長谷川明『インド神話入門』概要と感想~ビジュアルで学べるヒンドゥー教の神々!入門書にもおすすめ!
長谷川明『インド神話入門』概要と感想~ビジュアルで学べるヒンドゥー教の神々!入門書にもおすすめ!
今回ご紹介するのは1987年に新潮社より発行された長谷川明著『インド神話入門』です。私が読んだのは2002年の改訂版21刷です。
早速この本について見ていきましょう。
出版社内容情報
インドの天地には神々が満ちあふれている。ヴィシュヌ、シヴァに代表されるインド独自の神々の物語を、大衆宗教画や神像などでヴィジュアルに解説。
目次
第1章 ヒンドゥー教とは何か
紀伊國屋書店商品紹介ページより
第2章 ヒンドゥー教の神々(ブラフマーと三神一体;ヴィシュヌとその化身;シヴァとリンガ崇拝;女神と性力信仰;クリシュナの生涯;ガネーシャ;スカンダとムルガン;南インドの神々;スールヤと九曜)
第3章 大叙事詩の世界(「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」)
第4章 その他の諸宗教(ジャイナ教;シク教;イスラム教とキリスト教;新仏教)
この本はヒンドゥー教の神々を多数のビジュアルと共に学べるおすすめの入門書となっています。
本書について著者は「序」で次のように述べています。
インドに旅行した経験のある人なら、いたるところで、人や神や怪物を描いた奇妙な、しかしリアルで生々しい色彩の絵を見たことがあると思います。商店の壁やインド人家庭の居間などに飾られているそれらの絵を眺めて美しい女性の姿なのに、よく見ると手が四本あるのに驚いたりしたかもしれません。描き方には明らかに西洋画の影響がうかがえますが、色彩といい超現実的な内容といい、きわめてインド的な世界を形造っているこうした絵は、主としてヒンドゥー教の神様を描いたもので、大量に印刷され、大小さまざま一~五ルピー(一ルピーは約五円)ぐらいの安い値段で販売されています。描かれている情景はシヴァ、ヴィシュヌ、ラクシュミー、ガネーシャといったよく知られたヒンドゥー教の神の姿や、その神にまつわる有名な神話、寺院の縁起などで、いわば神様のブロマイドといったところです。少数ながらジャイナ教、仏教などの絵やマハトマ・ガンディー、ネルーといった歴史上の人物の絵もあります。
私がこのような大衆宗教画(インド人は単に神様の絵と言っていますが)を初めて見たのは一九七八年に西インドへ旅行したときです。タクシーの運転席に見たこともない不思義な絵が掲げられているのを発見して、これは何かと尋ねたのがきっかけでした。それが何の絵だったかはもう覚えていませんが、いろいろ買い漁ってみると、ヴァリエーションも無限というわけではなく、一定の法則があることに気づきました。私の興味は、ここに何が描かれており、どういう意味があるのかという素朴な疑問から出発しているのです。これは今も変わりませんし、まだとてもわかったと言えるような状態ではないのですが、それでも多少勉強したおかげで、何も知らない人になら簡単な説明ができるぐらいの知識を得ることができました。それをまとめてみたのがこの本だというわけです。
新潮社、長谷川明『インド神話入門』P4
こちらはヒンドゥー教の主神のひとつであるシヴァ神ですが、その独特の色彩と異様とすら言える絵のタッチ。いかにもインドという雰囲気が表れています。
そしてこちらは本書の表紙と裏表紙なのですが、こう見てみるとやはりインドの宗教画があまりに独特なのがよくわかると思います。
私はこの本をインドを学び始めて割とすぐの段階で手に取ったのですが、この絵にどうしても馴染むことができず、読むのを断念してしまった過去があります。
正直、この妙に写実的な絵に不気味さを感じてしまったのでありました。夜に暗い部屋でこの絵を見てしまったら寝れなくなりそうなほど私にとっては恐怖を感じてしまう絵だったのです。皆さんはいかがでしょうか。
ですがインドについて学んでから数か月経ってこの本を改めて読んでみるとあら不思議。かつてあんなにも拒絶反応を起こしていた私がすんなり読めているではありませんか!しかもこの絵に対しても妙な親近感さえ覚える始末!
一体私の身に何が起こったのかと自分でも驚いてしまうほどでした。
きっとこれはインドを学ぶにつれて私がインドに慣れてきたからかもしれません。
かつてあんなに不気味に思えたインドの神々に親近感さえ覚える・・・。
日本人の私ですらこうなのですから、インド人にとってはその親近感は私の想像をはるかに超えるものではないでしょうか。いやあこれには驚きました。
この本ではそんなインドの神々をたくさんの図像とともに学ぶことができます。神々の特徴と見分け方を実際にその姿を見ながら学べるのは非常にわかりやすくてありがたいです。
異国人である私たちにはなかなか一見するだけでは区別がつきにくいインドの神々ではありますが、見分け方にはちゃんとポイントがあります。その神ごとに特有の姿であったり持ち物などが必ずあります。見分け方がわかればよりインドの神々への親近感が湧いてきます。
これまで本の文章を中心にインドを学んできましたが、こうして実際に神々の姿をじっくり見ていくというのはとても新鮮で楽しかったです。最初は不気味で本を開くことすらできなかった私でしたが今やこの本は私の愛読書です。ことあるごとに本書を手に取り、「あぁ、これがシヴァの特徴だったな」とそれぞれの神々の特徴を復習しています。これは便利な一冊です。
インド初心者の方には不気味に思える神々ですが、慣れてくると妙に身近に感じる不思議さがあります。ぜひこの不思議な感覚を体感してみてはいかがでしょうか。インド神話に興味のある方にぜひおすすめしたい作品です。
以上、「長谷川明『インド神話入門』~ビジュアルで学べるヒンドゥー教の神々!入門書にもおすすめ!」でした。
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