辛島昇『インド文化入門』あらすじと感想~謎の国インドを映画、食、物語、言語など様々な切り口で見ていくおすすめ入門書
辛島昇『インド文化入門』概要と感想~謎の国インドを映画、食、物語、言語など様々な切り口で見ていくおすすめ入門書
今回ご紹介するのは2020年に筑摩書房より発行された辛島昇著『インド文化入門』です。
早速この本について見ていきましょう。
遠くインダス文明にまでさかのぼり、異文化が交錯する要衝の地として繁栄してきたインド。そのため現在も多様な民族、言語、宗教が混在する。また古来よりカースト制が敷かれてきたことから、社会階層も多様に存在している。しかし、どの地方、どの民族のカレーを食べてもカレーとしてのカテゴリーに収まっているように、インド文化圏は多様な中にも統一性が保たれている。それはいったいなぜなのだろうか?映画、新聞広告、絵画、物語、遺跡、陶磁器、食べものといった身近なテーマを切り口に、インドの文化と歴史を丸ごと理解する、世界的権威によるまたとない入門書。
Amazon商品紹介ページより
この本は謎の国インドを映画、新聞広告、絵画、物語、遺跡、陶磁器、食べものなど様々な視点から見ていくおすすめの入門書になります。
この本と著者について巻末の竹中千春氏による解説では次のように述べられています。
本書について語ろう。実におもしろい本だ。どんどん頁を繰りたくなる。放送大学の「南アジアの文化を学ぶ」の授業のために書かれた教科書で、各章が一話完結で構成され、どの章から読んでもよい。たいていの教科書は、知識をできるだけ詰め込もうとして堅苦しく説教くさいものだが、この本は違う。ミステリー仕立ての謎解き本のようだ。未知の世界のインドに迷い込んだ読者たちは、まるで「不思議の国のアリス」のように、白うさぎもどきの走って行く先生を追いかけて前に進む。常識がひっくり返り、謎の人物や奇妙な光景が次々と登場する。けれども、なんとか先生に付いて走っていくと、やがてゴールにたどり着き、先生から謎解きを教えてもらう。「そうだったのか」と心底納得するような答えである。わくわくする知の冒険だ。
冒険のテーマは、身近なものを「手がかり」としてインド文化論を探るということだ。読者を導く先生は、疑いなく偉大な歴史家であり、インド研究の大家にほかならない。けれども、先生が真実を追究する姿勢は、ずいぶん従来の学者のイメージとは異なっている。一九世紀以来、ヨーロッパから生まれた近代の歴史学では、公文書館で史料を収集し、図書館で書籍を読破し、それらをもとに過去の出来事を科学的に証明するという方法が正統とされてきた。先生はそうした学問の王道を踏まえつつも、そこに内在する限界を打ち破るために、独自の研究手段を繰り出す。そして、壁を突破するためのヒントやひらめきを、ご家族でインドに滞在された経験とか、友人との会話とか、日常の暮らしの中から引き出してくる。まさに、斬新な「知の技法」をやさしく教えてくれる、理想的な先生だ。
筑摩書房、辛島昇『インド文化入門』P262-263
この解説にありますように、この本はインド初学者でも楽しく読み進めることができるとても面白い作品です。語られる内容も多岐にわたっていますので、きっと読者ひとりひとりにぐっと来る章が必ずあると思います。
私の中で一番印象に残ったのは第十章の「カレー文化論―南アジアの統一性」です。インドといえば「カレー」というのは私もイメージとして強くあったのですが、ではいざ「そのカレーってそもそも何なのだろう」と聞かれるとなかなか難しい。漠然としか「カレー」という存在を考えたことのなかった私にとってこの章はとても刺激的でした。まさかカレーがインド文化そのものを知る大きな鍵となっていたとは!
また、第九章の「海のシルクロードとインド―胡椒・陶磁器・馬」も興味深かったです。私は昨年ローマ帝国について学び、実際にローマも訪ねてきました。そのローマ帝国とインドのつながりを知れたこの章にはものすごく興味をそそられました。
そしてこの本では章ごとに参考文献が書かれているのもありがたかったです。自分が興味を持ったジャンルの本をすぐに調べることができるというのはとても便利です。私も早速この参考文献を利用し、次に読む本をいくつかチョイスしました。この本を入り口にさらに深くインドを学んでいくことができるという、入門書として格好の作品となっています。
ぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「辛島昇『インド文化入門』~謎の国インドを映画、食、物語、言語など様々な切り口で見ていくおすすめ入門書」でした。
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