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ウィーンのシンボル、シュテファン大聖堂~独特な岩のオブジェが特徴的! オーストリア編②

シュテファン
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独特な岩のオブジェが特徴的!ウィーンのシンボル、シュテファン大聖堂 僧侶上田隆弘の世界一周記―オーストリア編②

ウィーン散策でまず向かったのは市内中心部にそびえ立つ最も目立つ建造物、シュテファン大聖堂だ。

この教会を中心に街を作ったのではないかと思うほど、街の中心に位置している。

この教会が初めて作られたのは12世紀半ば頃、当時はロマネスク様式の建築だったそうだ。

そこから14~16世紀にかけて現在の姿となるゴシック様式に改築された。

建物の構造は同時代に作られたプラハの聖ヴィート大聖堂に似ているものの、この教会の特徴は宙に吊るされた石の装飾だ。

この石が一体何を表すのか、そもそも本当に石なのかは近くで見てもわからなかったが、オレンジ色のライトに照らされた石は非常に美しかった。

石とライトと教会。

この組み合わせはなかなか思いつかないが、いざ目にしてみるとここまで馴染むものかと驚いた。

主祭壇に近づいてみよう。

やはりゴシック建築らしく、装飾も少なくすっきりしている。

ステンドグラスも鮮やかに輝いている。

シュテファン大聖堂はこの主祭壇の見学だけではなく、北と南にある塔にも上ることができる。

聖堂の入場自体は無料だが、見学料を払えば色々なものを見ることができる。

ぼくもその一つ、カタコンベツアーというものに参加してみた。

カタコンベとは地下の納骨堂のことだ。

そこにはペストで亡くなった約2000体の遺骨や、ハプスブルグ家の心臓以外の内臓を納めた壺などが安置されている。

そこはすべて撮影禁止エリアであったのだが、行ってみる価値はあった。

中はひんやりしていて少し不気味な空気が流れていた。

聖堂内部の美しさと違って、地下は中世の古い石の構造が続いていた。

行く先々で聖職者の遺体が入った棺桶や、先ほど述べたハプスブルグ家の人々の内臓を納めた壺を目にすることになる。

ハプスブルグ家の葬送の慣習は非常に興味深い。

遺体と心臓と内臓をそれぞれ別の教会に安置するというのがハプスブルグ家の埋葬方法なのだ。

そこにはハプスブルグ家が込めた大きな意味が存在するのだろう。

今のぼくにはわからないが、一つの葬送儀礼の形として学ぶには十分すぎるほど価値がありそうだ。

カタコンベの最後にはペストで亡くなった大量の遺骨が納められている部屋を見ることになった。

先ほどまでの聖職者やハプスブルグ家の納められていた空間とはまるで違う。

もっと暗く、もっと造りが粗末な通路。

これまでは古い造りといってもきれいな空間だった。

しかしここから先はまるで石造りの牢獄といってもよいほどの暗さや質感だった。

案内された部屋はそこに小窓が備え付けてあった。

そこから納められたお骨が見られるという。

どのような光景が広がっているのだろうか。

息を呑んで小窓を覗いてみる。

すると、そこは5m四方くらいの空間だっただろうか。

小窓のすぐ先には頭蓋骨があった。欠損のない完璧な頭蓋骨。

まるで覗き見るぼくらを眺めているかのようだ。

そして視線を奥に、空間の中心部へ移してみるとそこにはびっしりと無造作に積み重ねられた人骨が山のようにして安置されているのが見えた。

これは、安置と言っていいのだろうか。ぼくは言葉が見当たらなかった。

ガイドさんによると、ここはペストで亡くなった遺体が投げ込まれた場所とのこと。

それで空間の中心部に無造作にお骨が積み重なるこの状況が生まれたのかと納得する。

よく観察してみると、それにしてもお骨の状態がよい。1本1本の骨の形がしっかり残っている。

クトナーホラの時もそうだったが、火葬をしないと人の骨はこんなにもきれいに残るものなのだなと改めてここでも感じることになった。

さて、教会の見学を終えたぼくは夜にまたこの教会を訪ねてみることにした。

シュテファン大聖堂は夜にはライトアップも行われている。

夜の都会に急に現れるシュテファン教会。

この教会は街の中心でずっと人々の姿を見守ってきた。

900年以上も昔からこの大聖堂はウィーンの人々と共にある。

ウィーンの人々にとってシュテファン大聖堂はもはや単なる建物ではなく、心のよりどころとして愛されている。

続く

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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