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丹下和彦『ギリシア悲劇』概要と感想~ギリシア悲劇の奥深さを学べるおすすめ入門書
今回ご紹介するのは2008年に中央公論新社より発行された丹下和彦著『ギリシア悲劇』です。
早速この本について見ていきましょう。
後世に残されたギリシア悲劇は、三三篇のみで、しかも、そのすべてが紀元前五世紀に創作・上演されたものである。宗教性、文芸性、社会性、いずれの面からしても、当時のポリス・アテナイの独自性と不可分のものであったこれらの演劇が、時代と場所を異にする場でも、人間を考えるための普遍性を維持しているのはなぜだろうか。本書は、代表的な一一篇の豊かな内容に分け入りながら、その魅力と奥深さを探る。
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ホメロスの『イリアス』や『オデユッセイア』をはじめとしたギリシア神話と比べて若干知名度が落ちるギリシア悲劇。
スフィンクスの出てくる『オイディプス王』こそ圧倒的な知名度はありますがその他の悲劇となると意外とわからないという方も多いのではないでしょうか。
かく言う私もその一人で「ギリシア悲劇」という単語は知ってはいても、どんな作品があってどんな歴史があるものなのかはほとんど知りませんでした。
私は以前トルストイの『戦争と平和』の流れからホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』を読みました。
その時ギリシア神話の面白さに衝撃を受けた私ですが、悲劇の方は未だ手が伸びずという状態だったのでした。
そんな中シェイクスピアを学ぶ流れで私は蜷川幸雄さん演出の『王女メディア』、『グリークス』という作品を知ることになりました。シェイクスピア演劇はもちろん、演劇全体においてもギリシア悲劇は大きな意味持っています。そうであるならば私もそのギリシア悲劇を学んでみたい、そう思いこの本を手に取ってみたのでありました。
この作品ではギリシア悲劇の起源やその流れをまず序章で学ぶことになります。
そこから時代順に、アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスというギリシア悲劇の重鎮たちの作品を通してその奥深さを考察していく流れになります。時代を経ていくにつれて悲劇の内容がどう変わっていったのかが非常にわかりやすく説かれているのでこれはとてもありがたかったです。
ただ、この本ではそれらの悲劇の内容を丁寧に見ていくのでギリシア悲劇を全く知らない人でも読めるようになってはいるのですが、やはりいきなりこの本を読むのは少しハードルが高いなと私は感じました。あらかじめギリシア神話などについての知識を少しでも持っているとよりすっと入っていけるのでないかと思います。
私はギリシア神話については阿刀田高さんの『ホメロスを楽しむために』や『ギリシア神話を知っていますか』などの本を読んでいました。これらの本を読んでいたことでギリシア悲劇に出てくる人物たちや神話の背景、歴史などもある程度前知識として持つことができました。それがなかったらこの本を読むのも少し大変だったかもしれません。
ですのであらかじめギリシア神話に関する入門書を読んでからこの本に取りかかることをおすすめします。そうすればもっともっとこの本を楽しむことができるのではないかと思います。
名前は知っていてもなかなかその中身までは知らないギリシア悲劇。そのギリシア悲劇の奥深さを知れるおすすめの入門書です。
以上、「丹下和彦『ギリシア悲劇』~ギリシア悲劇の奥深さを学べるおすすめ入門書」でした。
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ギリシア悲劇: 人間の深奥を見る (中公新書 1933)
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