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J・A・オールスン『特捜部Q 檻の中の女』あらすじと感想~ナイーブな凄腕主人公が魅力のおすすめ海外ミステリー!

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J・A・オールスン『特捜部Q 檻の中の女』あらすじと感想~ナイーブな凄腕主人公が魅力のおすすめ海外ミステリー!

今回ご紹介するのは2012年に早川書房より発行されたユッシ・エーズラ・オールスン著、吉田奈保子訳の『特捜部Q 檻の中の女』です。

早速この本について見ていきましょう。

【人気シリーズ早くも文庫化! 】 捜査への情熱をすっかり失っていたコペンハーゲン警察のはみ出し刑事カール・マークは新設部署の統率を命じられた。とはいってもオフィスは窓もない地下室、部下はシリア系の変人アサドの一人だけだったが。未解決の重大事件を専門に扱う「特捜部Q」は、こうして誕生した。まずは自殺と片付けられていた女性議員失踪事件の再調査に着手したが、次々と驚きの新事実が明らかに!

Amazon商品紹介ページより

この作品はデンマーク発の大ヒット刑事小説シリーズ「特捜部Q」の記念すべき第一作目に当たります。

この作品について文芸評論家池上冬樹氏は巻末の解説で次のように絶賛しています。

傑作シリーズの登場である。親本(ハヤカワ・ミステリ1848)が上梓されておよそ一年、もう早くも文庫化するのは抜群に面白いからである。読者の心を掴んではなさないからである。僕が熱狂したように、本書を読んだらすぐに続きが読みたくなり、二作目、三作目に手が伸びるだろう。〝いまもっとも面白い注目の警察小説は何ですか?〟と聞かれたら、僕は躊躇なく、ユッシ・エーズラ・オールスンの「特捜部Q」シリーズをあげる。(中略)

むかしからミステリ、とくにハードボイルドや警察小説をたくさん読んできたし、また海外のテレビ・ドラマ(たとえば「CSI」など)も好きで見ているので、そう簡単には心動かされないし、警察小説にできることはあまりないだろうと思っていたのだが、『特捜部Q―檻の中の女―』を読んで驚いた。刑事のキャラクター、部署の設定、脇役の配置(人種的配置)、事件捜査、物語の構成、脇筋の絡ませ方などに細かい配慮と創造があり、いやはや感心してしまったのだ。しかもアクションはたっぷりあるし、物語はエモーショナルで、結末は実に感動的だ。しかも二作、三作と数えるほどにスケールが大きく物語が豊かになっていくからたまらない。いまもっとも面白い警察小説のシリーズだと断言できる。

早川書房、ユッシ・エーズラ・オールスン、吉田奈保子訳『特捜部Q 檻の中の女』P571-572

私も知人からこの本をおすすめされて読み始めたのですが、すぐに夢中になってしまいました。

まず、主人公カール刑事のキャラクターが魅力的です。とてつもなく優秀で行動力や責任感も強いのですが、とにかくナイーブ。ものすごく繊細です。こうした「刑事もの」の主人公としてはなかなかいないタイプのキャラクターです。

ですが単に繊細でうじうじしているのではなく、言いたいことをズバッと言ったり、周りに流されずどんどん行動していくその姿には頼れる男の格好良さがあります。

バリバリの凄腕刑事であると同時にナイーブな内面を同居させた人物像に私達読者は魅了されることになります。

また、彼の相棒となるアサドという人物も魅力的です。この男もとにかく謎です。飄々としているのですが随所に常人ならざる仕事っぷりを見せ、物語にいいスパイスを与えてくれます。彼の過去も今作以降のシリーズで徐々に明らかにされるということで、続編への期待も否応なく高まります。

このナイスなコンビで立ち向かうのが誰もが匙を投げた難事件。タイトルの「檻の中の女」はまさにこの事件と絡んできます。

内容についてはこれ以上は踏み込みませんが、さすが今大注目のミステリーです。私もこの展開は全く予想がつきませんでした。謎が謎を呼ぶ展開。緊張感。これは一気に読ませます。私はそれこそ貪るように読み切ってしまいました。ちびちび読むのは不可能です。先が気になって止まることができません。

著者のストーリー展開はもう言わずもがなの素晴らしさですが翻訳も素晴らしいと思います。とにかく読みやすい!これは素晴らしい海外ミステリーです。

そして個人的にこの作品で一番ぐっと来たのが次の何気ない一言です。

「私の車はBMWではなく、メルセデスです。それに結婚はしていません」

早川書房、ユッシ・エーズラ・オールスン、吉田奈保子訳『特捜部Q 檻の中の女』P31

これは物語冒頭に出てくる医師のセリフなのですが、彼は名前すら与えられない、いわばモブキャラです。ですがこのセリフに私はにやっとしてしまいました。「あ、これはもう大好きな小説になること間違いなしだ」と私はここで確信したのです。

と言いますのも、私は村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』や伊藤計劃の『虐殺器官』が大好きです。

これらの作品も主人公がナイーブで、しかもどこか世間ずれしたユーモアや皮肉が物語内で語られることになります。

私は上の名も無き医師の言葉からそれらと同じ匂いを感じたのです。

案の定、この作品は私の好みにドストレートでした。完璧な相性です。

村上春樹や伊藤計劃が好きな方にぜひとも読んでほしい作品です。逆に言えばこの作品が好きな方は『ダンス・ダンス・ダンス』や『虐殺器官』も必ずやヒットすることでしょう。

もちろん、今大注目のミステリー小説ということでミステリーファンだけでなく、全ての人におすすめしたい名作です。シャーロック・ホームズシリーズを読んだその流れでこの作品を読むのも味わい深いでしょう。ミステリーの面白さを体感できる素晴らしい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「J・A・オールスン『特捜部Q 檻の中の女』あらすじと感想~ナイーブな凄腕主人公が魅力のおすすめ海外ミステリー!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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