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弦巻楽団『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』「恋愛は幻想に過ぎない」が自説のシェイクスピア専門の大学教授のドタバタラブコメ
ここまでシェイクスピアの作品を紹介してきましたが、私の中でシェイクスピアと言えばこの『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』は外せない舞台です。
ふとしたきっかけから2018年に札幌で初めてこの舞台を観て以来すっかりはまってしまい、去年も東京まで出向いて2日連続で観に行ってしまうほど私のお気に入りの作品となってしまいました。
まずこの作品について紹介されたネット記事
札幌の弦巻楽団が3年ぶりの東京公演『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』~作・演出の弦巻啓太に聞く
よりその概要を引用させて頂きます。
2003年から札幌を拠点に活動している劇団、弦巻楽団が2019年10月4日(金)~7日(月)に東京・こまばアゴラ劇場で『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』を上演する。この作品は2005年に弦巻啓太が他団体に書き下ろし、弦巻楽団でも13、16、18年と繰り返し上演されてきた人気作で、「恋愛は幻想に過ぎない」という自説を唱えるシェイクスピア専門の大学教授が、ラジオから流れてきた気象予報士の声に恋をすることで巻き起こる騒動を描くラブコメディだ。弦巻楽団は様々な演劇人とのコラボレーションを行うことをコンセプトに掲げており、昨年の上演時に大学教授・奥坂役で出演した青年団の永井秀樹が今回も同役で参加している。
札幌の弦巻楽団が3年ぶりの東京公演『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』~作・演出の弦巻啓太に聞く
この演劇は札幌を拠点に活動する弦巻楽団によって上演された作品で、何度も何度も再演されるほど人気の作品です。私が初めて観たのも2018年の再演の時です。
改めてこの作品のあらすじを見ていきましょう。
「恋愛は幻想に過ぎない」が自説のシェイクスピア専門の大学教授・奥坂雄三郎は、ある日、ラジオから流れる気象予報士の声に「恋」をする。初めての感情に戸惑い、周りが見えなくなる奥坂は、これまでの持論を放り捨て、ひたすら恋に向かって暴走する!教え子や助手を巻き込んだ遅すぎる初恋は、果たして成就するのか?
弦巻楽団HPより
主人公のシェイクスピア専門の大学教授の堅物不器用ぶりがとにかく絶妙です。学者肌で理屈っぽくて「恋なんて幻想だ」と我が道を突き進む教授。
恋にうつつを抜かす学生を「なんと愚かな」とバカにしていた教授ですが、ある日たまたま聞いたラジオの気象予報の声の主に恋をしてしまいます。
あれほど頭でっかちで「恋なんて幻想だ」と言っていた教授が遅まきの初恋によって壊れていく様子が最高に微笑ましいです。
教授の周りの登場人物達もみんないいキャラをしていて、思わずくすっと笑ってしまうシーンが満載です。
弦巻楽団さんのHPにはこの舞台の写真やチラシもあるのですが肖像権などの問題もあるのでここではご紹介できませんが、ぜひそちらも見て頂けたらと思います。
また、弦巻楽団さんはオリジナルの舞台の他にも「演劇研究講座」を主宰していて、演劇史上の名作を上演しています。
『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』ですっかり弦巻楽団さんのファンになった私はその数か月後に上演された『ハムレット』を観に行きました。
こちらもまた素晴らしくて、私がシェイクスピアをより好きになったのはこの舞台のおかげだったなと思います。
実は私はそれまで演劇にはあまり縁がなく、劇団四季以外では演劇を観に行くということはしたことがなかったのです。そんな私が初めて自分の意思で観に行ったのが『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』でした。
そこで演劇の面白さを知りこの『ハムレット』も観に行ったのです。本の上では読んだことがあるシェイクスピアでしたが、舞台上でのシェイクスピアはこれが初めてでした。私のシェイクスピア体験はここから始まったのです。
演劇講座の発表ということで手作り感がある舞台でしたがそれがまたいいんです!豪華な衣装や舞台道具がなくとも演劇の世界は表現できるのだということを思い知らされました。そういうものがなくとも舞台上で世界観を表現できるというのはものすごいことだなと感動した記憶があります。演出家のすごさを心の底から感じた瞬間でした。
さて、改めて『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』に戻って参りましょう。
この動画は作中のキャラのままこの作品の解説をしているものです。これを見て頂ければ何となく作中の雰囲気やキャラクターが見えてくるのではないでしょうか。
逆にすでに作品を見た側からすると、アフターストーリーかのようでなんとも嬉しい気持ちで見ていられます。
とにかく愛しいんです。この作品が、そして登場人物達が!
この作品を初めて観た日の帰り道の満足感、幸福感たるや!
冬の札幌の夜です。当然、雪も降り、身体が縮こまるような寒さです。
ですが、なんと爽やかな足取りだったことか!あの何とも幸福感に満ち溢れた冬の夜道を私は未だに忘れることができません。
この作品には不思議な魅力があります。観る者の心をふっと軽くしてくれるような爽やかさがあります。
私もその時以来何度もこの舞台を観させて頂いておりますが何度観ても色あせない魅力です。
まったく飽きません。行く度に元気をもらって帰ってきます。
これはもう不思議としかいいようのない魅力です。
観ればわかります。ぜひ弦巻楽団さんの『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』を観に行かれてはいかがでしょうか。元気をもらえること請け合いです。本当におすすめです。
以上、「札幌発のオススメ演劇!弦巻楽団『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』―堅物シェイクスピア学者のドタバタラブコメ」でした。
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これらを見てピンとくる方もおられると思います。
私自身、ジュリアス・シーザーという名ではピンと来なかったのですが、この人物のローマ式の本名はと言いますと、ガイウス・ユリウス・カエサルとなります。
『ジュリアス・シーザー』は私の中でも強烈な印象を残した作品でした。あらすじや背景を知ってから読むと最高に面白い作品でした。非常におすすめです。
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