佐藤正彦『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』概要と感想~カトマンズの仏教建築を詳しく知れる驚きの作品
佐藤正彦『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』概要と感想~カトマンズの仏教建築を詳しく知れる驚きの作品
今回ご紹介するのは2012年に鹿島出版会より発行された佐藤正彦著『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』です。
早速この本について見ていきましょう。
ネパール主要都市の寺院を網羅。20余年の歳月をかけて実測したカトマンズ、パータン、バドガウンの250寺院の図面を掲載。独特の美的感覚をもつネパールの寺院建築の全貌に迫る。
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ネパールの仏教については以前紹介した中村元選集第21巻『大乗仏教の思想』や田中公明/吉崎一美著『ネパール仏教』をご紹介しました。
そして本書『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』はネパールの宗教建築に特化した作品になります。これはかなりマニアックな本です。ですがネパールの独特な宗教建築について詳しく知りたい方にはまたとない作品となっています。
著者はネパールとその宗教建築についてエピローグで次のように述べています。
私にとって、行くたびに外国のような感じがせず、落ちついていられる国の一つがネパールであった。人々がしつこく寄りついてこないからであろうか、緑の山に囲まれた風景があるからであろうか、いやそればかりではない。町に数多くある寺々が、木骨レンガ造すなわち木材とレンガの併用建築であったり、あるいはレンガ造で、比較的小型であるからであろう。
ネパールには東大寺大仏殿や南大門のような向こうからこちらにせまってくるような巨大な建築は少ない。そして、我が国内において見なれている木材が、寺院のかなりの部分で使用されている。木骨レンガ造はもちろんのこと、レンガ造といっても、柱をはじめ軸部や出入口の方立や楣、窓の枠、あるいは根太天井などはすべて木材である。しかも、柱の刳型、肘木や窓枠、根太の木ロ、方杖など、外部に向けての彫刻が内部より豊冨なので、見ていて楽しいし目にやさしい。そのうえ、結界を示す門や塀もなく、道を歩いていてひょっこり寺院にでくわし、礼拝できるのがネパール寺院である。これが我々を落ちつかせ、癒してくれるのかもしれない。
鹿島出版会、佐藤正彦『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』P306
ここで述べられるように、ネパールの雰囲気や宗教建築はインドとも中国とも違います。
そして木がたくさん使われているというのは日本人にとって馴染みのものなのかもしれません。私もいずれネパールを訪ねる予定ですのでその時はじっくり見てきたいと思います。
また、この本ではネパールの主要な街であるカトマンズやパータン、バドガウンの寺院が紹介されます。地図上にその位置もすべて記されているのでこれは貴重です。『地球の歩き方』にも載っていないマニアックな寺院も網羅されているのでこれはありがたいです。
写真も豊富ですので現地の様子もイメージしやすいです。
かなりマニアックな本ですがネパールの宗教や建築に興味のある方にぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「佐藤正彦『ヒマラヤの寺院 ネパール・北インド・中国の宗教建築』~カトマンズの仏教建築を詳しく知れる驚きの作品」でした。
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