Masaaki Sugiyama, "World History from a Nomadic Perspective" - An exciting book that shatters our preconceptions! To gain a multifaceted view of history

World History from a Nomadic Perspective Chinese Buddhism, Thought and History

杉山正明『遊牧民から見た世界史』概要と感想~私達の先入観を粉砕する刺激的な一冊!歴史を多角的に見る視野を得るために

今回ご紹介するのは2011年に日本経済新聞社より発行された杉山正明『遊牧民から見た世界史』です。

Let's take a quick look at the book.

遊牧民の視点から眺めると世界史が違って見えてくる。スキタイ、匈奴から、テュルク、ウイグル、キタイ、モンゴル帝国まで、膨大な原典史料をもとに草原の民の視点から人類史を描き直す。ロングセラー文庫の増補版。

AmazonProducts Page.

This book is a work that overturns the image of nomads that we vaguely imagine. It is also a terrifying work that questions not only the existence of nomads, but also our very understanding of history.

本書冒頭で著者は次のように述べています。

今から十四年まえ、一九九七年十月に『遊牧民から見た世界史―民族も国境もこえて』という書物を日本経済新聞社から刊行していただいた。ともかく、遊牧民というと、ずっと昔から洋の東西を問わず、頭ごなしに否定的なイメージで語られるのが普通だった。それは世に大家といわれるような歴史家・歴史研究者から、民族学者・文明史家・評論家・作家といった人びとも、おおむねは野蛮・殺戮といった固定的なイメージで語ることがほぼ定型化していた。

近代西欧発のアジア蔑視や、その裏返しとしての優越感もしくは〝差別思想〟にくわえ、日本や中国の学者たちによる偏見やおもいこみも手伝って、きわめて単純・素朴な〝歴史の悪役像〟が、いつとはなくつくりあげられていた。高校の世界史教科書なども、そうした図式がずっとあたりまえとなっており、いわゆる受験勉強などで刷り込まれたステレオタイプの歴史像が、それとして意識しないかたちで定着していた。「本当はそうではないのにな……」というのが本書執筆のおもなモティーフになった。

日本経済新聞社、杉山正明『遊牧民から見た世界史』P3ー4

私は最近仏教を学ぶ過程で中国史の本も読んできましたが、やはりたしかに遊牧民というとモンゴルや中国北方の戦闘民のイメージを持ってしまっていました。それが全てではないことは頭ではわかっていてもやはり「遊牧民と攻撃性」がセットで捉えられてしまっていたというのをこの本を読んだことで改めて気付かされました。

また、以前私は親鸞とドストエフスキーをテーマに学んでいた時、ロシア史の中で「タタールのくびき」という言葉を知ることになりました。このことについては「栗生沢猛夫『タタールのくびき ロシア史におけるモンゴル支配の研究』ロシアとアジアのつながりを知るのにおすすめ参考書!」の記事でもお話ししましたが、まさに本書の内容と関連してくるものでした。「タタールのくびき」とは端的に言うと、モンゴル人によるロシア支配です。以下ざっくりとその流れをお話しします。

上の本によると、13世紀にはまだまだ王朝を中心とした国家という形を成していなかったロシアにおいてこの地方の中心は依然ウクライナのキエフでありました。

In 1237, however, such a situation underwent a significant change.

タタール人、つまりモンゴル軍がロシアに現れたのでした。なんとその時の指揮官はあのチンギスハンの孫、バトゥ。日本史でも有名なモンゴル軍がついにヨーロッパにまで侵攻しようとしていたのです。

Once the Russians seemed to have driven the Tatar army back, they were only scouts.

The Tatar army reappeared in 1240 and attacked with an incomparable force, and in no time Kiev fell. In no time, Kiev fell and the Principality of Kiev was destroyed.

Their advance was unstoppable and the whole of Russia was overrun and decimated by the Tatar army.

Then, in 1243, southern Russia came under the power of the Tatars and the Kipchak Khanate was established.

Henceforth, all of Russia would be forced to pay taxes to the Tatars.

これがタタールのくびきの始まりでした。

しかし本書『遊牧民から世界史』にはこのロシアとタタールについて次のように述べられていました。

ロシア帝国は、モンゴルの覇権のなかから生まれた。ロシア帝国の拡大と巨大化は、モンゴル支配の裏返しのようにも見えなくもない。ロシア帝国は、体質としてモンゴル支配の影を長くひきづりながら、表面上、それをあからさまにいわれることをひどく嫌った。むしろ、モンゴルは、ロシアに災厄だけをもたらした悪の権化だと声高に叫びつづけた。

ロシアのツァーリは、モンゴルの悪の支配からロシア民衆を救済したという神話を、みずからの支配の正当化の手段の一つとした。ロシア正教は、その神話を荘厳化する役目を立派に演じつづけた。

悪の権化モンゴルというイメージと、キリスト教の地獄タルタルからの使者という語呂あわせ(モンゴルは、高原統合まえの有力部族連合タタルの名で呼ばれることがあった。つまり、モンゴルは自称、タタルは他称である)が合体した「タタルのくびき」という有名な「おはなし」は、このなかから出現した。ロシアは、タタル、すなわちモンゴルという地獄から来たものに吸いつかれている。それは、ちょうど牛の首すじにゆわえられた車の横木(くびき)のようなものである―と。

牛はロシア、牛がひく車にふんぞりかえるのはモンゴルという図柄である。こうした「おはなし」は、ソ連時代の小学校の教科書にも載せられた。憎悪は、しばしば創造物である。ただし、ロシア側から「タタル」という名をおしつけられたクリム・タタルやタタルスタン共和国の人びとは、気の毒というほかはない。悪の権化のイメージを、憎悪の感情とともにおしつけられたからである。支配のための「スケイプ・ゴウト」の匂いは、濃密である。

日本経済新聞社、杉山正明『遊牧民から見た世界史』P429-431

これまでロシア関係の本を色々と読んできた私にとってこれはグサッとくる指摘でした。なぜ私はこのことに全く気付かなかったのだろう頭を抱えました。

この本では遊牧民やタタールが残虐一辺倒でなかったことが丁寧に解説されます。

そもそも遊牧民とは何か。彼らが生きた世界とはどのような世界だったのか。私達はどのような先入観を持ってしまっているのかということからわかりやすく語られていきますので読めば読むほど目から鱗です。

本記事のタイトルに「先入観を粉砕」と書きましたがまさにその通り。少なくとも私は思いっきり粉砕されました。

This is despite the fact that I have been reading a variety of genres and trying to look at things from as many different perspectives as possible. I am extremely embarrassed by this fact.

この本を読めばきっと私と同じ思いになる方も多いのではないでしょうか。いやあ痛快な一冊でした。この本は元々いつもお世話になっている中国史にも詳しい僧侶の先輩から勧めて頂いた本でした。ずっと当ブログで紹介したいと思っていた本でしたので、ようやくここに紹介出来て私も嬉しく思っています。この場を借りてお礼申し上げます。

皆さんにもぜひぜひおすすめしたい一冊です。以上、「杉山正明『遊牧民から見た世界史』~私達の先入観を粉砕する刺激的な一冊!歴史を多角的に見る視野を得るために」でした。

Next Article.

Click here to read the previous article.

Related Articles

HOME