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ひのまどか『シベリウス―アイノラ荘の音楽大使』あらすじと感想~フィンランドの名作曲シベリウスのおすすめ伝記!

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ひのまどか『シベリウス―アイノラ荘の音楽大使』あらすじと感想~フィンランドの名作曲シベリウスのおすすめ伝記!

今回ご紹介するのは1994年にリブリオ出版より発行されたひのまどか著『シベリウス―アイノラ荘の音楽大使』です。

この作品は「作曲家の物語シリーズ」のひとつで、このシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどか著『スメタナ』がきっかけでした。

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クラシック音楽には疎かった私ですがこの伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみたい」と思い、こうして 「作曲家の物語シリーズ」 を手に取ることにしたのでありました。

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この「作曲家の物語シリーズ」については他の巻の巻末に以下のように述べられています。

児童書では初めての音楽家による全巻現地取材

読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。


リブリオ出版、ひのまどか『ショパン―わが心のポーランド』

一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。

ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっています。まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。

さて、今作の主人公はフィンランドの名作曲家シベリウスです。

ジャン・シベリウス(1865-1957)Wikipediaより

シベリウスはフィンランドを代表する大作曲家です。

上の映像は彼の代表曲『フィンランディア』です。

シベリウスは1865年から1957年まで生きておられたということでかなりご長寿な作曲家でした。これまで紹介してきた作曲家の多くが若くして亡くなったり、60歳頃に急に体調を崩し亡くなってしまうケースが多かったのでこれだけ長生きできたというのは珍しく感じてしまいました。

そして1865年から1957年までの時代を生きたということは第一次世界大戦と第二次世界大戦を経験したということでもあります。

シベリウスはフィンランドの作曲家であり、上の動画の『フィンランディア』も祖国を思い書かれたものです。

フィンランドは1809年まではスウェーデンの支配下にあり、その後はロシアの支配下となっていました。ロシア革命によってソ連が成立した後も、何度も大規模な攻撃を受け激しい戦闘に巻き込まれることになりました。

この伝記はそんな大国に脅かされ続けたフィンランドの歴史も学ぶことができます。シベリウスはそんな苦難の歴史を辿ったフィンランドと共に生き、フィンランドの音楽を追求した人物でした。

では、著者のひのまどかさんのあとがきを見ていきましょう。

私が芸大の学生だった頃、ピアニストの舘野泉氏がフィンランドから帰国して、学生オーケストラで伴奏でグリーグの《ピアノ協奏曲》をさっそうと弾かれたことがあった。

かっこいい舘野氏。

幻想に包まれた国フィンランド。

わけても、音楽家を特別たいせつにしてくれるという裕福らしいその国に対して、舘野氏の後輩である我々の憧れは一気に高まった。その延長線上には「一生国家に生活の面倒を見てもらえた」極めて幸運な作曲家シべリウスがいた。

もちろんそれらは、無知故の大きな思い違いだった。

シベリウスの、外観からはまったく想像もつかない繊細で憂うつ症的な性格や、生涯の大半を占めた経済苦は、それらがもたらす苦悩をつづった手紙や日記を読むのも辛いほどである。

またフィンランドに関しては、度重なる強国の侵略に屈することなく独立を保ったが、その都度支払ってきた莫大な賠償金によって国家財政が赤字に転じた国であることを知った。そもそもが、日本より少し狭い国土に人口は日本の約二十四分の一の五〇〇万人しかいないのだから、勤労世代が精一杯働いても赤字は解消されないわけだ。現在も、国民が直面している重税、物価高、失業率は深刻である。

それでもフィンランドは、芸術家を手厚く保護するという姿勢を捨てていない。その為に国民が払っている犠牲、つまり税金はたいへんな額に上るのだろうが、すぐれた芸術こそ国を支え繁栄させるのだという信念が国民の間に貫かれているのだ。

フィンランドは小国だが、文化大国なのだ。国際社会においては、経済大国だともてはやされるよりも文化大国だと認められる方が、ずっと評価が高いということを、私は歴史の勉強や取材を通して痛感した。

シベリウスの音楽についていえば、交響詩《フィンランディア》や《トゥオネラの白鳥》のような極めてポピュラーなものと、後期の交響曲のように深い思考を秘めた作品とに分かれる。しかし何人もの音楽家が語っていた通り、シべリウスの音楽には日本人の感性にとても近いものがあるので、作品も自然に私たちの心に浸み通っていくのではないだろうか。日本人にシべリウスの音楽のファンが多いのもその表れだと思う。

リブリオ出版、ひのまどか『シベリウス―アイノラ荘の音楽大使』p284-285

私はこれまで当ブログでも紹介してきましたようにロシアやソ連の歴史をこれまで学んできました。

特にレーニン、スターリン時代において何度もフィンランドが出てきたのを覚えています。ソ連は何としてもフィンランドを手に入れようとするのですが、その度に粘り強い抵抗を見せるフィンランド。簡単には大国に屈しない脅威の粘り強さを持つ国というのが私のイメージでした。

この伝記ではそんなフィンランドをソ連側ではなく、まさしくフィンランド側からの視点で学んでいくことができて非常に興味深いものでした。

ひのまどかさんが上のあとがきで述べているように、この国を支えている精神の力、文化の力を感じました。

日本にははたしてこのような文化を大切にする風潮があるのだろうか。いや、そもそも日本の文化、日本人の心って何なのだろうかと改めて考えさせられました。

この伝記もぜひぜひおすすめしたい作品です。

以上、「ひのまどか『シベリウス―アイノラ荘の音楽大使』フィンランドの名作曲シベリウスのおすすめ伝記!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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