佐藤彰一『宣教のヨーロッパ』あらすじと感想~イエズス会創立の流れやザビエルについて知るのにおすすめ!ベルニーニとのつながりも
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佐藤彰一『宣教のヨーロッパ』概要と感想~イエズス会の始まりとその創立者イグナティウス・デ・ロヨラについて知るのにおすすめ!ベルニーニとのつながりも
今回ご紹介するのは2018年に中央公論新社より発行された佐藤彰一著『宣教のヨーロッパ』です。
早速この本について見ていきましょう。
世界各地に充満してゆくキリスト教精神の内実。ルターに端を発する十六世紀ヨーロッパの宗教的動揺は、イエズス会というまったく新しい組織を生んだ。霊操と教育を重視し、異教徒への宣教を実践するイエズス会は、ポルトガル・スペインの植民地開拓と軌を一にして、新大陸やアジアへと進出した。かれらの思想や布教方法はどのようなものだったか。いかなる経済的基盤に支えられていたのか。現地社会に与えた影響や「キリスト教の世界化」のプロセスを詳細に検証する。イグナティウス・デ・ロヨラ、モンテコルヴィーノ、ザビエル…大海原を越え、異境へ赴いた修道士たちの思想と足跡。
Amazon商品紹介ページより
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イエズス会といえばまず思い浮かぶのはザビエルではないでしょうか。私もそのイメージが強いです。
この本でももちろんザビエルについて語られるのですが、今回私がこの本を手に取ったのはそのイエズス会の創始者イグナティウス・デ・ロヨラに興味があったからでした。
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私がなぜこの人物に興味を持ったのかといいますと、ローマバロックの天才、ベルニーニがきっかけでした。
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ベルニーニと言えばサンピエトロ大聖堂の内装やサンピエトロ広場の設計、ローマ市内の様々な噴水を手掛けた人物として有名で、ミケランジェロと並ぶ天才として知られています。当ブログでもこれまで彼について紹介してきました。
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そんな中でも前回の記事で紹介した石鍋真澄著『ベルニーニ』でとても気になる文章があったのです。それがこちらです。
彼は一面で非常に世俗的な人間だったが、その生活は質素で、生涯熱心なカトリック教徒だった。朝は必ずミサに出席し、夕方にはイエズス会の総本山であるジェズまで歩いてゆくという習慣が四〇年間も続いた。またイエズス会の総長オリーヴァ師とは親密な交わりを持ち、彼自身イエズス会の指導でイグナティウス・デ・ロヨラの『霊操』を実践したともいわれる。
またパリに赴いた時にも、この『霊操』とトマス・ア・ケンピスの『キリストにならいて』を携えてゆき、パリの教会でもしばしば祈りを捧げた。またある時シャントルーがべルニーニを訪ねると、ア・ケンピスを読んでいた彼は、ローマでは毎晩息子や家族とともにこれを一章ずつ読むのだと説明し、それからサレスのフランチェスコの『献身的生活への導き』について、これは教皇が最も評価するすばらしい書物だと語っている(この本は一六〇九年に出版された俗人のための宗教書である。アレクサンデル七世は一六六五年四月一九日にこの本の著者を聖人の列に加えた)。
今日イエズス会の聖典であるイグナティウス・デ・ロヨラの『霊操』を一読してみても、我々には決して面白い書物とは思えない。けれどもべルニーニとバロック美術を理解する上で、それは貴重な示唆を与えてくれる。この書物において最も印象的なことは、「想像の眼」や「想像の耳」や「想像の手」を用いて「現場の設定、すなわち、場所を眼の前に現に見るように想像すること」を繰り返し鍛えようとしていることである。想像の五官を働かせて霊的世界に沈潜し、より深い宗教的境地に達しようとするこの書物の教えは、確かにべルニーニの作品に反映しているように思われる。
吉川弘文館、石鍋真澄『ベルニーニ』P135-136
※一部改行しました
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ベルニーニの圧倒的な表現力はイグナティウス・デ・ロヨラの『霊操』に大きな影響を受けているというのは驚きでした。
『この書物において最も印象的なことは、「想像の眼」や「想像の耳」や「想像の手」を用いて「現場の設定、すなわち、場所を眼の前に現に見るように想像すること」を繰り返し鍛えようとしていることである。想像の五官を働かせて霊的世界に沈潜し、より深い宗教的境地に達しようとするこの書物の教えは、確かにべルニーニの作品に反映しているように思われる。』
という言葉を聴くと、「おぉ、なるほど!そういうことか」と納得してしまいますよね。
イエズス会の創始者イグナティウス・デ・ロヨラの瞑想法がベルニーニの独創的な作品に大きな影響を与えていた。
これは宗教を学んでいる私にとっても非常に興味深いものでした。
で、あるならばそのイグナティウス・デ・ロヨラやイエズス会そのものについてもっと知ってみたい。
そんな思いを持ったからこそ私はこの佐藤彰一著『宣教のヨーロッパ』を手に取ったのでした。
前置きが長くなってしまいましたが、この作品はそのイグナティウス・デ・ロヨラの生涯や思想を知る上で非常にありがたい作品でした。
この本では彼がどこで生まれどんな過程を経てイエズス会の創始者となったのか、そしてその時代背景はどのようなものだったのかということを学ぶことができます。ザビエルとの関係性を知れたのも嬉しかったです。
その中でも特に印象に残ったのはイグナティウス・デ・ロヨラとモンセラット修道院との関係でした。
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モンセラット修道院はバルセロナ近くにある修道院で、ここも瞑想で有名な聖地でした。サグラダファミリアで有名なガウディもここでインスピレーションを受けたと言われています。私も2019年にここを訪れ、その圧倒的な景観は今でも強烈な印象を残しています。
イグナティウス・デ・ロヨラは1522年にここを訪れ、瞑想の修行をしています。当時からここが瞑想の聖地として知られていたことがわかるエピソードでした。
『宣教のヨーロッパ』はこうしたイグナティウス・デ・ロヨラのエピソードだけでなく、大航海時代における教会の動きも知れる作品です。私はイグナティウス・デ・ロヨラとイエズス会に興味がありましたので、そのことを概観できるこの本は非常にありがたいものがありました。
イエズス会やイグナティウス・デ・ロヨラ、ザビエルに興味のある方にぜひおすすめしたい作品です。
以上、「佐藤彰一『宣教のヨーロッパ』~イエズス会創立の流れやザビエルについて知るのにおすすめ!ベルニーニとのつながりも」でした。
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