『VS.フェルメール 美の対決 フェルメールと西洋美術の巨匠たち』あらすじと感想~比べて感じる名画の魅力!
『VS.フェルメール 美の対決 フェルメールと西洋美術の巨匠たち』概要と感想~比べて感じる名画の魅力!
今回ご紹介するのは2018年に八坂書房より発行された小林賴子、今井澄子、望月典子、青野純子著『VS.フェルメール 美の対決 フェルメールと西洋美術の巨匠たち』です。
早速この本について見ていきましょう。
出版社からのコメント
フェルメール研究の第一人者によるひと味違ったフェルメール本です。
見開きで1対決を収録。図版が大きく画集としても楽しめます!Amazon商品紹介ページより
内容(「BOOK」データベースより)
描くテーマの理解から、モティーフの扱い方、画法、フェルメールに特徴的な表現まで、多岐にわたるポイントにフォーカスし、国や時代を越えた作品との対比によって、フェルメール作品を多層的に味わい尽くす!フェルメールを通して新たな絵画鑑賞の愉しみを発見し、西洋美術に対する一歩進んだ関心へとつなげるに格好の書。17世紀オランダ絵画総論、フェルメールの生涯&全作品解説、対戦相手の画家紹介、さらに理解を深めるために気鋭の研究者による論考、文献案内などを付す。
この作品はタイトル通り、フェルメールと各国の名画を並べて鑑賞し、それぞれの魅力や特徴を見ていこうという作品になります。
この本の「はじめに」で著者のひとり、小林賴子氏は次のように述べています。
ある画家の特徴をより鮮明に捉えたいと望むとき、他作家の作品との比較はなかなかに意味ある結果をもたらす。たとえば同じテーマの作品を比較すると、構図が異なる、場や時の設定・強調点・省略個所が違う、テーマに関係のないモティーフが描かれている、といったことに容易に気付く。その相違は何に由来するのか。考えているうちに、画家の気質から、社会の要請、時代の芸術観など、種々の問題が見えてくる。演劇を考えれば分かりやすい。同じシェークスピアの『ハムレット』でも、演出家が異なれば全く別の様相を呈する。どうしてそうなるのか。様々な角度から問い続けると、演出家及び作品の深い理解に繋がる。
本書は、その比較という実り豊かな方法を「対決」と名付け、フェルメール作品を多層的に味わい尽くそうという試みである。対決相手には、同時代のオランダの同じテーマの作品ばかりでなく、テーマ・国・時代が異なる作品も選んだ。対決の焦点も、テーマの理解から、モティーフ(カーテン・手紙・ガウン・真珠など)、画法(透視法・画中画・色遣いなど)、特徴的表現(沈思・瞬間・中断など)に至るまで、多岐にわたるよう配慮した。ちなみに、二〇一七~一八年、ルーヴル美術館他で、フェルメール作品を同時代の同じテーマのオランダ風俗画と比較検討する興味深い展覧会が開催されたので、今回は、できる限り同様の比較は避けた。
なお、芸術の対決には、実社会でのそれと異なり、勝ち負けのないことが多い。だから、本書でも、必ずしも白黒はつけていない。また、十七世紀オランダ絵画総論、フェルメールの簡単な生涯紹介・全作品解説、さらに補足の論稿を掲載し、対決の真ん中に立つ画家、フェルメールの理解に資するようにした。なお、全編を通じての監修には小林頼子があたった。
本書が、フェルメール作品、そして彼の仕事を通して、西洋美術の理解への一助となれば幸いである。
八坂書房、小林賴子、今井澄子、望月典子、青野純子『VS.フェルメール 美の対決 フェルメールと西洋美術の巨匠たち』P3
「演劇を考えれば分かりやすい。同じシェークスピアの『ハムレット』でも、演出家が異なれば全く別の様相を呈する。どうしてそうなるのか。様々な角度から問い続けると、演出家及び作品の深い理解に繋がる。」
これは「なるほど・・・!」と思わず唸ってしまいました。
たしかにそうですよね。シェイクスピア演劇も演出家によって全く違うものになります。それと絵画も同様で、同じテーマでも画家によってその書き方は全く異なってくる。その違いを見ていくことで画家の特徴がよりはっきりと感じられてくる。
これは非常に重要な観点ですよね。
この人の作品はどこが魅力的なのか、ただ漠然と眺めるだけでは見えてこないものが他作品と比べて観ることで浮き上がってくる。
そうした体験をこの本では味わっていくことになります。
雑誌大の大き目なサイズの本で、名画たちがカラーでどかーんと見開きで並べられているのはとてもありがたいです。
フェルメールだけでなく西欧の名画たちも知ることができる盛りだくさんの作品となっています。
ぱらぱらとめくっていくだけでも楽しい作品です。
解説も読みやすく、細かすぎにならない程度の絶妙なレベルで、絵画知識のない方でも楽しめるものとなっています。
ぜひおすすめしたい作品です。
以上、「『VS.フェルメール 美の対決 フェルメールと西洋美術の巨匠たち』比べて感じる名画の魅力!」でした。
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