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M・J・ドハティ『図説アーサー王と円卓の騎士 その歴史と伝説』概要と感想~アーサー王物語の概要と歴史を学ぶのにおすすめの解説書!
今回ご紹介するのは2017年に原書房より発行されたマーティン・J・ドハティ著、伊藤はるみ訳の『図説アーサー王と円卓の騎士 その歴史と伝説』です。
早速この本について見ていきましょう。
物語の背景となった史実をさぐり、中世以降、人物やストーリーやモチーフが歴史、叙事詩、散文の中でいかに発展してきたかを検証。今も多くの人の創造力をかきたてる理由にせまる。180点以上の図版とともに、文学と伝説と歴史が一体となったアーサー王伝説を知る決定版!
アーサー王や騎士ランスロット、魔法使いマーリン、王妃グイネヴィア、騎士ガラハッドらをはじめとする登場人物や、聖杯探求の旅にまつわる物語の、どこまでが史実でどこまでがフィクションなのか。まず12世紀からスタートして、物語の背景となった史実をたどり、中世以降、人物やストーリーやモチーフが歴史、叙事詩、散文のなかでいかに発展してきたかをみていく。また、19、20世紀にアーサー王伝説に対する興味がふたたびもりあがり、ゲームやテレビ番組、映画などをとおして、この伝説が今も多くの人の想像力をかきたてる理由とは。
Amazon商品紹介ページより
九偉人の一人としてのアーサー王のタペストリー(1385年頃)Wikipediaより
前回の記事「F・ギース『中世ヨーロッパの騎士』中世騎士の成り立ちと歴史を知るのにおすすめの解説書」では中世の騎士について見ていきましたが、中世の騎士物語といえば「アーサー王物語」は外すことができません。
「アーサー王物語」といえばその内容は知らずとも一度は聞いたことがある名前ですよね。
そして実はこの物語の中であの有名な「円卓の騎士」や「聖杯伝説」、「聖剣エクスカリバー」が語られるのです。
私は子供の頃『聖剣伝説』というゲームにはまった時期がありました。
現在リメイク版も発売されているようで、この映像を観てるとたまらなく懐かしくなりました。
この作品で出てくる聖剣のモチーフはまさにアーサー王のエクスカリバーを連想してしまいます。
アーサー王にエクスカリバーを授ける湖の乙女。アルフレッド・カップス(Alfred Kappes, 1880年)Wikipediaより
エクスカリバーとアーサー(1917年の図面)Wikipediaより
またこのゲームだけでなく、エクスカリバーという剣は様々な所で出てくると思います。
「聖杯伝説」や「円卓の騎士」も現代に至るまで多くの作品のインスピレーションをかき立て続けモチーフを提供し続けています。
円卓と聖杯(15世紀のフランスの写本)Wikipediaより
この本ではそんな「アーサー王物語」が出来上がっていった歴史や物語の解説を学ぶことができます。
上で紹介したエクスカリバーについての解説もとても面白かったです。
なんと、エクスカリバーは元々は岩から抜いた剣ではなく、泉の貴婦人から授けられたとのこと。ではなぜ上の写真にあるように岩から抜いた剣がエクスカリバーというようなイメージになってしまったのか、その辺りの事情もわかりやすくこの本では語ってくれます。
図版も多数ですので視覚的にも優しい作りとなっていますので読みやすさも抜群です。
アーサー王入門に最適の一冊だと思います。これは非常にありがたい作品でした。
ぜひおすすめしたいガイドブックです。
以上、「M・J・ドハティ『図説アーサー王と円卓の騎士』アーサー王物語の概要と歴史を学ぶのにおすすめの解説書!」でした。
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図説アーサー王と円卓の騎士:その歴史と伝説
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ぜひおすすめしたい作品です。
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ぜひぜひおすすめしたい作品です。
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