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ゴールドマン『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』あらすじと感想~日本はなぜ悲惨な敗北を繰り返したのか。衝撃の名著!

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日本がなぜ第二次世界大戦で悲惨な敗北を繰り返したのかを分析 スチュアート・D・ゴールドマン、山岡由美訳『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』概要と感想

スチュアート・D・ゴールドマン著、山岡由美訳『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』は2013年みすず書房より発行されました。

まず先に言っておきます。この本はものすごいです。

ノモンハン事件という、私たちも名前だけは知っている歴史上の出来事が想像もつかないほど巨大な影響を世界に与えていたということがこの本で明らかにされています。

日本はなぜ第二次世界大戦で悲惨な敗北を繰り返したのか、なぜ軍部が暴走し無謀な戦闘を繰り返したのかもこの本では分析されています。読むとかなりショックを受けると思います。私もこの本を読んでいて何度も「嘘でしょ・・・」と唖然としてしまいました。それほどショッキングな内容となっています。

では改めてこの本の概要を紹介していきます。

1939年5月―9月。ソ連と日本それぞれの傀儡国家であるモンゴルと満洲国の国境をめぐって起きたノモンハン事件は、10万近くの人員と1000もの戦車・航空機を動員、死傷者は3-4万に及んだ。「事件」と呼ぶにはあまりにも大規模である。

結果はソ連・モンゴル軍の勝利に終わり、勝者側主張の国境線にほぼ沿うかたちで決着した日本陸軍にとって初の本格的近代戦における敗北は、当時つとめて伏せられ、欧米の注視も極東の一隅には及ばない。そのためか、この戦闘は長らく単なる国境衝突事件として受容されてきた。

欧米では知名度の低いこの戦闘を初めて知った時、著者はそれが独ソ不可侵条約締結前夜に勃発したことに衝撃を受けた。その点を追究した博士論文の執筆以来、40年間温めてきた研究の成果である本書は、これが歴史の傍流のー事件などではなく、ヒトラーのポーランド侵攻、モスクワ攻防戦における赤軍の勝利、真珠湾攻撃など、その後の出来事の導火線になったことを説得的に示している。

第二次世界大戦に至る国際情勢は複雑を極める。本書はそれを1853年の黒船来航とクリミア戦争に遡って明快に述べ、知的好奇心を北東アジアに引き寄せられた英語圏読者の高評価を得た。日本でも、欧州戦線と太平洋戦争の密接な連動の結節点として、これまでにないノモンハン像を提供するだろう。日中戦争との関係を補足した解題も、より重層的な考察を促している。

Amazon商品紹介ページより
ノモンハンの広大な平原を進軍する日本陸軍第23師団の兵士 Wikipediaより

1939年のノモンハン事件は日本やソ連だけでなく世界中からもあまり注目されていませんでした。しかしこの戦闘にこそ第二次世界大戦の鍵があると著者は語るのです。

この本では関東軍がいかにして暴走し、この事件が発生したのかも詳細に語ります。日本は現地にいる軍隊と本国の参謀本部の意思疎通が機能していませんでした。これまで多くの研究でこうした軍部の暴走が指摘されていましたが、この本ではそもそもなぜ日本が急速に軍国化していったかもまとめられていました。それがとてもわかりやすかったので少し長くなりますがここに引用します。

日本における恐慌、超国家主義、軍国主義

日本は世界を襲う恐慌を、二年早い一九二七年に経験した。これは信用制度が不健全だったために起こったもので、銀行の取り付けや休業が相次いだ。そのなかには最大クラスに属する半官半民の台湾銀行も含まれている。

信用が収縮すると、多くの中小企業が倒産し、あるいは財閥(日本経済を支配下に置いていた巨大コングロマリット)に吸収合併された。一九二七年はまた、米の生産過剰に見舞われた年でもある。農民は日本の近代化の代償を一身に背負わされて、すでに過重な負担を強いられていたのだが、米の豊作はその後三回続き、市場価格の急落が農家に重くのしかかった。このように、ウォール街での株価大暴落の前に、日本は不景気の苦杯をなめていた。しかもそれは急激に悪化していったのである。

恐慌により、絹産業がたちまちのうちに崩壊した。生糸は日本の農村が生産する二番目に重要な商品で、輸出品としては最上位に位置していた。米は一九三〇年にも豊作となり、一九二七年以後の期間で最大規模だった。低迷していた米の市場価格は四カ月の間にさらに三三パーセント下落、一九三一年が終わるころには、平均農家所得はすでに落ち込んでいた一九二九年の水準のおよそ五〇バーセントにまで減少していた。一九三一年の秋には東北五県で強力な早霜が米の大半に被害を与え、この地域を飢餓が襲った。地方債が急速に累積し、税滞納者が増加、娘たちは身売りされ、農村部は絶望の底に突き落とされたのである。

世界恐慌の第一段階では国際貿易が地球規模で縮小し、次に国家が互いに保護関税を設けて他国を閉め出したため、貿易はほとんど停止状態となった。資源の乏しい日本は生存のために大量の資源を輸入しなければならず、輸出に大きく依存していたから、こうした動きは破壊的な影響をもたらした。これに拍車をかけたのが人口の急増である。当時年間およそ五〇万人が労働市場に新たに流入していた。

みすず書房、スチュアート・D・ゴールドマン著、山岡由美訳『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』P21-22

1927年の段階ですでに日本の経済は危機的な状況に陥っていました。そこに追い打ちをかけたのが1929年の世界恐慌だったのです。

ではこんな危機的な状況で政府はどのような対応をしたのでしょうか。

首相の浜口雄幸はこの時代の他の政治家と同様、経済危機への用意ができていなかった。(中略)

政治が経済危機に対応する能力を欠いていたことは誰の目にも明らかだった。

経済における不手際のうえに、政治の欠陥が重なった。「国会の主な諸政党はみずからの墓穴を掘った」と歴史家のリチャード・ストーリーはいう。

スキャンダルにまみれた二大政党はそれぞれ、憎悪の的となっていた巨大財閥、三菱と三井の後ろ盾を得ていた。選挙の際にも賄賂が横行し、政治家に対する企業側の「付け届け」が上乗せされることもあった。

与党は汚職問題で野党からさまざまな非難を受けたが、野党は野党でやはり同じ非難にさらされていた。国会審議が乱闘騒ぎに発展したこともある。国民はこれに怒りを募らせていった。日本人は礼節を尊び、少なくとも外見上は調和を保つことを重んじていたので、こうしたことは議会の権威と威信をさらに傷つけ、議会政治の概念をも徐々に崩壊させていったのである。

みすず書房、スチュアート・D・ゴールドマン著、山岡由美訳『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』P22-23

この箇所を読んで私はドキッとしました・・・皆さんもきっとそうではありませんか?

これは今の状況とそっくりな気がするのです・・・・

政府は経済危機に対して全く機能せず、その状況を打開する議論もせずに互いの不祥事を言い争うばかり。お互いすでに汚職まみれで責任のなすり付け合いになっていたのです。

日本の民主主義は成長の途上にあり、まだ脆弱だった。不祥事に揺れる政界の無能力と政府による恐慌対策の失敗だけでも、民主主義の試みを挫折させるには充分だったかもしれない。しかしこれに最大級の嵐が追い打ちをかけ、日本は独裁と戦争に突入し、ついには崩壊した。この嵐の発達を促したのが、超国家主義と軍国主義、国際関係の危機である。

大日本帝国陸軍は創建以来の五〇年間、その圧倒的多数を武士階級出身者が占めていた。しかし一九二〇年代になると、士族の優勢と彼らが醸成していた鉄の規律が、後から来た新参の挑戦に直面した。

一九二七年には下級将校の約三〇パーセントを、士族の子弟ではない小農や商人階級の出身者が占めるようになっていた。この層から、庶民の経済的苦境に敏感な将校が何百人も誕生している。

軍人の政治関与は軍人勅諭のなかで禁じられていたにもかかわらず、こうした将校らは超国家主義の政治宣伝や煽動、陰謀、はては反乱行為に身を投じるようになっていった。

政治の閉塞感と経済の停滞、そして社会不安は、中国とソ連で展開していた事態に対する危機感によってさらに深刻となり、一九二〇年代を通じて地下でふつふつと煮えたぎっていた。そして一九三〇年に入ると、この暴力的エネルギーが立て続けに爆発するのである。
※一部改行しました

みすず書房、スチュアート・D・ゴールドマン著、山岡由美訳『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』P23-24

こうして日本は軍国主義へと突き進んでいったのです。

歴史は形を変えて繰り返します。これは過去のことと見過ごしてよい問題ではありません。私は今の状況が恐ろしくてなりません。

話は戻りますが1939年のノモンハン事件はこうして成立した軍国主義日本が引き起こした事件となります。

その戦闘は悲惨を極めます。あまりにも杜撰な作戦、相手を過小評価し、精神論で敵を倒そうとする戦法が完全なる敗北をもたらすことになります。

あまりの負けっぷりに私は読んでいて思わず目を反らしたくなりました。

慢心し相手の調査を怠り、情報のないまま相手を弱者と決めつけ、準備を怠る。そしていざ戦闘が始まれば物量、兵力が全く勝負にならないにも関わらず精神論で迎え撃とうとし玉砕する・・・あまりに悲惨。命令に従った兵士たちはただただ命を落とすしかありません・・・

その中でも私の中で最も印象に残ったのはソ連の戦車に生身のままで突っ込んでいく日本兵の描写でした。

もう一度言います。日本軍は生身で戦車に突撃していったのです。

第二次世界大戦前夜の戦闘でそんな光景があったということに驚きを禁じ得ません。

日本は圧倒的に兵力不足で武器もありません。だから火炎瓶をもって戦車に突撃したのです。まったく勝ち目のない戦いです。

ただ、驚くべきはそれでも日本軍は60台以上の戦車を破壊したそうです。

信じられますか?生身で突撃して戦車を60台以上も破壊したのです。

当時のソ連の戦車は装甲も薄く、エンジン部分が高温で、そこに火炎瓶を当てれれば行動不能にすることができたそうです。

さらに驚くべきは戦車によじ登ってハッチを開け直接乗組員を倒したこともあったそうです。

もう信じられません。精神論ですべてを解決しようとしていく作戦の果てがこうした突撃作戦です。

ですがこうした反撃も虚しく、ソ連の圧倒的な物量と的確な攻撃、物資補給によりあっという間に日本軍は壊滅させられます。はなから勝負は付いていたも同然でした。

日本がなぜ戦争に突入していったのか、そしてなぜ敗北を繰り返したのかということがこの本ではとても明確に分析されています。海外の研究者だからこそ見れる日本像というものが描かれています。

またこの出来事がスターリンとヒトラーにとってどのような意味があったのかということも明らかになります。

第二次世界大戦を局地的に見るのではなく、全世界のつながりとして見ていく視点をこの本では学べます。第二次世界大戦を捉え直す素晴らしい機会となります。

この本は今の日本を見ていく上でも非常に重要な問題提起を与えてくれます。これからの日本のためにもぜひ手に取ってほしい1冊です。非常におすすめな1冊となっています。

以上、「S・D・ゴールドマン『ノモンハン1939 第二次世界大戦の知られざる始点』日本はなぜ悲惨な敗北を繰り返したのか」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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