善をなすのを急げ。悪から心を退けよ。善をなすのにのろのろしたら、心は悪事を楽しむ―お釈迦様のことばに聴く
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目次
善をなすのを急げ。悪から心を退けよ。善をなすのにのろのろしたら、心は悪事を楽しむ―お釈迦様のことばに聴く
一一六 善をなすのを急げ。悪から心を退けよ。善をなすのにのろのろしたら、心は悪事を楽しむ。
一一七 人がもしも悪いことをしたならば、それを繰り返すな。悪事を心がけるな。悪がつみ重なるのは苦しみである。
一一八 人がもしも善いことをしたならば、それを繰り返せ。善いことを心がけよ。善いことがつみ重なるのは楽しみである。
岩波書店、中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』P26
今回のことばはとにかくシンプルです。
「善をなせ。悪を退けよ。
善をなすのにのろのろしていたら、心は悪事を楽しむぞ。」
実にわかりやすいですね。
そして「悪を退けよ」という前に「善をなせ」と言うところがポイントです。
悪いことをしないためには善いことをすればいい。
先に善いことをすることで心は善いことで満たされる。もしそれをしなければ心は悪事を楽しむぞと言うのです。
「悪事を退けよ。善いことをせよ」ではないのです。
ちょっとしたことですがこれは大きな違いです。
お釈迦様はさりげなくこのことばに重要なことを託しています。悪いことを退けるには善いことをすればいい。悪をいきなり退けるのは人間には難しいということを熟知したお釈迦様の智慧が光ります。
このさりげないアドバイスがさすがですね。
今回ご紹介した箇所は非常にシンプルなことばでしたが、実はお釈迦様の大切なアドバイスが込められています。
シンプルでわかりやすいことばの中に「あぁ~」と思わせてくれるものがたくさんあるのがこのお経の最大の魅力です。
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平安末期から鎌倉時代に生きた僧侶と、片や19世紀ロシアを代表する文豪。
全く関係のなさそうな2人ですが実は重大なつながりがあるとしたらいかがでしょうか。
このまとめ記事ではそうした私とドストエフスキーの出会いと、なぜ僧侶である私がドストエフスキーを学ばなければならないのかを紹介しています。
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