MENU

911メモリアルミュージアムと夜のニューヨークに思う アメリカ編③

アメリカ
目次

あの日、世界は変わってしまった~911メモリアルミュージアムと夜のニューヨーク 僧侶上田隆弘の世界一周記―アメリカ編③

クルーズを終えると今日の一番の目的地、911メモリアルミュージアムへ。

いつか見てみたいとずっと思っていたグラウンドゼロ。

犠牲者の名前が刻まれた石。そこに花束や国旗が供えられている。

水の流れる音の中、ぼくは黙祷を捧げた。

その目の前には新しい貿易センタービル。

アメリカの象徴はテロの後、以前の姿よりももっと大きくなって生き返った。

不死鳥のごとく蘇るアメリカの象徴、経済の中心・・・

単に建物を建て直したでは済まされないなんらかの意味をぼくは感じてしまう・・・

こちらが911メモリアルミュージアムの入り口。

中には当時の写真や資料が展示されていた。

ビル崩壊前に救助に向かった消防車の残骸や、

ビルの鉄骨など、傷ましいテロの傷跡を目の前にする。

その後は撮影禁止エリアへ。

そこではテロ発生直後のニュース映像や、残されていた音声記録など、当時のことを記録した様々なメディア媒体を見ることができた。

2001年のあの朝。

当時11才だったぼくもあの朝のことは記憶に残っている。

ニュースで目にしたあの映像。

高層ビルに突っ込む飛行機。

そして崩壊していくビル。

あの当時、それが何を意味するのかぼくはまったくわかっていなかった。

何か恐ろしいことが起きているくらいにしか思っていなかった。

では、今は?

正直言って、ぼくはますますわからなくなっている。

このテロによって、世界は変わってしまった。

単に恐ろしいことが起きてしまったでは済まされない何かが起こった。

たしかにここで悲惨な出来事があった。

そしてそれは憎悪の連鎖となって世界中に広がっていくことになってしまった。

僧侶として宗教に携わる身として、宗教が絡んだ争いはどうしても深く考えざるをえない。

イスラエルでも、ボスニアでもそうだった。

答えの出ない、重い問い。

ここニューヨークでも同じように、そんな問いを目の前に突き付けられたように感じた。

その日の夜、ぼくはロックフェラーセンターの展望台トップ・オブ・ザ・ロックにも訪れた。

世界で最も輝く都市。

朝に見た摩天楼とはまるで違った世界が目の前に広がっていた。

やはりニューヨークの摩天楼は夜にこそその輝きを最も感じることができる。

ホテルへの帰り道に歩いたタイムズスクエア付近はネオンの光に満ちている。

強い光の陰には深い闇がある。

ぼくはこのニューヨークの圧倒的な光とその影のことをぼんやりと考えた。

アメリカに来てからぼくはずっと考えっぱなしだ。

この国は何かぼくに訴えかけてくるものがある。

いや、違う・・・逆だ。

ぼくが何かを言わずにはいられないのだ。

ぼくはそれだけ日本人なのだ。アメリカ的な人間ではないのだ。

まぁ、このことについては機会があればいずれ話すこともあるかもしれないが今回は置いておこう。

次の記事ではハーレムでのゴスペルと黒人教会の牧師さんの説教での衝撃的な体験をお話ししていきたい。

続く

次の記事はこちら

あわせて読みたい
ハーレムでの街歩き~ハーレムにおける白人と黒人の歴史を学ぶ アメリカ編④ 2019年6月2日、私はベルトラさんの「ゴスペル鑑賞ツアー ゴスペルに精通したハーレム在住日本人コーディネイターがご案内!選べる日曜礼拝とARC薬物中毒厚生施設<水曜日または日曜日> 」という現地ツアーを利用してハーレムの黒人教会で毎週行われている日曜礼拝を見学することにしました。 この記事ではまず、ハーレムでの街歩きについてお話ししていきます。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
エンパイアステートビルとニューヨークの摩天楼~トトロの魔法と人間の魔法 アメリカ編② 今回の記事では摩天楼についてお話ししていきます。 唐突にトトロが出てきて戸惑われた方もおられたかもしれません。 ですが、私はあの摩天楼を見てトトロのあのシーンを連想せずにはいられませんでした。 そしてひとりでにあっという間に成長していく植物のイメージがまさにここニューヨークにぴったりなような気がしたのです。

関連記事

あわせて読みたい
アメリカ旅行記おすすめ記事一覧~資本主義の中心、そして実は宗教的な国アメリカ!【僧侶上田隆弘の世... 僧侶が見たアメリカという視点はきっと皆さんにとっても新鮮なものであるのではないかと思います。観光やビジネスで知るアメリカ像とはかなり違ったアメリカが以下の記事では語られます。必ずや面白い発見や驚きがあることでしょう。
あわせて読みたい
僧侶が選ぶ世界一周記おすすめ記事30選!世界の宗教や文化を見て僧侶の私は何を感じたのか この記事では2019年に私が旅した世界一周旅行のおすすめ記事をご紹介しています。 普段なかなか知ることのない刺激的な世界を覗いてみませんか?
【日々是読書】僧侶上田隆弘の仏教...
404: ページが見つかりませんでした | 【日々是読書】僧侶上田隆弘の仏教ブログ 本を愛する浄土真宗僧侶です。仏教コラム、インド・スリランカ仏跡紀行、おすすめ本紹介、【親鸞とドストエフスキー・世界文学】など様々な記事を更新しています。
あわせて読みたい
高木徹『大仏破壊』あらすじと感想~タリバンとはそもそも何なのか。バーミアンの大仏破壊の裏側 2021年現在、アフガニスタンは米軍撤退によって非常に緊迫した状況にあります。そして、今その政権を担っているのがまさしくタリバンです。 ですがそのタリバンというのはそもそもどのような存在なのでしょうか。この本ではそんなタリバンについてバーミアンの大仏破壊を軸に詳しく語られていきます。
あわせて読みたい
クリスチャン・カレル『すべては1979年から始まった』あらすじと感想~冷戦終盤の驚くべき物語がここに ソ連崩壊に大きな影響を与えた人物達。その4人こそイギリスの首相サッチャー、中国の政治家鄧小平、イラン・イスラーム革命の指導者ホメイニー、そしてローマ教皇ヨハネ・パウロ二世という四人の人物でした。この本ではそんな4人がどのように冷戦に影響を与えたのかを見ていきます
あわせて読みたい
V・セベスチェン『東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊』あらすじと感想~共産圏崩壊の歴史を学ぶのにおすすめ... セベスチェンの作品はとにかく読みやすく、面白いながらも深い洞察へと私たちを導いてくれる名著揃いです。 この本は、世界規模の大きな視点で冷戦末期の社会を見ていきます。そして時系列に沿ってその崩壊の過程を分析し、それぞれの国の相互関係も浮かび上がらせる名著です。これは素晴らしい作品です。何度も何度も読み返したくなる逸品です
アメリカ

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次