菊池良生『傭兵の二千年史』あらすじと感想~世界の歴史の見え方が変わる名著!サッコ・ディ・ローマを学ぶ過程で見つけたおすすめの逸品!
菊池良生『傭兵の二千年史』概要と感想~世界の歴史の見え方が変わる名著!サッコ・ディ・ローマを学ぶ過程で見つけたおすすめの逸品!
今回ご紹介するのは2002年に講談社より発行された菊池良生著『傭兵の二千年史』です。私が読んだのは2021年第12刷版です。
早速この本について見ていきましょう。
古代ギリシアの民主制の崩壊に始まり、中世を経て、ナポレオンの時代に至るまで、歴史の転換点で活躍したのは多くの傭兵たちだった。
ヨーロッパ興亡史の鍵は、傭兵にあった! 古代ギリシャからはじまり、ローマ帝国を経て中世の騎士の時代から王国割拠、近代国家成立まで、時代の大きな転換点では、常に傭兵が大きな役割を果たしてきた。
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1527年のサッコ・ディ・ローマ(ローマ劫掠)事件。
私がこの事件を知ったのは以前当ブログでも紹介した『教皇たちのローマ』を読んだのがきっかけでした。
この事件は1527年にローマが攻撃され、虐殺、略奪の限りが尽くされた恐るべき出来事でした。
しかもそれを行ったのが何を隠そうカール5世の神聖ローマ帝国軍でした。
カール五世はスペインと神聖ローマ帝国という二つの国の皇帝です。つまり彼は熱烈たるカトリック国家のトップにいた人物になります。そのカトリック王国の盟主が聖地バチカンを徹底的に破壊し略奪したというのですから私はその事実に頭がくらくらする思いでした。
と言いますのも、私はこれまで、スペインはアメリカ大陸の発見後その黄金を用いてカトリックの繁栄と宗教改革への対抗のために莫大な財と労力を用いていたと理解してきました。
たしかにそれは事実なのですが、そんなスペイン・神聖ローマ帝国があろうことかカトリックの総本山のバチカンを略奪し破壊するなんて想像できるでしょうか。
なぜこのようなことが起きてしまったのかは長くなってしまうのでお話しできませんが、私にとってはこの出来事はあまりに衝撃的なものとなったのでした。これまでもローマ掠奪(サッコ・ディ・ローマ)という出来事自体はキリスト教史を学ぶ上でおそらく目にしていたことはあったはずです。ですがこの出来事の重大さ、深刻さには全く気付いていませんでした。この本を読んで初めてその意味がわかりました。そのような意味でも『教皇たちのローマ』はこれまでのキリスト教観を覆してくれた作品になりました。
というわけでサッコ・ディ・ローマに興味を持った私はこの事件の原因となったドイツ傭兵ランツクネヒトの存在にも関心を持つようになったのでした。
この事件は単にカール五世やローマ教皇などの政治支配者の意向だけの問題ではなく、当時の戦争システム、つまり傭兵システムそのものにも大きな原因があるのではないかと思うようになったのです。
そんな時に出会ったのがこの『傭兵の二千年史』でした。
この作品の素晴らしいところは傭兵のそもそもの始まりから歴史を見ていける点にあります。
古代ギリシャからの歴史の変遷を「傭兵」という観点から見ていく本書は非常に刺激的です。
この本を読んでしまうと歴史の見え方がそれまでと全く変わってしまいます。
人間ははるか昔から戦争を繰り返してきました。しかしその戦争を戦っていたのは誰だったのか。
もちろん、その主役は王侯貴族だったかもしれません。しかしひとりひとりの兵士はどこからやって来たのか。そしてどのようなシステムで戦争は行われてきたのか。
興味深いことにこの本で語られる傭兵の歴史は日本の歴史ともリンクしてきます。
日本の歴史を考える上でもこの本は非常に重要な示唆を与えてくれます。
この本を読んだおかげでサッコ・ディ・ローマ事件についての見方がまた変わりました。私にとっても非常にありがたい作品でした。
これは面白いです。ぜひぜひおすすめしたい名著です。
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