目次
【ローマ旅行記】(14)ローマバロック芸術の王ベルニーニとは!ローマの美の鍵はこの男にあり!この旅行記の主役をいよいよご紹介!
これまでの記事で古代ローマとキリスト教ローマについてお話ししてきたが、いよいよここからはこの旅行記の主役であるベルニーニについてお話ししていく。
ベルニーニ(1598-1680)Wikipediaより
ベルニーニといえば何と言ってもサン・ピエトロ大聖堂にあるこちらの作品が有名だ。
バルダッキーノ(手前)とカテドラ・ペトリ(後方) ブログ筆者撮影
初めて見た時、その独特な姿に言葉を失ってしまうほどの衝撃を受けたバルダッキーノ。
そしてそのバルダッキーノの先にはカテドラ・ペトリというこれまたベルニーニの傑作が配置されている。
そして「ミケランジェロとベルニーニが設計したサン・ピエトロ大聖堂の美の秘密を解説 イタリア・バチカン編⑥」の記事でもお話したが、ベルニーニはこの大聖堂内の装飾やバチカン広場の設計も担当している。
あわせて読みたい
ミケランジェロとベルニーニが設計したサン・ピエトロ大聖堂の美の秘密を解説 イタリア・バチカン編⑥
この記事ではサン・ピエトロ大聖堂の建築とミケランジェロ、ベルニーニという二人の天才についてお話ししていきます。
ミケランジェロが建築家としてサンピエトロ大聖堂を設計していたという驚きの事実や、それを引き継いだベルニーニがいかに人々を魅了する芸術を生み出していったかを紹介していきます。皆さんもきっと彼らの天才ぶりに驚くと思います。
なぜバチカンはこんなにも美しいのか、それはベルニーニという偉大な天才がいたからこそなのだった。
ここからは石鍋真澄著『ベルニーニ バロック美術の巨星』を参考にベルニーニの作品と生涯を見ていく。
あわせて読みたい
石鍋真澄『ベルニーニ バロック美術の巨星』あらすじと感想~ローマの天才のおすすめ伝記!これを読めば...
芸術とはそもそも何なのか。なぜ私たちはローマに惹き付けられるのか。
その鍵がベルニーニにある。
ベルニーニを知れば新たに見えてくるものがあるということを強烈に感じた1冊でした。
素晴らしい名著です!
石鍋真澄はこのベルニーニとバロック美術について「序」で次のように述べている。
今日「バロック」という用語は、美術史家によってさまざまな意味に用いられる。その定義は、それを用いる美術史家と同じ数だけあると言っても過言ではない。それでも、彼らがほぼ一致して認める事実が一つある。それは、バロック美術がおよそ一六〇〇年頃から一六七〇年頃にかけて、ローマで最初にして最も重要な結実をみた、という事実である。つまり、ローマはバロック様式の発生の地といってよく、ローマなくしてバロック美術を語ることはできないのである。
一方、バロック美術一般に対するかつての偏見は今日充分克服され、その芸術性は広く認められるようになった。
この時代は、いってみれば視覚芸術の偉大な実験の時代であった。その大胆な実験精神と横溢する想像力には目を見張るばかりであるが、そうしたバロック美術の創造的ヴァイタリティーに、イメージの時代に生きるわれわれが魅了されるのもうなずけるところてある。
たとえば一九八一年にパリの近代美術館で開かれた展覧会「バロック81」に言及した横尾忠則氏が、「われわれは目下バロックの真只中にいるのではなかろうか」(『ユリイカ』一九八四年三月号)と言っているのも、故のないことではないように思う。
このような美術史的重要性と高い芸術性をもつローマ・バロック美術は、偉大な美術家を育て上げた。
初期バロックの画家カラヴァッジョ、彫刻および建築のべルニーニ、同じく建築家ボルロミーニ、画家兼建築家ピエトロ・ダ・コルトーナ、そしてフランス人画家ニコラ・プサンなどがその代表である。
しかしこれらの中でも、べルニーニの重要性は群を抜いている。ローマ・バロック美術の代表者を一人あげよと言われて、ベルニーニの名をあげることに反対する美術史家はまずあるまい。
彼は疑いなく、十七世紀イタリア最大の美術家であり、「時代の精神」を見事に視覚化した天才であった。ミケランジェロが盛期ルネッサンスおよびマニエリスム期のイタリアの「時代が要請した美術家」てあったのと同様だったといえる。が、おそらくそれ以上に、べルニーニはバロックという時代を具現した天才だったのである。
そしてもう一つには、今日見るローマの都市の「演出家」としても、彼の名を忘れることはできない。
しばしば指摘されるように、ローマはべルニーニという一人の天才の刻印を強く残した、バロックの都市である。ローマでは目に見えるものすべてか舞台美術的な性格をもっているので、訪れた者はあたかも劇場の舞台に迷い込んだかのような錯覚におそわれる。つまり、都市の所々に残る古代の遺跡だけでなく、そちこちに点在する彫刻や噴水や広場が幻想的な雰囲気をかもし、都市全体に類稀な魅力を与えているのだ。
こうした魅力は、べルニーニという天才の想像力から生まれたと言っても過言ではない。実際、トリトーネの泉やナヴォナ広場の噴水、そしてサン・タンジェロ橋やサン・ピエトロ広場は皆彼の手に成るのだし、またトレヴィの泉もスペイン広場も彼なくしては今日の姿はなかったであろう。そうした意味で、ローマを訪れて少しでもその魅力を感じるならば、その人はべルニーニの世界を理解する素養をもっているといえるのである。これだけ多くの人がローマを訪れ、その魅力を感じながら、その魅力の本体や創造者について知らずにいるのは、いかにも残念に思われてならない。
※スマホ等でも読みやすいように一部改行した
吉川弘文館、石鍋真澄『ベルニーニ バロック美術の巨星』P1-3
私はこの本を読んでベルニーニの芸術に心を奪われてしまった。
芸術とはそもそも何なのか。なぜ私はこんなにもローマに惹き付けられるのか。その鍵がベルニーニにある。そしてそれを確かめんがために私はローマでベルニーニ詣でを決行したのである。
プロセルピナの略奪 ボルケーゼ美術館蔵 Wikipediaより
アポロとダフネ ボルゲーゼ美術館蔵Wikipediaより
聖テレジアの法悦 Wikipediaより
これより先バロックの天才ベルニーニの作品とその美の秘密をじっくりと見ていく。石鍋真澄が「これだけ多くの人がローマを訪れ、その魅力を感じながら、その魅力の本体や創造者について知らずにいるのは、いかにも残念に思われてならない。」と述べるのはもっともだ。だが逆に言えばベルニーニについて知ればもっともっとローマが楽しくなるのは間違いないのである。現に私は今回のローマが楽しくて楽しくてならなかった。ローマはこんなにも奥深い所だったのかと驚嘆せずにはいられなかったのである。
ちなみにこれは私がローマでのベルニーニ詣でをするために用意した簡単な「ベルニーニメモ」だ。時系列順に並べてあるので参考にして頂ければ幸いだ。いわばこれからの旅行記のお品書きでもある。
では、早速ベルニーニの素晴らしい芸術世界を堪能していくことにしよう。
続く
主要参考図書はこちら↓
サン・ピエトロが立つかぎり: 私のローマ案内
ベルニーニ: バロック美術の巨星 (歴史文化セレクション)
※【ローマ旅行記】の記事一覧はこちらのカテゴリーページへ
特におすすめのスポットを以下の記事でまとめています。
あわせて読みたい
ローマおすすめ観光スポット15選!王道から穴場まで美の極致を味わい尽くす!
この記事では私も大好きなローマのおすすめ観光スポットをご紹介していきます。
サン・ピエトロ大聖堂やコロッセオなどの有名どころだけではなく、観光客があまり訪れないマニアックな教会もこの記事ではご紹介していきます。
ローマは実に素晴らしい街です。ですがあまりに見どころが多すぎるが故の罠もあります。ぜひ当ブログの記事が皆様のお役に立てれば何よりでございます。
※ローマやイタリアを知るためのおすすめ書籍はこちらのカテゴリーページへどうぞ
「ローマ帝国の興亡とバチカン、ローマカトリック」
「イタリアルネサンスと知の革命」
次の記事はこちら
あわせて読みたい
(15)モーツァルト級の才能と驚異の頭脳を発揮する神童ベルニーニ~16世紀ローマの特殊な社会状況も紹介
ベルニーニの神童ぶりには驚くしかありません。ベルニーニはこの時代には珍しい長寿の人生を送りました(これもくしくもミケランジェロとも同じだ)。
そしてその長い人生の始まりからしてすでに傑出した才能を示していました。
前の記事はこちら
あわせて読みたい
(13)関係者以外立入禁止のバチカン市国内部を特別に見学!サン・ピエトロ大聖堂の貴重な裏側も!
バチカン市国には国家としての機構も当然あります。銀行や郵便局、裁判所などなど様々な施設が領内に存在します。ただ、大聖堂や美術館以外のエリアは関係者以外は立ち入り禁止のため、それらを目にすることは一般観光客にはできません。
ですが、なんと!そこに私は入場できることになったのでした!
この記事ではそんな私の体験をお伝えします。普段見ることのできないバチカンの姿を皆さんにご紹介します。
関連記事
あわせて読みたい
ローマのおすすめ参考書一覧~歴史、文化、宗教、芸術!ローマがもっと面白くなる名著を一挙ご紹介!
ローマはあまりに奥が深い。そして知れば知るほどはまってしまう底なし沼のような存在です。私もこのローマの浪漫にすっかりとりつかれてしまいました。
あわせて読みたい
フィレンツェを知るためのおすすめ参考書一覧~ダ・ヴィンチやマキャヴェリ、ダンテなど芸術や歴史、文...
フェイレンツェといえばボッティチェリやレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど言わずもがなの巨匠の作品が今なお世界中の人を魅了し続けている華の都です。
知れば知るほど面白いフィレンツェです!ぜひこの記事を役立てて頂ければ幸いです。
あわせて読みたい
(27)ベルニーニ『聖テレジアの法悦』~バロック美術の最高傑作!コルナーロ礼拝堂の驚異のイリュージ...
官能的とすらいえるほどの恍惚境が表現された衝撃的な彫刻です。
実際に現場で観てみた私も衝撃を受けました。この彫刻がバロックの最高傑作と言われるのがよくわかります。
私はローマ滞在中何度もこの教会を訪れました。何度観ても感嘆してしまいます。電気もライトもない時代にこれほど完璧に光を操ったというのは衝撃的としか言いようがありません。ベルニーニ恐るべしです。
あわせて読みたい
石鍋真澄『サンピエトロが立つかぎり 私のローマ案内』あらすじと感想~美術、歴史、宗教、全てを網羅し...
この本は最高です!
ローマの魅力を堪能するのにこれほど優れた作品は存在しないのではないでしょうか!それほど素晴らしい作品です。
「本書によってローマの魅力を会得した読者は、熱い旅心を呼び覚まされるにちがいない。」
まさにこれです!この本を読むとものすごくローマに行きたくなります!
あわせて読みたい
高階秀爾『バロックの光と闇』あらすじと感想~ベルニーニの魅力やバロック芸術とは何なのかを時代背景...
この本ではダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロなどのルネッサンス全盛期の芸術とバロックは何が違うのか、どのようにしてバロックの技術が生まれてきたのかということがわかりやすく説かれます。
バロック芸術そのものだけではなく、その時代背景まで知れるこの作品はぜひぜひおすすめしたい逸品です。
あわせて読みたい
石鍋真澄『カラヴァッジョ ほんとうはどんな画家だったのか』あらすじと感想~誤解された生涯やマタイ問...
この本の「カラヴァッジョに関しては、事実と推測や仮説とが節操なく語られているのが実情だ」という著者の指摘はドキッとするものがありました。
案の定、この本では「え!?そうなの!?」という事実がどんどん出てきます。
あわせて読みたい
石鍋真澄『教皇たちのローマ』あらすじと感想~15~17世紀のローマ美術とバチカンの時代背景がつながる...
私はこの本に衝撃を受けました。それは私の中にあった常識が覆されたかのような凄まじいショックでした。
この本ではそんな衝撃のローマ史が語られます
あわせて読みたい
近藤昭『絵画の父プッサン』あらすじと感想~フランスアカデミーの規範となった理想風景画の大家の伝記
1600年代のイタリア絵画のことを知れる本すらそもそも貴重な中で、プッサンの生涯と時代背景も学ぶことができるこの本は非常に興味深かったです。
この本を読んでいて気づくのは著者のプッサンへの愛です。この本はそんな著者の並々ならぬプッサン愛も感じられる作品となっています。ぜひおすすめしたい一冊です。
コメント