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V・ネチャーエワ『ドストエフスキー 写真と記録』概要と感想~写真と絵で学ぶドストエフスキー伝
本日は論創社出版の中村健之介編訳、V・ネチャーエワ『ドストエフスキー 写真と記録』をご紹介します。
この伝記は1972年にモスクワで刊行された『肖像と挿絵と記録によるドストエフスキー』の翻訳です。
作者はV・ネチャーエワとなっていますが、他にも5人の学者との共同の編纂であり、V・ネチャーエワは代表編者ということだそうです。
そしてこの伝記は書名にもありますように、写真や絵がとにかく大量に掲載されています。ここにこの伝記の最大の特徴があります。訳者まえがきを見て参りましょう。
「見る資料」の写真や絵について言えば、ドストエフスキーが百年以上も昔の作家であるにもかかわらず、生涯のいずれの時期をも、大きな空白を残すことなく埋めている。この本は、写真による伝記でもある。
一八六七年から四年間、ドストエフスキーと妻アンナは西ヨーロッパの諸都市を転々とするが、ロシアから遠いそれらの都市の街並の写真を見ながら、そこから書き送られたドストエフスキーの手紙を読むと、手紙の言葉の帯びている生活の陰影がはっきりと感じられてくる。
「見る資料」は小説の理解を助けてくれる。小説の挿絵はもちろんのことだが、絵画も役に立つ。
絵は、ドストエフスキーの小説の中で重要な役割を与えられている。『白痴』のイポリート・テレンチエフやムィシキン公爵は、ハンス・ホルバインの「墓の中の死せるキリスト」について、『未成年』のヴェルシーロフは、クロード・ロランの「アキスとガラテヤ」について、長々と、熱心に語っている。
それはそれぞれの登場人物の内面告白であり、小説の中心主題の提示でもある。その告白を、語られている絵を目の前にして読むのとそうでないのとでは、読者の理解の具体性がまったく違ってくる。
『作家の日記』でドストエフスキーは、ニコライ・ゲーの「最後の晩餐」やクインプーの「ヴァラーム島で」やレーピンの「舟曳人夫」といったロシアの画家たちの作品について、大変細かい、長い批評を書いている。それも、この本では、ドストエフスキーの指摘をいちいち絵画で確かめながら読むことができる。「見る資料」も「読む資料」に劣らず雄弁なのである。
論創社 中村健之介編訳、V・ネチャーエワ『ドストエフスキー 写真と記録』P2-3
この伝記にはまえがきにもあるようにとにかく驚くほどの量の写真と絵が掲載されています。
文字中心のこれまでの伝記とは明らかに一線を画す伝記です。
この伝記を読んでいると中学生や高校生の時にお世話になった日本史の資料集を思い出します。写真とイラストでいっぱいだったあの本です。
これまで見たこともなかったドストエフスキー作品の挿絵やロシアの風景、ドストエフスキーに関わる人たちの顔写真がどんどん出てきます。
写真や絵を見ているだけで楽しくなってきます。
ただ、私が入手した時は中古で安いものも残っていたのですが現在は在庫も少ないのか値段が高くなってしまっているようです。
ですが、参考資料としてとても便利な伝記ですので、副読本としてとても優れたものであると私は思います。
以上、V・ネチャーエワ『ドストエフスキー 写真と記録』でした。
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