目次
資本主義教の神殿ニューヨーク・フェデラルホールとウォールストリート 僧侶上田隆弘の世界一周記―アメリカ編①
20日間かけて周遊したスペインともいよいよお別れ。
次に向かうはアメリカ、ニューヨーク。
コルドバからセビリア空港まで鉄道とバスで移動し、そこから飛行機でポルトガルのリスボンへ。
上空から見たリスボン。
赤い屋根と白い壁、そして海の青の見事な調和。
この街にもじっくり滞在できればよかったのだが残念ながら乗り継ぎのみ。
いよいよヨーロッパを離れ大西洋を横断。
8時間のフライトで現地時間20時、ニューヨークに到着。
空港から鉄道でマンハッタン島の中心、ペンシルベニア駅へ。
移動の疲労でそこから写真を撮る余裕もなくマンハッタンのミッドタウンのホテルに直行。
泥のように眠る。
翌日、朝から行動開始。
まず向かうのはウォール街。
ぼくがニューヨークで1番見たかったもの、フェデラルホールもそこにある。
地下鉄を使ってウォール街へ。
高層ビルが立ち並ぶ。
きれいな高層ビルが立ち並ぶ日本の丸の内と違って、年季の入ったビルが多いのが目についた。
ニューヨークに来ていることを実感。
ニューヨーク証券取引所。
世界の金融の中心。
まるで神殿のような姿。
金融、経済といえば日本だったら近代的なビルの中にその施設を設けるだろうがここニューヨークでは神殿のような造り。
もしこれに倣うとしたら日本では神社仏閣のような建物の中に証券取引所を作るということになる。
もしそうなってしまったらかなりの違和感を感じはしないだろうか。
そう考えてみるとこの証券取引所がいかに奇妙な建物なのかということが浮き彫りになってくる。
そしてそのすぐ斜め向かいにあるのがぼくの目的地、フェデラルホール。
こちらもまさしく神殿のような建造物。
そしてその中心に立つこの人物こそアメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントンだ。
1789年、まさしくこの場所でジョージ・ワシントンがアメリカ合衆国初代大統領に選出され、就任演説を行った。
いわばアメリカ合衆国建国の象徴であり、アメリカの自由と平等という理想がこの建物に込められているのだ。
ここを訪れる観光客でそのことを考えている人はほとんどいないかもしれない。
しかしアメリカの歴史や思想を知る上で、この神殿のような建物とワシントンの像がここウォールストリートにあるという意味は見逃せないことだと思う。
ワシントンの視線の先にはニューヨーク証券取引所がある。
はたしてこれは偶然なのだろうか。
アメリカの成り立ちと思想がぼくには不思議でたまらない。
世界中を席捲しているアメリカ文化。
自由と平等、そして資本主義。
日本人の思想やライフスタイルはアメリカの影響を強く受けている。
日本人たる自分自身を知るためには、アメリカとは何なのかということを知ることも一つの道筋なのではないかとぼくは思うのだ。
宗教的な面でも、アメリカがなぜ神殿の構造をここに持ち出したのかも非常に興味深い。
世界最大の金融市場たるニューヨーク。
もしこの資本主義の殿堂たるウォールストリートの成り立ちに宗教が関わっていたとしたら?
後の記事ではマックス・ヴェーバーの『プロテンスタティズムの倫理と資本主義の精神』を参考にアメリカの資本主義とアメリカ人の宗教観のつながりを改めて考えていきたい。
続く
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