『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』概要と感想~仏教とカースト制の関係や時代背景を学ぶのにおすすめ!
『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』概要と感想~仏教とカースト制の関係や時代背景を学ぶのにおすすめ!
今回ご紹介するのを2010年に佼成出版社より発行された奈良康明、下田正弘編集『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』です。
早速この本について見ていきましょう。
仏教を成立、発展させた基盤はインド亜大陸にある。古来より多種多様の民族が移動し、ヒンドゥー文化を形成しながら、そこから生まれてきた仏教。古代の歴史と社会、宗教の起源、儀礼と文化などの諸相に着眼しながら、仏教が世界史上に出現した背景を考察する。
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この本は仏教教団が生まれた当時のインド社会を知るのにおすすめの作品です。
仏教もゴータマ・ブッダという偉大な人物が突然生まれたわけではなく、古代より続くインド世界の文脈の中で生まれてきたことがよくわかります。
この本について「序」では次のように述べられています。
本書は全十五巻よりなる「新アジア仏教史」の第一巻で、インドにおける「仏教出現の背景」を扱う。具体的には、仏教を生み育てたインドの社会と宗教、文化がテーマである。
仏教を広く思想、文化として捉えるとき、インドの仏教伝承を成立、発展させた基盤は無論インド亜大陸、最近はネパール、スリランカを含んで「南アジア」というが、その人びとであり、社会である。ここでは、古来より驚くほど多種多彩な民族、種族、部族等が移動し、あるいは外部世界から到来し、相互に交流した。生活文化の諸相は重層化、並列、融合しつつ、自ずと「多様性の統一」を特徴とする世界が展開されてきている。(広義の)「ヒンドゥー教」ともいわれるが、この世界のなかにおいてこそ、仏教は成立し発展してきたものである。
以下に、ヒンドゥー教世界の仏教、古代の歴史と社会、宗教の起源と展開、儀礼と文化の変遷、文学と宗教、イスラームとの共存、といったテーマで、インドの宗教と社会が叙述される。特論および五篇の「コラム」も、新しい視点から、インド宗教の重要な諸側面を理解させてくれるはずである。
佼成出版社、奈良康明、下田正弘編集『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』P3
また、この本の中で特に印象に残ったのはカースト制度と仏教教団についての解説です。
仏教はカースト=ヴァルナ制度を理念としてはきびしく非難するものの、現実にはその制度の枠内にとどまっている。ヒンドゥー世界内における仏教の限界というべきである。
佼成出版社、奈良康明、下田正弘編集『新アジア仏教史01インドⅠ 仏教出現の背景』P43
「仏教はカースト制度を否定した」というのはイメージとして多くの方が抱いているのではないでしょうか。私もこれまでそう理解していました。ですが、この本では上の言葉にありますように、仏教教団は理念ではカーストをきびしく批判するものの、実際生活においてはラディカルな批判や反対運動には繋がっていなかったことが明らかにされます。これには私も驚きました。
そしてその流れでそもそも仏教教団を構成しているメンバーがどの階級の出身が多かったかなど、後世の私たちには意外と盲点になりそうなデータも知ることになります。
当時の社会事情を見ていくことで思想や理論だけでは見えてこない仏教教団の姿が見えてきます。これは刺激的でした。やはりインドは一筋縄ではいかない存在だなと改めて実感することになりました。
これはぜひおすすめしたい作品です。
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