Yuriko Kuchiki's "Vermeer's Journey to the Complete Works of Vermeer" - A fascinating travelogue by a journalist who visited Vermeer's works around the world.

Vermeer, the Painter of Light and the Scientific Revolution

朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』概要と感想~世界のフェルメール作品を訪ねたジャーナリストの魅力的な旅行記

今回ご紹介するのは2006年に集英社より発行された朽木ゆり子著『フェルメール全点踏破の旅』です。

Let's take a quick look at the book.

世界に散った「絵画の宝石」全37点カラー収録!!
日本でもゴッホと並ぶ人気を持つ十七世紀オランダの画家、ヨハネス・フェルメール。その作品は世界中でわずか三十数点である。その数の少なさ故に、欧米各都市の美術館に散在するフェルメール全作品を訪ねる至福の旅が成立する。しかもフェルメールは、年齢・性別を超えて広く受け入れられる魅力をたたえながら、一方で贋作騒動、盗難劇、ナチスの略奪の過去など、知的好奇心を強くそそる背景を持つ。『盗まれたフェルメール』の著者でニューヨーク在住のジャーナリストが、全点踏破の野望を抱いて旅に出る。

[著者情報]
朽木ゆり子(くちき ゆりこ)
東京生まれ。ジャーナリスト。国際基督教大学教養学部社会科学科卒。同大学院行政学修士課程修了。コロンビア大学大学院政治学科博士課程に学ぶ。一九八七年から九二年まで「日本版エスクァイア」誌副編集長。九四年よりニューヨーク在住。著書に『盗まれたフェルメール』『パルテノン・スキャンダル』(ともに 新潮選書)、『マティーニを探偵する』(集英社新書)、共著に『謎解きフェルメール』(新潮社)がある。『盗まれたフェルメール』と『謎解きフェルメール』は韓国語版が出版されている。

AmazonProducts Page.

この作品はジャーナリスト朽木ゆり子さんが世界中に散らばるフェルメール作品を訪ねた旅行記です。

上の著者情報にありますように、朽木ゆり子さんはフェルメールの専門家ではなく、ジャーナリストです。ですがジャーナリストだからこその視点でフェルメールを見ていくという点にこの本の面白さがあります。

そのことについて著者は「序章」で次のように述べています。

フェルメールは少し前までは神話的存在であり、情報も少なかった。ところが二十世紀後半になって、美術史家による研究は格段に進歩をとげた。展覧会の開催もフェルメール研究にプラスに働いた。たとえば、一九九五年の「ヨハネス・フェルメール」展の際には、ワシントンとハーグの両方でシンポジウムが行われ、その結果が本として出版された。この旅では、そういった最新の研究成果を活用しながら作品を見ていくことができた。

特に小林頼子の『フェルメール論』(八坂書房、一九九八年)と『フェルメールの世界』(NHKブックス、一九九九年)、そして「ヨハネス・フェルメール」展と「フェルメールとデルフト派」展のカタログは何度も繰り返し読んだ。本書でもそれらを紹介しながら、フェルメールに関する疑問を解き、同時に様々な新情報を整理していきたい。

最後に、美術史家による精緻な研究は確かに刺激的だが、ジャーナリストとしての私はそれとは少し別の視点を持っていることをつけ加えておきたい。私には、個々の作品がなぜ特定の都市の特定の美術館に所蔵されるようになったのかが気になる。画家がその絵を描いた背景も知りたいが、その絵がどんな人の手を経て美術館や個人の所有物となったか、なぜその人はその絵が欲しかったかというようなことに非常に興味があるのだ。

そして、多くの場合、そういった物語の背景には戦争、政治、そして富の創造といった要素が隠されている。あるテーマで構成された展覧会では、個々の絵はどうしても全体の一部という見方になるが、所蔵美術館という環境で見ると、絵の辿ってきた経路はより明確になる。フェルメールの場合は、作品の三分のニがヨーロッパの都市にあることから、それぞれの都市の歴史とフェルメールの絵の歴史的経路が何らかの形で交差するのではないかという予感があった。

十七世紀にも戦争や宗教をめぐる対立があったが、今もその状況は変わらない。イラクではアメリカが仕掛けた不条理な戦争が進行中だ。私がアムステルダムを訪れる少し前には、映画監督テオ・ヴァン・ゴッホ(画家ゴッホの子孫)が、イスラムを侮辱的に扱った短編映画を作ったとしてイスラム教徒に殺される事件もあった。さらに、十七世紀よりも文明や情報技術は格段に進歩したにもかかわらず、この旅行中に起こったインド洋大津波では三十万を超える人が亡くなった。こんな時代に、絵はどのような役割を果たすのだろうか。私たちは絵に何を求めるのだろうか。フェルメールの絵は何を語りかけてくるのだろうか。旅をしながら、そんなことを考えた。
Some line breaks have been made.

集英社、朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』P17-18

この文章を読むだけで著者のジャーナリストらしさが感じられますよね。

「美術史家による精緻な研究は確かに刺激的だが、ジャーナリストとしての私はそれとは少し別の視点を持っていることをつけ加えておきたい」

著者がこう述べるようにまさにこの本では「ジャーナリスト朽木ゆり子」としての視点からフェルメールを見、旅を続けていきます。

『自分はどういう視点から「それ」を見ていくのか』

これはあらゆることにおいて非常に重要な問題だと思います。

私もフェルメールを見るときは「僧侶、宗教者として」彼の作品やその歴史を学んでいます。

私がフェルメールに関心があるのは絵そのものの美しさはもちろんなのですが、やはりその背後にある歴史、思想、時代背景、特にキリスト教的文脈がどうしても大きな眼目になっていきます。

フェルメールを学んでいると従来のキリスト教世界から近代的な世界へのちょうど過度期の雰囲気を感じることができます。私にとってはそれが何よりも興味深いのです。

宗教的な世界観から科学的な世界観へ。

こうした宗教の興亡の問題が私にとってフェルメールを見る視点となっています。

The book is a travelogue by a journalist, which makes it very easy to read and summarize the local conditions and the key points of the Vermeer paintings. It is also gratifying to hear his candid views because he is not a Vermeer expert.

It is a great travelogue and I would recommend it as an introduction to Vermeer. It was a very interesting book!

以上、「朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』世界のフェルメール作品を訪ねたジャーナリストの魅力的な旅行記」でした。

Next Article.

Click here to read the previous article.

Related Articles

HOME