MENU

いざ仏教国スリランカへ。3週間をかけて仏教聖地を巡る!日本仏教との違いを感じた日々

コロンボ
目次

【インド・スリランカ紀行】(24)
いざ仏教国スリランカへ。3週間をかけて仏教聖地を巡る!日本仏教との違いを感じた日々

10月末から始まったインドの旅も無事終了。カジュラーホー、サーンチー、ムンバイ、アジャンタ、エローラを巡った私は次なる目的地スリランカへ向かった。

スリランカはまさにインド南端から目と鼻の先に浮かぶ島国だ。その大きさは北海道の5分の4ほどで人口はおよそ2000万人ほどの国である。

ムンバイからのフライトでバンダラナイケ国際空港へと到着。

なぜかはわからないがタラップから降りた瞬間、インドとは明らかに違う雰囲気を感じた。まだ着いたばかりではっきりしないのだが、落ち着いた雰囲気というか、のんびりしたリゾート的な空気を感じたのである。

この日は夕方にスリランカに到着したということで、市街地へと向かわずに空港近くのホテルに宿泊することにした。

空港からホテルの道を走っていてすぐに気づく。クラクションを誰も鳴らさないのである。あのインド的カオスがここには存在しないのである。しかも車窓からずっと外を眺めていたのだがゴミもほとんど落ちていない。たしかに建物は古いかもしれないが、街自体はキレイなのである。インドとスリランカの違いをたった十数分の道中でしかと思い知らされたような気がした。

いいぞスリランカ。これは期待できる。これなら私も無事最後まで走り切ることができるのではないだろうか。

ホテルから見えた景色はまさに南国リゾート。これまでのインドとは明らかに異なる雰囲気に私も興奮してしまった。

さて、ここから3週間をかけてほぼスリランカ全土を巡りながら仏教聖地を巡っていくことになるのだが、皆さんはスリランカという国についてどのようなイメージを持たれているだろうか。

私達僧侶からすると、スリランカは仏教信仰の篤い国というイメージがあるのだが、多くの方にとってはスリランカという国についてはなかなかイメージしにくいのではないだろうか。

ここでそんなスリランカについて私のイチオシのガイドブックである石野明子著『五感でたのしむ!輝きの島スリランカへ』からその解説を引用することにしたい。

世界で一番読まれているガイドブックで「2019年 行くべき国第1位」に輝いたスリランカ。でも日本ではスリランカの情報は本当にひと握り。かつてはセイロンと呼ばれていたことから、なんとなくセイロンティー、紅茶の国というイメージはあるのではないでしょうか。

でも小さな島国ながら、スリランカの魅力は紅茶だけではありません。スリランカの言葉シンハラ語で「スリ」は「輝く」、「ランカ」は「島」を意味します。豊かな自然、伝統医療のアーユルヴェーダ、新旧含めた素晴らしい建築群、奥深い食文化、目が合えばにっこりと恥ずかしそうにほほえむ人びと……ここには書ききれないほどのキラキラ輝く魅力がいっぱいつまった宝箱の島、それがスリランカです。

2009年に長く続いた内戦が終わりを告げ、スリランカはさらにその輝きを増しています。12年前にはじめて私が訪れたときから変わらない、謙虚な人びとがつむぎだす古きよきスリランカ。そしてそれとは対照的に、世界から流れ込む新しいカルチャーを吸収して独自に進化していく新しいスリランカ。そのどちらも世界中の人びとを引きつけてやみません。

イカロス出版株式会社、石野明子著『五感でたのしむ!輝きの島スリランカへ』P2
スリランカの名所たち

いかがだろうか。これを読むとたしかにスリランカが魅力的な国に感じられるのではないだろうか。

北海道の約8割ほどの大きさの国土に様々な気候や豊かな自然が存在し、さらには世界遺産の遺跡がコンパクトにまとまっているという奇跡的な国土環境。しかも都会のコロンボでは現代的な文化も発達し、食事やファッション、リラクゼーションも魅力的。

スリランカ最大の都市コロンボ Wikipediaより

これは「2019年 行くべき国」に選ばれるのも納得だ。

というわけで今やスリランカは世界的にも注目される観光地となっているのである。

だが、残念ながら私にとってスリランカという国はそんなキラキラ楽しいリゾート地だけでは終われない。

私はこれまでスリランカを仏教の観点から学んできた。

そしてスリランカ仏教を学んでいる内にこの国の内戦にも強い関心を持つようになり、植民地や世界貿易、ナショナリズムという観点からもスリランカを見ていくことになった。

つまり、私にとってスリランカという国はとにかく重いものなのである。

なぜ私がこんなにも深刻な顔でスリランカを旅しているのかと皆さんは不思議に思うかもしれない。このことについてはこれから見て行く先々の地で語っていくつもりだ。

もちろん、スリランカは素晴らしい国であることは間違いない。ぜひ私も海外旅行におすすめしたいと心から思っている。私自身もこの国の魅力を肌で感じたひとりだ。その気持ちに偽りはない。

しかしスリランカは「私にとっての仏教」を考える上で非常に重要な意義を持つ存在なのだ。本気にならざるをえないのである。

これから先、もしかするとスリランカの方達を不快にさせてしまうことも言わなければならないだろう。だが、それはあくまで私個人の考えである。決してスリランカの歴史や文化を否定しているわけではない。あくまで日本人の浄土真宗の僧侶である私がスリランカそのものやスリランカ仏教に対して思うことを正直に述べたまでである。

ひとりの僧侶として、いやひとりの仏教を学ぶ人間としてスリランカを通して本気でそれにぶつかりたいのである。

「なあなあ」では済ませられない。私の信ずる仏教とスリランカの仏教は何が違うのか、これは真剣勝負である。だからこそ私は今回の渡航前、貪るようにスリランカの文献を読み漁ったのである。その中でもおすすめの本を以下の記事で紹介しているので興味のある方は参考にして頂ければ幸いだ。

あわせて読みたい
仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧~仏教・歴史・文学など、知られざる魅力をご紹介! 私はスリランカの仏教を学び、衝撃を受けっぱなしでした。まさかと思うことがどんどん出てきます。私の仏教観を根底から覆したと言ってもよいでしょう。

では、これからスリランカの旅を始めていこう。最初の目的地はスリランカ仏教伝来の地ミヒンタレーだ。

次の記事はこちら

あわせて読みたい
スリランカの気候は如何?気候と宗教の関係について考えてみた。日本仏教についても一言 この記事ではスリランカの気候についてお話ししていきます。 熱帯の南国スリランカには大きく分けて二つの気候帯があります。雨量の多いウエットゾーンと雨の少ないドライゾーンがこの小さな島国に存在し、これがスリランカの歴史に大きな影響を与えました。そしてこの気候と宗教の関係についてもこの記事では考えていきます。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
アジャンタ石窟でインド仏教絵画の最高傑作を堪能!千年間忘れ去られていた驚異の仏教遺跡を訪ねて 彫刻はエローラ。絵画はアジャンタ。これで決まりです。 インド仏教芸術の極致を味わうならぜひこの二つをセットで見ることをおすすめします。 アジャンタも実に素晴らしい場所でした。あの蓮華手菩薩の指先は忘れることができません。指先と指先が触れるあの究極の一点・・・!あれは奇跡です。まごうことなき奇跡でした。

【インド・スリランカ仏跡紀行】の目次・おすすめ記事一覧ページはこちら↓

※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。

「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」

関連記事

あわせて読みたい
スリランカ仏教伝来の聖地ミヒンタレーを訪ねて~聖地の名にふさわしい神話的な世界! 聖地ミヒンタレーはスリランカ仏教伝来の地とされています。目の前に広がるジャングルの中にぽつんと立つ岩山。この岩の存在感たるや!私もこの景色を見て感動しました。なんと神話的な世界でしょう。スリランカ仏教の始まりという神話的場面がこれほど似合う場所はありません!個人的にスリランカのベストスポットの一つです。
あわせて読みたい
スリランカの上座部仏教とはどのような仏教なのかざっくり解説~日本仏教との違いについても一言 日本人には日本人の文脈があるようにスリランカの人達にもそれぞれ文脈があります。そしてその文脈の違いが宗教や文化の違いに必ず影響してきます。 今回の記事では一旦旅行記も一休みしてここでそもそもスリランカの仏教がどのような仏教なのかということをお話ししていきます。日本との違いを考えるのも非常に興味深いです。
あわせて読みたい
スリランカ上座部仏教のシャム派両管長に謁見~仏教について質問させて頂きました 今回のスリランカ滞在では私も驚くような素晴らしい体験を何度もすることになったのですが、その中でも特に驚いたのがキャンディでのシャム派両管長との謁見が叶ったことでした。 これは私も全く予想していなかったことで、3週間にわたった私のスリランカ滞在において最も興奮した1日だったことに間違いありません。
あわせて読みたい
スリランカの奥地に大乗仏教の大仏が眠っていた!スリランカに根付いていた大乗仏教の痕跡を訪ねて スリランカといえば上座部仏教の聖地というイメージがあるかもしれませんが、実はこの地には大乗仏教も根付いていたのでありました。特に8世紀には全盛期を迎え密教の中心地として世界に大きな影響を与えていました。 私はその痕跡を訪ねるべく、スリランカの奥地に向かうことにしたのでありました。
あわせて読みたい
インドは旅人に「答え」ではなく「問い」を与える~インド・スリランカの旅は私に何をもたらしたのか いよいよ、100回を超える私の旅行記もこれにて終了です。 長かった・・・読むのも大変だったかもしれません。 ですが、私にとってこれは「やらねばならぬ大きな試練」でした。 「私にとって宗教とは何か。仏教とはなにか」10年以上にわたって研究し続けてきたこの課題の集大成がこのインド・スリランカの旅でありました。
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次