MENU

中村元『中村元の仏教入門』あらすじと感想~仏教の基本を学べるおすすめ入門書!初学者にもうってつけの名著

中村元の仏教入門
目次

中村元『中村元の仏教入門』概要と感想~仏教の基本を学べるおすすめ入門書!初学者にもうってつけの名著

今回ご紹介するのは2014年に春秋社より発行された中村元著『中村元の仏教入門』です。

早速この本について見ていきましょう。

インド学・仏教学の第一人者が、幅広い視点から、仏教の思想と実践を語る。わかりやすくて奥深い、初心者必読の書!

自らが設立した私塾・東方学院での講義録をもとに、インド学・仏教学の泰斗である中村元が仏教をやさしく解説。インドと日本の社会・文化を比較しながら、さまざまなユーモアあふれるエピソードを交え、釈迦と原始仏教の真髄を語る、初心者必読の書。

Amazon商品紹介ページより

この本はタイトル通り、仏教学者中村元先生による仏教入門書です。

中村元先生はインド思想研究の古典とも言うべき『インド思想史』を残しておられますが、この本について前田惠學氏は巻末の「あとがきに代えて」で次のように述べています。

東方学院で中村先生の講義が聴けなくなってから早くも十五年の歳月が流れました。かつて先生の講義に出席し、その広く深い学殖に裏付けられた講義に魅了された研究会員の方々の数も、歳月の経過につれて少なくなってきています。

先生を慕う方々から先生の講義の録音を活字化してほしいという要望が次第に強くなりました。その要望に応えて、幸い、自ら先生の講義に出席されていた本研究所の保坂俊司理事(中央大学教授)によって活字化が開始されました。ここにお届けする『中村元の仏教入門』は、その最初の成果であります。

本書はもともと講義録であったので、仏教の成立とその思想と実践をとても読みやすく分かりやすく語られていて、類を見ない魅力的な「仏教入門」であると思います。広い視野と豊かな知性にあふれた本書は、いま現在においてこそ、ぜひ多くの方々に読んでいただきたいと念願いたします。

春秋社、中村元『中村元の仏教入門』P197

ここにありますように、本書は中村元先生の講義録を基にして作られた作品です。中村元先生は1999年に亡くなられました。その中村元先生の講義の雰囲気を感じられる本書はまさに貴重な一冊となっています。

中村元先生の教えは仏教を思想だけでなく、時代背景や実際にインドを訪れた体験を通して語るところにその特徴があります。初学者でもわかりやすい言葉で興味深い内容をたくさん語ってくれる中村元先生です。仏教の入門書としてまず間違いないでしょう。

「仏教を学ぶ」というと肩肘張って気合いをいれて取りかからなければならないと気負ってしまう方も多いかもしれませんが、まずは中村元先生の講義を聴き、その全体像を掴むのがおすすめです。言葉も柔らかく、すらすら読めるので、すっと仏教の教えが入ってくると思います。

もちろん、日常ではなかなか接することのない仏教語も出てきますがじっくり解説を読めばきっとその意味するところは伝わると思います。難解な哲学はこの本では展開されません。私達の身近な生活と繋がる仏教を中村元先生は説いてくださります。

日本の仏教を考える上でもこの本は素晴らしい入り口になります。何事も基本が大切です。日本仏教もこうしたインド仏教を基礎として生まれています。開祖のゴータマ・ブッダが生きた世界はどのような場所だったのか、時代背景はどうだったのか、その教えはどのようなものだったのか、それを知ることで見えてくるものが必ずあります。

この本は仏教の基本を学びたい方への格好の入門書です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「中村元『中村元の仏教入門』~仏教の基本を学べるおすすめ入門書!初学者にもうってつけの名著」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

中村元の仏教入門

中村元の仏教入門

次の記事はこちら

あわせて読みたい
中村元選集第10巻『思想の自由とジャイナ教』概要と感想~六師外道の思想やジャイナ教と仏教のつながり... この本では六師外道が生まれてきた背景やそこからブッダが活躍するまでの流れも知ることができます。ブッダもたったひとりで全ての思想を生み出したわけではありません。六師外道をはじめとした優れた思想家たちとの切磋琢磨を経て思想を生み出しています。 こうした思想形成の流れを知る上でも六師外道やジャイナ教を学ぶことは大きな意味があると思います。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
中村元『ゴータマ・ブッダ』あらすじと感想~原典を駆使して「人間ブッダ」を明らかにした伝記。神話化... 正直、私たちが普段馴染んでいる仏伝や思想とは異なるものも書かれていますので、驚くこともあるかもしれません。まして日本の僧侶側からすると都合の悪い点もないとは言い切れません。ですがそうして都合の悪いことを隠したりごまかしたりしては思想の発展や仏道は閉ざされてしまいかねません。歴史を検証できる今だからこそそうした事実に向き合い、改めて私自身のあり方を問うことが大切なのではないでしょうか。

関連記事

あわせて読みたい
【現地写真から見るブッダ(お釈迦様)の生涯】⑴ネパール、ルンビニーでの王子様シッダールタの誕生! 今回の記事から全25回の連載を通してゴータマ・ブッダ(お釈迦様)の生涯を現地写真と共にざっくりとお話ししていきます。 私は2024年2月から3月にかけてインドの仏跡を旅してきました。 この連載では現地ならではの体験を織り交ぜながらブッダの生涯を時代背景と共に解説していきます。
あわせて読みたい
新田智通「大乗の仏の淵源」概要と感想~ブッダの神話化はなかった!?中村元の歴史的ブッダ観への批判と... 今作では浄土経典について説かれるということで浄土真宗僧侶である私にとって非常に興味深いものがありました。 特に第二章の新田智通氏による「大乗の仏の淵源」は衝撃的な内容でした。これは仏教を学ぶ全ての人に読んで頂きたい論文です。
あわせて読みたい
奈良康明『〈文化〉としてのインド仏教史』概要と感想~葬式仏教批判に悩む僧侶にぜひおすすめしたい名著! 文献に書かれた教義だけが仏教なのではなく、そこに生きる人々と共に歩んできたのが仏教なのだというのがよくわかります。私自身、この本にたくさんの勇気をもらいました。仏教は現代においても必ずや生きる力に繋がるのだということを私は感じています。
あわせて読みたい
植木雅俊『仏教学者 中村元 求道のことばと思想』あらすじと感想~日本を代表する仏教学者の桁外れのス... この本を読んで、大きな視点で世界を見ていく中村元先生のあり方に私も心打たれるものがありました。 この本は仏教とは何かを考えさせられる、非常に大きな意味を持った作品です。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。先生の異次元の業績に驚くこと間違いなしです。
あわせて読みたい
山下博司『古代インドの思想―自然・文明・宗教』あらすじと感想~インドの気候・風土からその思想や文化... この本ではモンスーン気候や乾季、雨季、森などインド思想を考える上で非常に興味深いことが語られます。 これは面白いです。インドだけでなく、あらゆる宗教、思想、文化を考える上でもとても重要な示唆を与えてくれる一冊です。
あわせて読みたい
中村元『古代インド』あらすじと感想~仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書! 仏教の教えや思想を解説する本はそれこそ無数にありますが、それらの思想が生まれてきた時代背景や気候風土をわかりやすくまとめた本は意外と少ないです。この本は私達日本人にとって意外な発見が山ほどある貴重な作品です。これを読めばきっと驚くと思います。
あわせて読みたい
馬場紀寿『初期仏教 ブッダの思想をたどる』概要と感想~最新の研究が反映されたおすすめの原始仏教入門書 この本を読んで私が一番印象に残っているのは中村元先生の説が最新の研究においては否定されているという点でした。 中村元先生についてはこれまでも当ブログでも様々な本を紹介してきました。中村元先生は1999年に亡くなられましたが、その後の仏教学の発展を本作で感じることができます。
あわせて読みたい
保坂俊司『インド宗教興亡史』あらすじと感想~仏教、ヒンドゥー教、イスラム教だけでなくシク教、ジャ... インド古代のバラモン教と仏教、ジャイナ教の関係。そこから時を経てヒンドゥー教とイスラム教が力を増す背景とは何だったのか。なぜ仏教は衰退したのか、そしてその姉妹宗教と言われるジャイナ教はなぜ今も生き残ることができたのか。これらを時代背景や宗教間の相互関係から見ていけるこの本は非常に貴重です。
あわせて読みたい
山崎元一『古代インドの文明と社会〈世界の歴史3〉』あらすじと感想~インドの思想・宗教が生まれてくる... この本は古代インドの歴史や文化を詳しく知ることができるおすすめの解説書です。 「詳しく知ることできる」というと、難しくて読みにくい本というイメージが湧いてくるかもしれませんがこの本は全く違います。ものすごく読みやすく、わかりやすいです。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次