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陶山昇平『薔薇戦争』あらすじと感想~シェイクスピアの『ヘンリー六世』『リチャード三世』の時代背景を知るのにおすすめの解説書!

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陶山昇平『薔薇戦争』概要と感想~シェイクスピアの『ヘンリー六世』『リチャード三世』の時代背景を知るのにおすすめの解説書!

今回ご紹介するのは2019年にイースト・プレスより発行された陶山昇平著『薔薇戦争』です。

早速この本について見ていきましょう。

「分断」の代名詞として今なお英国民にトラウマを残す混沌。
薔薇戦争とは何だったのか?

15世紀に勃発したランカスター家(赤薔薇)とヨーク家(白薔薇)による王位をめぐる権力闘争――薔薇戦争。
EU離脱に揺れるイギリスでは、国を二分するその亀裂が今なおこの内乱の惨禍になぞらえられている。
かように鮮烈な記憶を英国民に焼き付けた激しい争いは、いかに繰り広げられ、何をもたらしたのか。
のちのテューダー王朝による絶対王政という「正義と秩序」を成立させるに至った、長きにわたる混乱を読み解く。

内乱の引き金は、本当にランカスター家による王位簒奪劇なのだろうか。
ヘンリー・テューダーの即位は、イングランドに真の平和をもたらしたのだろうか。
そして、内乱の前後でイングランドの政体はどのような変化を遂げたのだろうか。
本書ではテューダー王朝百十八年間の下で育まれた史観を念頭に置きながら、
この未曽有の内乱を概説することにしたい。(「はじめに」より)

Amazon商品紹介ページより
シェイクスピア作『ヘンリー六世 第1部』の一場面。ヨーク公リチャード(左)と同志が白いバラを選び、サマセット公エドムンド(右)は赤いバラを選んでいる。Henry Payne画。1908年 Wikipediaより

私が本書『薔薇戦争』を手に取ったのはシェイクスピアの『ヘンリー六世』『リチャード三世』の時代背景を知りたいと思ったからでした。

と言いますのも、私はシェイクスピア初期の史劇であるこれら『ヘンリー六世』や『リチャード三世』を読み始めたのですが、登場人物が多かったりその立場などもさっぱりわからず挫折してしまったのです。

これは以前当ブログでも紹介した『ジュリアス・シーザー』『アントニーとクレオパトラ』でも起きた現象でした。古代ローマを舞台にしたこれらの作品も時代背景を知らずに読み始めたのですが、さっぱりわからず挫折してしまったのです。

ですが阿刀田高さんの『シェイクスピアを楽しむために』を読んで時代背景を知ってから再挑戦したところ、これが面白いのなんの!

やはり時代背景や大まかな話の流れがわからないとシェイクスピア作品はなかなか厳しいということがよくわかりました。

ですがこれは歌舞伎もそうですよね。私も初めて観に行った時は何が何だかさっぱりわからないまま帰って来てしまった記憶があります。ですがしっかり勉強してその流れを知っていたならばきっとまったく別の世界が見えていたのではないかと今は思います。

というわけで私は『ヘンリー六世』や『リチャード三世』の舞台となる薔薇戦争について知りたいと思い、この本を手に取ったのでありました。

そしてこの本を読んで改めて思い知らされました。

当時のイギリス、いやヨーロッパがとんでもなく入り組んだ複雑怪奇な状況だったということを。

15世紀のイギリスでは大小様々な権力者たちが入り乱れてのとてつもない覇権争いが繰り広げられていたのでした。興味深いことに、15世紀、国を巻き込んだ戦乱と言えば日本でも応仁の乱が起こっています。この時も弱肉強食、権謀術数、下克上のとてつもない乱世だったわけです。2つの陣営に分かれての巨大な戦乱がくしくも同時期に起きていたというのは私にとっても驚きでした。

また、本文中に出てきたのですが、この薔薇戦争の歴史をまとめ、『リチャード三世史』という本を書いたのがあのトマス・モアだったというのにも非常に驚かされました。トマス・モアといえば『ユートピア』の著者としても有名ですし、暴君ヘンリー八世に処刑されたことでも知られています。

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しかもこのトマス・モアの『リチャード三世史』がシェイクスピアの史劇に決定的な影響を与えているということも本書で知ることになりました。「まさかここでトマス・モアとシェイクスピアが繋がるとは」とびっくりしました。

正直、この本を一読してすべて理解し、暗記することはかなり厳しいです。とてつもない数の人間が現れ、事態がどんどん揺れ動いていきます。

ですがこの本を読んだおかげで大まかにでも、当時のイギリスが置かれていた状況ということを知ることができました。これはとてつもなく大きいです。

著者の陶山昇平氏の作品は以前、当ブログでも紹介しました。

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この『ヘンリー八世』もそうでしたが、著者の語りは非常にわかりやすく、読みやすいです。

とんでもなく複雑で難しい薔薇戦争というテーマは、普通なら読み進めるのも大変な書物になってしまうでしょう。ですがこの本は違います。たしかに一読して全てを理解するのは難しいとしても、この戦乱の全体像を把握しながらすんなりと最後まで読み進めることができるのです。このこと自体がものすごいことだと思います。

実際この作品を読んでから『ヘンリー六世』や『リチャード三世』を読み直したのですが、前回とは全く違った印象を受けることになりました。話の流れが見えるのです!やはり時代背景や話の流れはある程度分かっていた方が楽しめること間違いなしです。『ジュリアス・シーザー』『アントニーとクレオパトラ』と同じでした。

シェイクスピアに興味のある方だけではなく、イギリスに興味のある方にもぜひおすすめしたい作品です。複雑で難しい薔薇戦争について知るならこの本はピカイチだと思います。

ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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