぎり造って治水を進めてきた国の人間にとっては、なんとも信じられない言葉だった。

「インダス川があふれれば、すべての農地に平等に水が行き渡る。でも、川があふれないと、ポンプで水を汲み上げなくてはならない。ポンプはガソリンがなければ動かない。お金のある人はポンプを使えるけれど、余裕のない人間には使えない。でも川はみんなに水をくれるから、とても平等だよ」

とはいえ、現在ではインダス川沿いに多くのダムが稼働し、農地へ水を送るために水量調節が行われている。モヘンジョ・ダロ付近の農地では、水量が多いときは、ダムの事務所から「そろそろ川があふれる」という連絡がきちんと入るそうだ。

人は今も大河に頼って生きている。モヘンジョ・ダロ付近の気候は極度に乾燥している。しかし、大河インダスが流れていれば、どんなに乾燥していても水は手に人る。しかも、川は豊かな地下水をも形成してくれる。

私はこんなに極度に熱くて乾燥した地域に、なぜモヘンジョ・ダロのような大都市ができたのか疑問に思っていた。四五〇〇年前はこれほどの乾燥気候ではなかったという説もある。しかし、現在の考古学では、おそらく気候は今とそれほど変わらなかったといわれている。たしかに、乾燥した気候であっても、この大河さえ流れていれば水の問題はかなり解決できたのだ。射られるような光をも、インダスの水は包んでしまうのである。

日本放送出版協会、『NHKスペシャル 四大文明 インダス』P52-55

私はまだインドに行ったことがありません。2023年に行く予定ではあるのですが、インドの厳しさは各方面から聞かされてはいました。もちろん、私は夏には行きません(笑)。身体が弱い私では最高レベルに快適な時期ですらインドは致命的でしょう。ですので取材陣のような過酷な体験はできませんが、さすがこの本はドキュメンタリーということで現地の雰囲気がリアルに感じられてとても臨場感のある読書となりました。

また、洪水に対する考え方も非常に興味深いですよね。「洪水は誰にも平等に水を与えてくれる」という発想はたしかに私たちにはなかなかわからない感覚だと思います。ですが何千年も前からこういう世界に生き、こういう感性の中で育まれてきたのがインドの宗教であり、仏教の源流だったのだなと思うと、胸に来るものがあります。

私たちの常識が全く通用しないのがインドだとはよく言いますが、その雰囲気がよく感じられるのもこの本の面白い所だと思います。

もちろん、インダス文明の入門書としても非常にわかりやすい作品です。

これはぜひおすすめしたい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『NHKスペシャル 四大文明 インダス』~貴重な写真や図版多数!入門書におすすめ!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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