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榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』あらすじと感想~レミゼファン必読のおすすめ漫画!

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榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』あらすじと感想~レミゼファン必読のおすすめ漫画!

今回ご紹介するのは2024年10月にKADOKAWAより発行された榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』です。

早速この本について見ていきましょう。

『レ・ミゼラブル』を「ABCの友」の学生たち目線で描く群像譚、開幕。

19世紀フランス、パリ。
貧富の差は広がり、権力は腐敗の一途を辿る。
街角では憲兵の目をかいくぐりながら、
反政府運動が活発化していた。
救済院でボランティアをするお人好しな医学生・コンブフェールと、
積極的に学生運動を行う美しき青年活動家・アンジョルラス。
ふたりの出会いは、哀れな人々《レ・ミゼラブル》の
希望となるか、憂いとなるか──

Amazon商品紹介ページより

この作品は『レ・ミゼラブル』ファンにぜひぜひおすすめしたい漫画です。

私がこの作品を手に取ったのはX(旧Twitter)でのこちらのポストがきっかけでした。ポスト内の動画をぜひご覧ください。

『レ・ミゼラブル』ファン、特にミュージカルを愛する方にとって「ABCの友」の存在はとてつもなく大きなものがあります。かく言う私も劇中の「ABCカフェ」の歌が大好きで、そこからの「民衆の歌」の流れや「ワン・デイ・モア」はもうたまりません。最高です。やはりレミゼには彼ら「ABCの友」は欠かせません。

今作『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』はそんな「ABCの友」を深く掘り下げた作品になります。

上のポスト内の動画にありますように、この作品は「ABCの友」結成の前から物語が始まります。レミゼ本編では虚しく散る彼ら革命の学生たちではありますが、その彼らがいかにして集い、結束していったのかが物語られます。本編では彼らはすでに「ABCの友」として完成されていましたが、その前哨譚を見れるのはファンとしても実に嬉しいものがあります。

そして書名の『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』にありますように、この作品は『レ・ミゼラブル』に対する強いリスペクトが感じられます。

そして私がこの漫画を読んで最も心に来たのは、「革命を単に理想化しないこと」でした。言葉にすればシンプルな話ですが、これはなかなかできることではありません。と言いますのも、レミゼのミュージカルでは彼ら革命学生達はあまりに爽やかで好人物たちばかり、しかも理想に殉じて命を燃やし壮絶な最期を迎えます。つまり、彼らの革命はあまりにロマンチックで理想化されたものになっています。このロマンチックな彼らの姿がミュージカルの魅力なのは間違いありません。私もこうしたドラマチックな展開に惹かれている人間の一人です。

ただ、残念ながら一歩引いて現実的に考えると「フランス革命」を理想視して再び王政を倒すのだという考えはあまりに暴力的であり無謀であったというのも否定できません。そもそもフランス革命自体が本当に民衆の自由のための革命で、民衆の生活が良くなったのかという問題があります。こうした問題は以前当ブログでも紹介したG・ルフェーヴル『1789年―フランス革命序論』やP・マクフィー『フランス革命史 自由か死か』『ロベスピエール』などでも語られていました。フランス文学者鹿島茂先生の『職業別 パリ風俗』『馬車が買いたい!』、西永良成著『『レ・ミゼラブル』の世界』も当時の時代背景を知るのにおすすめの参考書です。

さて、話は少し大きくなってしまいましたが、私個人としては革命を理想視するあり方には危険を感じています。今作『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』も「ABCの友」を描いた漫画ということで、そういう作品かもしれないという警戒心も正直あったのですが、読んでみて驚きました。著者は単に暴力革命を理想視した「ABCの友」を描いていたのではなかったのです。さらに言えば、様々な出自や個性を持った多種多様な学生が集まる多面的な集団を描き出していました。「これはお見事!」と私も感銘を受けました。

特に「自由のために、やつらを断頭台へ!」と暴力革命を純粋に志向するアンジョルラスに対してのコンブフェールの次の言葉は秀逸です。

・・・その志は立派だよ でも 君たちのやり方は英雄譚に憧れているだけに見える

考えてみてほしい
40年前の大革命は本当にこの国を変えたのか・・・?

たくさんの血を流して社会を混乱させた その結果が今のパリを生んだんじゃないのかな・・・?

僕たちは 変革を求めるべきだ
でも 暴力に頼るべきじゃない

国が弱い者を見捨てるなら
僕らが手を差し伸べる

僕らが団結して助け合うことはこの国を変える第一歩になる

1789年にとどまる必要はない

僕らは新しい方法でこの国の未来を・・・

KADOKAWAより発行された榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』第一話より

この言葉にアンジョラスは「ハッ」と目が開かれることになります。このアンジョルラスの変化、いや成長はこの漫画の大きな魅力となっています。理想に忠実で完璧な美男子たるアンジョルラスではありますが、やはり彼はどこか人間味を感じさせない大理石のような存在でありました。ですがそんな彼の未熟さや堅物ぶりが仲間との出会いから少しずつ変わっていくのは彼のファンならずとも心奪われること間違いありません。

また、『レ・ミゼラブル』は「惨めな人達」というタイトル通り、原作はかなりダークな雰囲気が漂う作品です。ミュージカルでは明るい「ABCの友」やコメディータッチのテナルディエの存在でその悲惨さは大幅に中和されていますが、レミゼの舞台背景は実はかなり暗いものがあります。

この漫画でも主人公のコンブフェールは第一部から過酷な体験をさせられることになります。そんな重くなりがちなレミゼの空気を著者は絶妙なバランスで描いています。そのため私達読者は舞台の深刻さを理解しつつも暗くなりすぎずに読むことができます。まさに絶妙。個性豊かなキャラクター達がうまく生かされています。すでに私も何度も読み返しているのですが、読めば読むほどその見事さに気づくことになりました。セリフやカット割りの細部にまで著者のこだわりが見えてきます。

いやあ、これは素晴らしい漫画です。『レ・ミゼラブル』のミュージカル開演まであとわずかになりましたが、これは嬉しい出会いとなりました。この漫画を読んでレミゼへの熱量がどんどん上がっていくのを感じます。レミゼファン必読です。この漫画を読めばもっとミュージカルが楽しくなること間違いなしです。もちろん、原作ファンにとってもこの作品が非常にリスペクトに満ちていることもお伝えしたいです。実に本格的な作品です。私もこの作品には感嘆の念でいっぱいです。

『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』は現在も連載中です。第1巻では「ABCの友」のひとりひとりがいかにして仲間になっていったのかが魅力的に描かれましたが、この後の展開も実に楽しみです。もちろん、最後の結末は私達もよく知るところでありますが、やはり私達はそこまでの過程を知りたいわけです。原作やミュージカルではすでに「ABCの友」が出来上がっている所から一気に戦いへと突入し、散ってしまいます。あの魅力的な学生達ひとりひとりの個性を深く味わえるこの作品はとても貴重です。ぜひぜひこの作品はおすすめしたいです。

ミュージカル観劇の前にこの漫画を読んで一緒に楽しみましょう!私も来年1月に観劇の予定です。劇場でパンフレットと一緒に販売された方がよいのではないでしょうか(笑)レミゼ公式本になれるほどの素晴らしい作品だと私は感じています。

以上、「榮恵愛『-レ・ミゼラブルより- ルールブルーの友らへ』あらすじと感想~レミゼファン必読のおすすめ漫画!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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