MENU

安達正勝『死刑執行人サンソン』あらすじと感想~ジョジョ第7部ジャイロ・ツェペリのモデル!ムッシュ・ド・パリの生涯を知れるおすすめ作品!

目次

安達正勝『死刑執行人サンソン 国王ルイ16世の首を刎ねた男』概要と感想~フランス革命のもう一つの歴史。ムッシュ・ド・パリとは何者なのか

今回ご紹介するのは2003年に集英社より発行された安達正勝著『死刑執行人サンソン』です。私が読んだのは2021年第14刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

フランス革命もう一人の主役!!小説を超えた驚きの連続!
敬虔なカトリック教徒であり、国王を崇敬し、王妃を敬愛していたシャルル─アンリ・サンソン。彼は、代々にわたってパリの死刑執行人を務めたサンソン家四代目の当主であった。そして、サンソンが歴史に名を残すことになったのは、他ならぬその国王と王妃を処刑したことによってだった。 本書は、差別と闘いながらも、処刑において人道的配慮を心がけ、死刑の是非を自問しつつ、フランス革命という世界史的激動の時代を生きた男の数奇な生涯を描くものであり、当時の処刑の実際からギロチンの発明まで、驚くべきエピソードの連続は、まさにフランス革命の裏面史といえる。

Amazon商品紹介ページより

この本はムッシュ・ド・パリとして知られるパリの処刑人サンソンについて語られた作品です。

まず目につくのは表紙のイラストですよね。私もこの表紙を見て「おっ!!」と思いました。

なんと、荒木飛呂彦先生のジャイロ・ツェペリがそこにいるではありませんか!そしてこんな言葉も!

ぼくのSBRスティールボールラン(『ジョジョの奇妙な冒険』第7部)のジャイロ・ツェペリをご存知?
実をいうとこの〝サンソン〟が、彼のモデルなんです。  荒木飛呂彦

集英社、安達正勝『死刑執行人サンソン』2021年第14刷版表紙より

ご存知もご存知!私はジョジョの奇妙な冒険が好きで、その中でも一番好きなのがまさにSBRなのです!(五部も捨てがたい!)

そしてこのジャイロ・ツェペリとリンゴォ・ロードアゲインとの戦いがジョジョ全作品中最も好きな戦いです。

さて、そんな私も大好きなジャイロ・ツェペリのモデルとなった死刑執行人サンソンとは何者なのかを見ていくのがこの作品になります。

著者はあとがきでこの本について次のように述べています。

私が初めてシャルルーアンリ・サンソンに興味を持ったのは、二十年ほど前のことである。マラー暗殺事件を起こしたシャルロット・コルデという女性のことを調べた際、処刑場に向かう馬車に一緒に乗ったサンソンが、途中、この殺人犯の女性に細かい心遣いを見せる情景が非常に印象深かった。

この本には人を殺す話がたくさん出てくるけれども、けっして猟奇趣味で書かれたものではない。代々死刑執行人を家業とする家に生まれ、フランス革命に遭遇したために、心ならずも、敬愛する国王にまで手にかけることになってしまった一人の人間のドラマを書くことが目的だった。

処刑されるのはもちろんだれだって嫌だが、やるほうも嫌なのである。サンソンは、自分の行為は犯罪人を罰する正義の行為なのだと何度も何度も自分に言い聞かせ、家業をつづけてきたのだが、国王ルイ十六世の処刑に直面して、自分の職業に対する正当性の確信が根底から揺いでしまった。そして、恐怖政治がさらにサンソンに追い打ちをかける。

死刑執行人という職業は、つらく、悩み多いものである。死刑執行が存続する限りは、だれかが刑を執行しなければならないのだが、それを行なう人間を世間は忌み嫌い、差別する。一六三頁に掲げたサンソン家の紋章には二匹の犬が描かれていて、れて音の出ない鐘を不思議そうに見ている。サンソン家の歴代当主たちは狩猟を趣味にしていたので、いつも犬を飼っていた。犬は人を差別しない。だから、世間から除け者にされていたサンソン家の人々は犬を友として暮らしていた―この紋章には、そうした意味も込められている。

まったく私一人にしか関係のないことを一言だけ述べるのをお許し願いたい。私はもともとバルザックが好きで仏文科にいった人間である。今回は、バルザックの著作を参考にし、バルザックの作品から引用したりもした。これが、私にはとても嬉しい。以上。

集英社、安達正勝『死刑執行人サンソン』2021年第14刷版P240-241

「この本には人を殺す話がたくさん出てくるけれども、けっして猟奇趣味で書かれたものではない。代々死刑執行人を家業とする家に生まれ、フランス革命に遭遇したために、心ならずも、敬愛する国王にまで手にかけることになってしまった一人の人間のドラマを書くことが目的だった。」

この作品はまさしく処刑人一族という運命を背負ったサンソン家の人間ドラマが描かれています。

処刑人というと、冷酷で血も涙もない野蛮なイメージを持ってしまうかもしれませんが、この本を読めばそのイメージはがらっと変わることになります。

まさに、サンソンほど高潔で人間味あふれる人はいないのではないかと思うほどです。

処刑人という人を殺すことを職業としながら、人を生かす医師としても超一流だったサンソン。

当時、差別され周囲の人々から蔑みの目で見られるこの職業において、それでもなお一人の人間としていかに高潔に生きていくのかを問い続けたサンソン。

フランス革命の激流に巻き込まれながらも懸命に生き、究極の問題を問い続けたこの人物には驚くしかありません。

冒頭の商品紹介にもありましたように、

フランス革命もう一人の主役!!小説を超えた驚きの連続!

当時の処刑の実際からギロチンの発明まで、驚くべきエピソードの連続は、まさにフランス革命の裏面史といえる。

というのはまさにその通りです。

この作品はフランス革命を普通とは違った目線で知ることができる素晴らしい作品です。

これはぜひおすすめしたい名著です。ものすごく面白いです!こんな人物がいたのかと驚くこと間違いなしです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「安達正勝『死刑執行人サンソン』ジョジョ第7部ジャイロ・ツェペリのモデル!ムッシュ・ド・パリの生涯を知れるおすすめ作品!」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)

死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)

次の記事はこちら

あわせて読みたい
鹿島茂『デパートの誕生』あらすじと感想~なぜ私たちは買いたくなるのか!パリの老舗百貨店に学ぶその... 鹿島氏は、「デパートとは純粋に資本主義的な制度であるばかりか、その究極の発現」であるとします。 それはなぜかというと、「必要によってではなく、欲望によってものを買うという資本主義固有のプロセスは、まさにデパートによって発動されたものだからである」と述べます。 つまり、現在私たちが生きている資本主義のシステムはここから始まったと言えるほどデパートの誕生は大きな意味を持つものだったのです。なぜ私たちは「ものを欲しい」と思ってしまうのか。それを刺激する欲望資本主義の原点をこの本で知ることができます。 この本はビジネスのバイブルとしても非常に価値のある作品です。文化史、世界史として非常に刺激的で面白い作品ですが、さらび商売の仕組みまで学ぶこともできるというあまりに贅沢な一冊です。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
ガストン・ルルー『オペラ座の怪人』あらすじと感想~劇団四季のミュージカルの原作はサスペンス感満載... 私も大好きなミュージカル『オペラ座の怪人』。その原作を読めたのは非常に楽しい読書となりました。ミュージカルとはまったく別物と考えた方がいいです。これはこれでひとつの物語として楽しめます。読みやすく、ハラハラする展開であっという間に読み切ってしまいました。 ミュージカルファンの方にもぜひおすすめしたいです。この原作をミュージカル化したアンドリュー・ロイド=ウェバーの怪物ぶりがよくわかります。これは私にとっても非常に興味深いものがありました。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

関連記事

あわせて読みたい
P・マクフィー『フランス革命史 自由か死か』あらすじと感想~フランス革命の背景を大きな視点で捉える... この本を読んで特に感じたのは革命のカオスぶりです。 あまりに多様な人々をどうひとつにまとめていくのか、何かひとつのことをする度に、必ず不利益を被る人が出てくる。そしてその人達は政府の反対者となり、革命の歩みは難しくなる。ではどうするのか?ギロチンか・・・ こうした問題にどうしてもぶつかってしまうのが革命なのかという事を考えさせられました。
あわせて読みたい
P・マクフィー『ロベスピエール』あらすじと感想~フランス革命恐怖政治の独裁者は本当はどんな人物だっ... 政敵を無慈悲に断頭台に送り込んだ精神異常者ロベスピエール。そんな単純な話で還元できるものではありません。 その姿勢こそ本書の最も特徴的なポイントであり、私が感銘を受けた点でした。 この本は人間の複雑さ、そして置かれた環境によって人間はどうなりうるのかということを考えさせられる名著です。
あわせて読みたい
ユゴー『死刑囚最後の日』あらすじと感想~ユゴーの死刑反対への思いが託された渾身の小説 ユゴーは生涯、死刑に反対し続けていました。 そんな彼の思いを死刑執行の瞬間を待つ死刑囚の手記という形を取って作品にしたのがこの小説です。 興味深いことにロシアの文豪トルストイも死刑執行に対して非常に嫌悪を抱いた人物です。彼もパリで見た死刑執行に激しい怒りを感じたと言われています。 当時の死刑執行は民衆の見世物になっていました。多くの人間がそれを見ることを娯楽として楽しんでいたのです。 そんな中でユゴーとトルストイは民衆とはまったく異なる目でそれを見つめていたのでした
あわせて読みたい
パリでギロチン処刑を見てショックを受けるトルストイ~非暴力主義の源泉とユゴー、ドストエフスキーと... クリミア戦争から帰還したトルストイはしばらくロシアに滞在したものの、そこで知識人や上流階級の人々に嫌気がさし、1857年にパリに向けて出発します。 そしてそこで目にしたギロチン処刑にショックを受けたのでありました。 19世紀ヨーロッパを代表する3人の文豪、トルストイ、ユゴー、ドストエフスキー。 この3人に「死刑」という共通点があるというのは非常に興味深いものがありました。
あわせて読みたい
G・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』あらすじと感想~なぜフランス革命は起こったのかを詳... フランス革命は、知れば知るほど面白いです。とんでもなく背景が入り乱れています。 そしてその一つ一つを紐解くことで歴史の流れがまた違った姿を見せてきます。 前回ご紹介しました神野正史『世界史劇場 フランス革命の激流』は革命そのもの流れを知るには最適な一冊でしたが、今回のルフェーブルの著作はそもそもこの革命が起こる背景は何だったのかをさらに詳しく知ることができます。 この2冊の相乗効果は素晴らしいものがあると私は思います。 フランスに興味のある方にぜひおすすめしたいです。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次