マイケル・ホワイト『ガリレオ・ガリレイ 伝記 世界を変えた人々17』あらすじと感想~天体望遠鏡を用い地動説を唱えた偉大な科学者のおすすめ伝記!
マイケル・ホワイト『ガリレオ・ガリレイ 伝記 世界を変えた人々17』あらすじと感想~天体望遠鏡を用い地動説を唱えたことで宗教裁判にかけられた偉大な科学者のおすすめ伝記!
今回ご紹介するのは1994年に偕成社より発行されたマイケル・ホワイト著、日暮雅通訳の『ガリレオ・ガリレイ 伝記 世界を変えた人々』です。
早速この本について見ていきましょう。
16・17世紀イタリアの科学者ガリレオの研究分野は、物の運動から宇宙の構造まで、とても幅広いものでした。彼は真理の追究に喜びを見いだし、その時代に信じられていたことのまちがいをつぎつぎと証明しました。そして、当時の世の中を支配していたカトリック教会の教えに反対して、地球は宇宙の中心であり、その回りを太陽がまわっているという“天動説”を否定し、地球が太陽の回りをまわっているのだと“地動説”を支持したのです。そのためにガリレオは、おそろしい宗教裁判にかけられ、異端の罪で有罪とされてしまいます。しかし、ガリレオは屈することなく、科学を信じ、研究をつづけ、その科学的な方法は、のちの時代の世界じゅうの科学者に大きな影響をあたえたのです。
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イタリアのピサ生まれの科学者、ガリレオ・ガリレイ。1564年というのはあのシェイクスピアが生まれた年でもあります。同じ年に世界を変えた天才が生まれているというのはなんとも感慨深いですよね。
さて、この伝記ではそんなガリレオの生涯と偉業がわかりやすく物語られます。写真や絵もたくさん掲載されていて非常に読みやすく、ドラマチックな語りでぐいぐい引き込まれてしまいます。これは素晴らしい伝記です。
以前私は当ブログでひのまどかさんの作曲家の伝記シリーズを紹介しました。
どの年代の人も楽しくかつ深く学べるという点でひのまどかさんの伝記は圧倒的なクオリティがありますが、このガリレオの伝記もそれを彷彿とさせる素晴らしい伝記でした。
ガリレオの生涯や偉業についてはここではお話しできませんが、この本の中で特に印象に残ったガリレオの言葉を2つほど紹介したいと思います。
「哲学者たちは、ほんとうなら『わたしにはわからない』とこたえるべきところを、『共感を持つ』とか『反感を持つ』、あるいは『神秘的な要素がある』といったことばでおおいかくしている。誤解をまねくような不誠実なことをいうより、率直にわからないといったほうがはるかにましだ。」ガリレオ・ガリレイ(『天文対話』より)
偕成社、マイケル・ホワイト、日暮雅通訳『ガリレオ・ガリレイ 伝記 世界を変えた人々』P1
天体望遠鏡で星を観察し、科学的な実験を重ねたガリレオ。そんなガリレオの理論はカトリック教会の語る世界観と真っ向からぶつかってしまいます。
しかもガリレオが住んでいたイタリアはローマカトリックのお膝元。宗教的に非常に厳格な地域です。少しでも教会の言うことと違えば異端審問にかけられます。
これが北ヨーロッパのイギリスやオランダと決定的に異なる点です。その後イギリスやオランダで科学が発展したのにはこういう背景もあったのでした。
そんなガリレオが述べたのが上の言葉だというのは非常に意味深いものがあると思います。これは現代でもそっくりそのまま通じる言葉なのではないでしょうか。
次は私のお気に入りの言葉です。これには思わずクスっと笑ってしまいました。
「古代バビロニア人は、吊り網に生卵をいれて、ぐるぐる振りまわしてゆで卵にしたのだ、とサルシが私に信じさせたいのなら、信じてもいい。しかし、その現象の起きる理由は、彼の考えていることとまるでちがうはずだ。真実を発見しようとするとき、私はこんなふうに考えをすすめる-他の人が以前に成功したのと同じ現象を、自分が起こせないとすると、自分のやり方には、なにかたりないものがあるはずだ。しかもそのなにかは、その現象の起きる原因となるものだ。もしたりないものがひとつだけだとしたら、それが現象を起こすただひとつの原因といえる。-このバビロニア人のゆで卵の問題では、私たちも同じように、卵と吊り網、それを振りまわすたくましい男たちも用意できる。しかし、はやく振りまわせば熱いものをさますことはできるが、卵はかたくならない。結局、私たちにたりないのはバビロニア人だけなわけだから、ゆで卵を作るにはバビロニア人にならなければだめだということになる。」ガリレオ・ガリレイ
偕成社、マイケル・ホワイト、日暮雅通訳『ガリレオ・ガリレイ 伝記 世界を変えた人々』P58
この伝記を読んで驚いたのですが、ガリレオはとても明るく、ユーモアのある人物だったそうです。科学的な思考を述べながらもそこにユーモアを交えて語るガリレオ。こうした親しみやすさが周囲の人を惹きつけていたのでしょう。
最後にこの伝記のラストで語られるガリレオの功績についてまとめられた箇所をご紹介します。少し長くなりますが非常に重要な指摘ですのでじっくり読んでいきます。
ガリレオ・ガリレイが科学の世界にあたえてくれたものは、はかりしれないものがあります。彼こそ、ルネサンスの意味するものの神髄を、まさにあらわしている人物だという人も多いのです。つぎの世代に登場するニュートンの先駆的な発見の数々にたいし、ガリレオは基礎を築いたといえます。そして、運動に関するこれらの原理は、今日の科学においても、あらゆる面で生かされているのです。
ガリレオは、おもちゃ同然だった望遠鏡を、ほとんど無限ともいえるくらい重要な科学器具に変えました。また、加速度の概念を考えだし、その考えを数式にあらわしましたが、それは今日でもほとんどそのままのかたちで生きています。人々が理解していたことを根本から変えてしまい、このことを、それまで想像もしなかったような単純で正確な実験で証明してみせました。
いろいろな意味で彼は、実験を重んじる科学者として最初の人であり、科学の世界にまったく新しい手法を開拓してみせた手本となる人なのです。
しかし、こうしたすぐれた業績の数々にもまして、ガリレオのなしとげた最大の貢献は、社会における科学の位置づけのために闘ったということです。彼は生涯を通じて、科学的に明確に考えるということを確立しようと努力しつづけ、人間の考え方に革命をもたらす道を開こうとしたのです。それは、彼が亡くなったすぐあとの世代でほんとうにはじまり、現代の科学の分野につづいていったのでした。
ガリレオ以前のヨーロッパは、知的な意味で不毛の地でした。科学的な思想というのはすべて、古くからの素朴な考え方にもとづいていて、二千年の昔からまったく変わっていなかったのです。しかし、ガリレオの死後、なにもかもが急速に変化していきました。それは、彼のくもりのない洞察力と、世間の人々に考えさせようとした、たゆまぬ努力のおかげなのです。
ガリレオを迫害し、彼の精神をくじこうとした、古くさくて心のせまい宗教は、彼の生活をおさえつけ、彼をあやつろうとしました。でも、彼の天才的な能力をおさえこむことは、どうしてもできなかったのでした。
ローマ・カトリック教会は、科学のもたらした革新の波と、ひろまる啓蒙思想をくいとめることには、完全に失敗しました。ガリレオの明確な論理と、妥協をゆるさぬ理性によって、古い考えにしがみついていた学説は、ついにぬぐいさられたのでした。
「啓蒙思想の時代」がとても早くおとずれ、止めることのできない速さで成長し、世界じゅうにひろまっていったのは、まさにガリレオのおかげだったのです。
偕成社、マイケル・ホワイト、日暮雅通訳『ガリレオ・ガリレイ 伝記 世界を変えた人々』P153-158
教会に対するかなり厳しい批判も述べられていますが、それほどこの時代は異端審問の恐怖がリアルなものでした。異端審問については以下の記事でお話ししていますのでぜひこちらもご覧ください。
そうした時代背景の中で信念を保ちながら研究を続けたガリレオには驚くしかありません。こうしたガリレオの研究があったからこそロバートフックやレーウェンフックの顕微鏡の研究も生まれ、世界認識が一気に変化していくことになります。それがまた光の画家フェルメールとも繋がっていくというのですから歴史というのは本当に面白いなと思います。
この伝記はそんなガリレオを学ぶ入門書として非常におすすめです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。以上、「マイケル・ホワイト『ガリレオ・ガリレイ 伝記 世界を変えた人々17』天体望遠鏡を用い地動説を唱えたことで宗教裁判にかけられた偉大な科学者のおすすめ伝記!」でした。
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ガリレオ・ガリレイ: 地動説をとなえ、宗教裁判で迫害されながらも、真理を追究しつづけた偉大な科学者 (伝記世界を変えた人々 17)
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