W. Siverbuche, "History of Rail Travel" - The invention of the railroad changed human consciousness! A famous book highly praised by Shigeru Kashima, a French literature scholar!

The Industrial Revolution and British and European Society

W・シヴェルブシュ『鉄道旅行の歴史』概要と感想~鉄道の発明は人間の意識を変えた!仏文学者鹿島茂氏も絶賛の名著!

今回ご紹介するのは1982年に法政大学出版局より発行されたヴォルフガング・シヴェルブシュ著、加藤二郎訳の『鉄道旅行の歴史―19世紀における空間と時間の工業化』です。私が読んだのは2011年新装版第一冊版です。

Let's take a quick look at the book.

鉄道旅行を産業革命の市民的体験としてとらえた19世紀の旅の思想史。その生み出した時間・空間概念の変貌を語り、ヨーロッパと米国の鉄道の違いを技術・経済・国民性の側面から解明。さらに鉄道事故が精神医学および法律に与えた影響を説き、駅舎建築を都市の構造と機能の観点から検討する。

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世界最初の鉄道である、ダラム州ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道の開業、1825年 Wikipedia.

この作品は鉄道が生まれたことによって世界の人々がどのような影響を受けたのか、また人々の文化、メンタリティーにどんな変化が起こったのかを解説していく作品です。

この作品について、当ブログでもすでにお馴染みのフランス文学者鹿島茂先生が次のように大絶賛しています。

この十年間に読んだ文化史から一冊というのであれば、躊躇することなく、これをあげる。ヨーロッパの鉄道がコンパートメント・スタイルであるのに、アメリカの鉄道が中央通路方式なのはなぜかとか、読書という習慣は鉄道によって始まったとか、どこを読んでもメチャンコにおもしろい。タイトルの飾り気のなさでだいぶ損をしている。

小学館文庫、鹿島茂『歴史の風 書物の帆』P52

あの鹿島先生が「メチャンコにおもしろい」と大絶賛しているのがこの本です。これは面白いに違いない!

I was excited to open this book, and I must say, Dr. Kashima is amazing! This book is truly "meh" and interesting.

The book shows that the birth of the railroad was not merely about the creation of a convenient means of movement and transportation, but that it fundamentally changed human values and worldview.

紹介したい箇所が山ほどあるのですが、今回はその中でも次の箇所を紹介したいと思います。

切通し、鉄道堤、トンネル、高架橋方式で地形を裁断してゆく鉄道線路は、十九世紀中葉のヨーロッパの風景を変え、また同様に旅行者の知覚をも変えた。

原動力の機械化で開始された、身近な生きた自然との離間は、風景の中を突っ切って、定規のように敷かれている線路の場合にも妥当する。

線路と街道との関係は、蒸気機関と輓獣との関係に等しい。共に機械の規則正しさが、自然の不規則性をねじ伏せている。動物の原動力の蒸気力による代替は、動物の労働と疲労がじかに感じとれなくなったこと、つまりこの生身の動物と結びついていた、空間感覚と運動感覚の喪失として体験される。

風景の自然な起伏に身をすり寄せていた街道の、定規で引いたように風景を裁断してゆく線路による代替は、この風景の喪失として体験され、トンネルの中では特にはっきりそう思われた。
Some line breaks have been made.

法政大学出版局、ヴォルフガング・シヴェルブシュ、加藤二郎訳『鉄道旅行の歴史―19世紀における空間と時間の工業化』2011年新装版第一冊版P31-32

この箇所は本文の大きな流れの中で説かれた部分なので少しわかりにくいかもしれませんが、私はこの箇所を読んでかなり衝撃を受けました。

鉄道以前の交通手段は馬車が中心です。馬車は当然ながら馬が車を引きます。つまり、自然の生き物と共に移動していくわけです。距離が進むにつれ馬たちは汗をかき、疲れていきます。そして道のりも平坦なものではなく、勾配あり、急カーブあり、でこぼこあり、ぬかるみありと、ありとあらゆる変化に満ちた道中になります。こうしたものを感じながらの移動が鉄道以前の旅でした。

それに対し鉄道は定規で引いたような直線を一定の速度で進んで行きます。そこにはかつてあったような変化がありません。

鉄道ができたことで、それまで自然に支配されていた旅がその様相を一変してしまうことになってしまったのです。

自然は予測不能な変化に満ち、曲線的で、人間にはいかんともしがたい存在でした。

それが鉄道の出現によって、自然は一直線に切り開かれ、予測可能でコントロール可能なものへと変化したのです。曲線から直線へ。この変化は人間の歴史においてとてつもない意味を持っていました。

人間のテクノロジーがついに自然をコントロールできるようになった。

当時の人々にとって、この意識は現代人が想像するよりもはるかに巨大なインパクトがあったと思われます。

この本ではこうした人類における巨大な意識転換をもたらした鉄道革命の歴史を知ることができます。これは面白いです。

鹿島先生が「メチャンコにおもしろい」と絶賛するのもわかります。とてもおすすめです!

以上、「W・シヴェルブシュ『鉄道旅行の歴史』~鉄道の発明は人間の意識を変えた!仏文学者鹿島茂氏も絶賛の名著!」でした。

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