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阿刀田高『ホメロスを楽しむために』概要と感想~ギリシャ神話『イリアス』、『オデュッセイア』のおすすめ入門書!
今回ご紹介するのは2000年に新潮社より発行された阿刀田高著『ホメロスを楽しむために』です。
早速この本について見ていきましょう。
ギリシャに生れた盲目の吟遊詩人ホメロスの世界が、阿刀田魔術で生き生きと目前に広がります。イリアス、オデュッセウス、ポセイドン、トロイア戦争──著者の名解説を聞きながらのギリシャ周遊パック旅行のような、至れり尽せりの入門書。今までは読みたくても手が出なかった西洋文学古典中の古典のエキスが、苦もなく手に入る大好評シリーズ第6弾。楽しいイラストも増量しました。
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阿刀田氏の著作にはこれまでにも私はお世話になってきました。
特にシェイクスピアをわかりやすく解説したこちらの入門書『シェイクスピアを楽しむために』にはとても助けられました。
シェイクスピアの代表作といえば、『ハムレット』や『マクベス』、『リア王』『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』などが挙げられますが、ここには挙げきれないほどの名作を彼は生み出しています。
ですが、いきなりそれらの名作を読もうと思っても意外と苦戦することになります。
なぜなら日本の歌舞伎と一緒で、その演目の時代背景や人物、あらすじを知っていないとなかなかすぐには物語には入り込めないということが起こってしまいます。
シェイクスピア作品は基本的に舞台で演じられるものですので、読み始めるといきなり物語が幕を開け、登場人物の会話から始まります。
せっかく舞台が始まったのに、そこから舞台背景をわざわざ説明調で演者に解説させるのも演劇として無粋な話。
最初の段階でおおまかなあらすじや舞台背景を知れなければそのまま誰が何を言いたいのやらがまったくわからないまま物語が進んでしまいます。これだとやはり物語の面白さもわからず、読むのも挫折してしまうということになってしまいます。
というわけでシェイクスピア作品を読むときにはあらかじめある程度の知識が必要となってくるのです。
特に『ジュリアス・シーザー』では最初何の解説も読まずに読み始めたのですがなかなか物語に入り込めず、案の定挫折してしまいました。ですがこの本を読んであらすじや舞台背景を知った後に読み返して見るとこれが面白いのなんの!
今では『ジュリアス・シーザー』がお気に入りになったくらいです。
それほど阿刀田氏の本はシェイクスピアを読むにあたって大きな助けになりました。
さて、今作の『ホメロスを楽しむために』も素晴らしい作品となっています。
誰もがその名を知るギリシャ神話の大作『イリアス』と『オデュッセイア』をわかりやすく楽しく解説してくれます。
そしてシェイクスピアの例に漏れず、『イリアス』と『オデュッセイア』もかなり複雑な作品です。まず、とにかく登場人物が多い!『イリアス』、『オデュッセイア』はトロイア戦争を題材にした神話です。そこにはたくさんの神々や英雄たちが現れます。
私たちにも馴染み深いゼウスやポセイドンなどの神様もたくさん出てきます。アキレス腱の元になった英雄アキレウスもこの神話で活躍します。
それら大量の登場人物や物語の背景を阿刀田氏はわかりやすく語ってくれます。そしてこれがものすごく面白いんです。「え!?そうなんだ!!」という発見がどんどん出てきます。
ギリシャ神話は西欧の文化にとてつもない影響を与えてきました。前回の記事で紹介したトルストイの『戦争と平和』はまさしく『イリアス』的な作品であると言われています。あのトルストイもホメロスに絶大な影響を受けていたのです。
他にも多くの文学者、芸術家がギリシャ神話で文化の素養を育んでいます。ギリシャ神話を知ればヨーロッパ文化の見え方も変わってくるのではないでしょうか。実際に私もその見え方が変わってきていることを実感しています。様々な文学や音楽、絵画でギリシャ神話はモチーフにされていますし、何の説明もなくポンとギリシャ神話のエッセンスが振りかけられることも多々あります。それに気付くと作者が何を意図してそれを埋め込んだのかがわかってきます。これは楽しい経験でした。
この本は非常におすすめです。とにかく面白く、わかりやすい!しかも深い所まで連れて行ってくれます。内容はかなり本格的です。巻末の里中満智子氏による解説でもそのことは絶賛されていました。
これを読めば『イリアス』『オデュッセイア』の流れをかなりがっちりつかむことができます。逆に言えばもしこの本を読んでいなければ『ジュリアス・シーザー』の時と同じように挫折していたかもしれません。この本のありがたさが身に沁みます。
ぜひぜひおすすめしたい作品です。
以上、「阿刀田高『ホメロスを楽しむために』~ギリシャ神話『イリアス』、『オデュッセイア』のおすすめ入門書!」でした。
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