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海野弘他『レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ』あらすじと感想~19世紀西欧を写真で概観するおすすめガイドブック!

目次

海野弘他『レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ』概要と感想~19世紀西欧を写真で概観するおすすめガイドブック!

今回ご紹介するのは2010年に山川出版社より出版された海野弘他著『 レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ―貴重写真に見る激動と創造の時代』です。

早速この本について見ていきましょう。

華やかな万国博覧会に沸き立つイギリス。「ムーラン・ルージュ」に集うロートレックやクリムトら世紀末芸術の騎手達。ハプスブルク家,ロマノフ王朝などの王家が極めた最後の栄華と斜陽…。現代につながる鉄道や電気,航空機が続々と登場し,新しい絵画,文学,ファッションが創造された19世紀から20世紀初頭にかけてのヨーロッパを,貴重な古写真とともに堪能できる一冊。

山川出版社商品紹介ページより

この本は19世紀中頃から20世紀初頭にかけてのヨーロッパの歴史をたくさんの写真で見ていく作品です。

目次
◎グラビア 古今ロマン紀行
◎巻頭記事 時代を輝かせたベル・エポックの都市
◎特集記事 ヨーロッパで発展したフォトグラフィー
       開発合戦か!? 実用的カメラ発明

第一部 ヨーロッパ激動
 <概説>革命、そして戦い
       諸革命が引き起こした第一次世界大戦
   クリミア戦争/イタリア王国誕生/スエズ運河開通/
   普(独)仏戦争/ロシア革命/第一次世界大戦
 絢爛たる産業革命の象徴 万国博覧会

第二部 王族たちの隆盛と落日
 <概説>崩壊と存続の狭間
       幾世紀続いた王朝をも滅ぼした「革命」と「大戦」
   大英帝国/ロシア帝国/ハプスブルク帝国/
   ドイツ帝国(プロイセン王国)/イタリア王国/フランス帝国/
   スウェーデン王国/ノルウェー王国/セルビア王国/
   モンテネグロ王国/ルーマニア王国/ブルガリア王国/
   スペイン王国/ポルトガル王国/ベルギー王国/オランダ王国/
   ギリシャ王国
 王族たちの壮麗なる居城
   ウィンザー城/フォンテーヌブロー宮殿/ストックホルム王宮/
   ノイエ(新)宮殿
 「ベル・エポック(美しき時代)」の流行ファッション
   王侯貴族から一般人までを魅了したモード

第三部 花開いた芸術・文化
 <概説>変化と自由
       解放され、融合してゆく芸術・文化
   ジョン・エヴァレット・ミレイ/ウィリアム・モリス/
   ダーウィン/ルイス・キャロル/ヨハン・シュトラウス二世/
   トルストイ/チャイコフスキー/ニーチェ/
   ジュゼッペ・ヴェルディ/アルフォンス・ミュシャ/
   スメタナ/グスタフ・マーラー/グスタフ・クリムト/
   ジェイムズ・バリー/フロイト/セルマ・ラーゲルレーヴ/
   ラフマニノフ
 都市の物語を歩く
   エミール・ゾラとマルセル・プルーストのパリ/
   オスカー・ワイルドとコナン・ドイルのロンドン/
   アルトゥール・シュニッツラーのウィーン/
   フランツ・カフカのプラハ
 「狂乱の時代」前夜 モンマルトル・モンパルナスの芸術家たち
 華麗なるオペラの世界 人々が愛した娯楽オペラの黄金時代 第四部 変わりゆく人々の暮らし
 <概説>室内から外へ
       整備された生活環境と広がりゆく人々の楽しみ
   1851~1880  都市の大改造がはじまった時代
   1881~1900  整備が完成されはじめた時代
   1901~1918  さらなる近代化へと進みゆく時代
 セレブを虜にした高級娼婦たちの世界 パリ”半”社交界の徒花
 世界を変えた発明 夢を現実とした発明家たち

コラム
 切り裂きジャック事件/第一回近代オリンピック開催/パリ水没
巻末付録
 ヨーロッパ関連略年表1851-1918

山川出版社商品紹介ページより

こちらの目次を見て頂くとわかりますように、この本ではかなり幅広くヨーロッパの歴史や文化を見ていくことになります。

ひとつひとつのテーマについてものすごく深く掘り下げるということはできませんが、横と縦のつながりが非常にわかりやすくまとめられています。

同時代の国家間のつながりはどのようなものだったのか、それぞれの国の特徴はどのようなものだったのかということを知ることができます。写真が大量にありますのでとてもイメージしやすいです。

そしてこの本のタイトルにもありますように、カメラと写真技術そのものの歴史も知ることができます。カメラの技術が発明されたのが1839年で、そこからあっという間にその技術は進歩し1840年代にはかなり性能のよいカメラ技術も出てきます。

私たちが昔の写真をイメージすると、幕末や明治維新期に武士たちがいやいや写真を撮られている様子を思い浮かべてしまいますが、ヨーロッパでは1840年代にすでにカメラの技術が広まっていたというのは驚きでした。1840年代と言われるとかなり昔なイメージですよね。まだまだ現代からは距離を感じてしまう時代です。しかしすでにヨーロッパでは様々な技術がどんどん出てくる時代だったようです。

そうした雰囲気もこの本からは感じられますので非常に興味深く読むことができました。

また、目次にもありますように文学についてもたくさん紙面が取られており、それを写真と共に見ていけるのはとても楽しかったです。特に当ブログでも紹介してきたニーチェ、エミール・ゾラ、カフカの箇所は特に興味深かったです。やはり文章だけで学ぶだけでなく、写真や絵も見ていくことでより作家本人のことや作品の背景も見えてきますよね。しかも、この本ではヨーロッパ全体を大きく見ていきますので、それぞれの国や歴史上の事件と絡めて見ていけるのでとても刺激的でした。

これは面白い1冊です。ぜひおすすめしたい1冊です。

以上、「海野弘他『レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ』19世紀西欧を写真で概観するおすすめガイドブック!」でした。

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レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ: 貴重写真に見る激動と創造の時代

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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