辛島昇・坂田貞二編『世界歴史の旅 南インド』あらすじと感想~写真満載!チェンナイなど北インドと異なる独特な建築や文化を学ぶのにおすすめ!
辛島昇・坂田貞二編『世界歴史の旅 南インド』概要と感想~写真満載!チェンナイなど北インドと異なる独特な建築や文化を学ぶのにおすすめ!
今回ご紹介するのは1999年に山川出版社より発行された辛島昇・坂田貞二編『世界歴史の旅 南インド』です。
早速この本について見ていきましょう。
サリーの華やかな色合い。悠久たるガンジスの流れ。インドの旅は日本では出会えない不思議な魅力に満ちている。その源泉は「歴史」にある。多くの異なった民族が来住し、長い年月をかけて築き上げた文化。南インドに残るドラヴィダ文化は、北インドのアーリヤ文化とは異なった、知られざるインドの一面をみせてくれる。高く聳えるヒンドゥー寺院の門塔、海のシルクロードの港町、元祖カレー料理も魅力である。
Amazon商品紹介ページより
今作『世界歴史の旅 南インド』は北インドとは異なる文化を持つ南インドのおすすめのガイドブックです。
本書の特徴は何と言っても写真が満載な点にあります。素晴らしい写真を見ながら南インドの歴史を辿っていくと、自分も南インドにぜひ行ってみたくなります。
本書について「まえがき」では次のように述べられています。少し長くなりますが南インドの特徴についてもわかりやすくまとめられた箇所ですのでじっくり読んでいきます。
日本人がインドについて抱いてきたイメージは,「仏の生国」「神秘の国」「暑い国」「経済的低開発国」など実に多様である。旅行をすると,日本とは全く違った国だという思いもしてくる。それでいて何かそこには,良いも悪いも,人間生活の原点があるのだというような気がしてきて,圧倒される。その結果,のめりこんでしまうか,場合によっては,逃げて帰りたくなってくるかもしれない。その重みはどこから来るのだろうか。
それは,インド文化のもつ5000年の歴史の重みである。インドについては「多様の中の統一」という言葉がよく用いられるが多くの言語,多くの民族をかかえながら,その中に「統一」が生まれたのも,そもそも,数多くの民族がそこにいるということ自体5000年の歴史のなせるわざである。自分がインドにひかれたり,嫌いになったりするのは,何故なのだろうと思ったら,その歴史を知らなければならない。
この本は,インドの「旅」と「歴史」のガイドである。第Ⅰ部では歴史が,第Ⅱ部では旅が語られる。しかし読者は,そのどちらから読みはじめてもいい。歴史好きな人や,すでにインドを旅してきた人なら,歴史の方から読めばいいだろう。そうでなければ,町や遺跡について記す第Ⅱ部を読みながら,インドの旅をすればいい。でも,旅をしているうちに,かならず歴史のところを読みたくなってくる。それがインドの旅である。
本書のねらいは,そのように「歴史」と「旅」の往復運動をすることによって,読者にインドを分かってもらおうというところにある。それこそが,本書のオビにいう「知の旅行案内」の意味である。日本史,世界史の教科書,数々の歴史シリーズの出版で定評のある山川出版社ならではの企画で,第Ⅱ部の執筆者は,現地での生活体験にとんだ気鋭の研究者である。自分達が住んだ町,訪れた遺跡での感動を,読者に伝えてくれるだろう。
そして本書の最大の特色は,インドの歴史と旅を,「北」と「南」に分けたところにある。言語の分布を見てみると,インド亜大陸には四つの異なった言語系統が見られるが,大維把にいえば,北インドではアーリヤ系言語,南インドではドラヴィダ系言語が話されている。前者はさらに,インド・ヨーロッパ語族の言語として,ヨーロッパの諸言語とつながるのだが,ドラヴィダ系言語は,それと全く系統を異にする言語である。
また,北インドと南インドでは,自然の景観もずいぶんと異なる。北には冬があり,大陸としての風景が広がるのだが,南インドは常夏の国であり,椰子の葉先の向うには,キラキラと輝くインド洋がある。そして,そこに連なる宝石の島。そのスリランカの歴史と旅も加えてある。読者には,北インド,南インド,スリランカ,それぞれの魅力と,全体が創りだす「文化的統一」の魅力をも,十分に味わっていただきたい。
南インドの一つの特徴は,高い塔のそびえるヒンドゥー教寺院にある。それはタンジャーヴールの大シヴァ寺院に見られる本殿の四錐型シカラ(屋根)であったり,マドゥライのミーナークシ寺院に見られる四方のゴープラム(門塔)であったりするのだが,デカンで見られるホイサラ様式の,細かい彫刻で壁面がびっしりうめられた寺院をふくめて,それは南インドの世界を象徴する。それらの寺院で夕方の祈りになりひびく楽隊の音楽は,われわれの心をときめかす。
南インドはまた,海のシルクロードの世界である。ローマの船がやってきた古代の港ポドゥケーは今やひっそりと眠っているが,アラブや中国の船が訪れた中世の港コチは,今も胡椒の取引に賑わいを見せている。コチにはヴァスコ・ダ・ガマの墓石も残る。胡椒をはじめ,世界が求めた香辛料の数々を自らが産みだし,その市場がたつ南インドこそは,香辛料を用いたカレー料理発祥の地である。
南インドを旅すれば,北インドとは違った魅力がそこにある。しかし,カレーがインド全体の料理となったように,インドは,多様でいてその中に統一があるのである。それを理解する「かぎ」は,歴史の中にある。読者にはその「かぎ」を手に,インドの世界を旅していただきたい。
山川出版社、辛島昇・坂田貞二編『世界歴史の旅 南インド』P1-2
私達はインドというと、ひとつのインドを思い浮かべてしまいがちですが、インドは広い!(笑)
日本でも関東と関西では文化が違うように、インドも北と南、いや全方位においてそれぞれの文化があります。
この本を読めば南インドの雰囲気が伝わってきます。
写真も満載ですので南インド入門に格好のガイドブックとなっています。
ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「辛島昇・坂田貞二編『世界歴史の旅 南インド』~写真満載!チェンナイなど北インドと異なる独特な建築や文化を学ぶのにおすすめ!」でした。
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