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岡部紘三『図説 ヒエロニムス・ボス 世紀末の奇想の画家』概要と感想~ダ・ヴィンチと同世代の天才画家を知るのにおすすめのガイドブック!
今回ご紹介するのは2014年に河出書房新社より発行された岡部紘三著『図説 ヒエロニムス・ボス 世紀末の奇想の画家』です。
早速この本について見ていきましょう。
幻想と異形。今なお見るものに衝撃を与え続ける作品を残した、15~16世紀の謎の画家ボスの、真相に迫る恰好の案内書。
伝統からの逸脱。その筆が描いたのは、罪深き人間世界と、地獄の幻想。世紀末ネーデルラント。不安の時代を背景に、愚かな人間と光に満ちた神の世界を描き続けた謎の画家。残された数少ない真筆作品から、奇抜なモティーフに込められた画家の意思を探る。
Amazon商品紹介ページより
私が初めてこの本を読んだのは今から4年以上前の2018年のことでした。オランダの霊長類学者フランス・ドゥワールの著書『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』という本の中でヒエロニムス・ボスの『快楽の園』が紹介されており、それがボスに興味を持つきっかけとなったのでした。この本でどのようにボスの作品が説かれていたかは以下の記事「ヒエロニムス・ボス『快楽の園』~人類と善悪の起源を考える スペイン編②」でお話ししていますのでぜひそちらをご覧ください。
ヒエロニムス・ボスはオランダで生まれ、その独特で不思議な画風で有名になった画家です。
あのレオナルド・ダ・ヴィンチとほぼ同時代に生き、イタリアルネッサンス全盛の時代の中でも独自の立場を築き上げた画家と言えます。本書ではこのことについて次のように述べられています。
ヒエロニムス・ボスは、レオナルド・ダ・ヴィンチ(一四五ニ~一五一九)とほぼ生涯が重なる。しかし、アルプスを隔てた両者の絵画世界はまったく異なる。レオナルドが盛期ルネサンスを代表する古典主義の画家のひとりとすれば、ボスは中世から近世への過渡期の時代相を写した奇想の画家といってよかろう。
イタリアに比べて、ネーデルラントではルネサンスの開花が遅れたこともあって、ボスはゴシックの精神を保持した画家であった。写実の描写を心がけながら、その絵画の根底にはゴシックの象徴主義と神秘主義がある。
とはいえ、ボスはネーデルラント絵画に新しい道を拓いた革新者であった。人間世界の罪と愚行をこっけいに、風刺をこめて描いたモラリストだった。悪魔が出没する地獄の情景を、たぐい稀な想像力で描いた幻想の画家でもあった。また世紀末の不安の時代に生きたぺシミストでもある。
北ブラバント(現オランダの南部)の地方画家だったボスは、一六世紀初頭にはフィリップ美公の委嘱を受けるまでの画家となり、さらにネーデルラントのみならず、スぺイン、イタリアでも高く評価された。一六世紀のイタリアの著述家、ロドヴィコ・グイチャルディーニは、『全ネーデルラント地誌』(一五六七年)で、彼を称して「こっけいな主題や幻想的な主題ですばらしい創意をみせた画家」と記している。まさしくこれらの分野でボスは独創性を発揮した。
河出書房新社、岡部紘三『図説 ヒエロニムス・ボス 世紀末の奇想の画家』P5-6
ボスの『快楽の園』はあまりに摩訶不思議な作品です。
その奇怪な絵に込められた意味は現在でも議論の絶えない問題となっています。
摩訶不思議な世界観がなぜ生まれたのか、そして一つ一つの登場人物が何を意味しているのかを想像しながらこの絵を鑑賞するのはとても楽しい経験になります。
私が2019年にスペインを訪れようと思ったのはボスの『快楽の園』があったからこそです。
私はこの絵を2日連続で観に行き、1時間以上そこで眺め続けました。
あまりに情報量が多く、頭がパンクしそうになりますが、この絵は不思議な魅力を持った作品です。
プラド美術館には他にもボスの作品がいくつも展示されています。
他の作品も「快楽の園」に劣らず独特な作品です。ぜひ、スペインに行かれた際はじっくりと鑑賞してみてはいかがでしょうか。
この本はそんなボスの絵の解説や時代背景も知れるおすすめのガイドブックです。写真や絵のズームも多く、視覚的に学べるのもありがたいです。
ボスの不思議な世界観にはただただ驚くしかありません。ダ・ヴィンチともまた違った絵画世界を味わうのも非常に楽しいものがあります。ぜひぜひおすすめしたい入門書です。
以上、「岡部紘三『図説 ヒエロニムス・ボス』ダ・ヴィンチと同世代の天才画家を知るのにおすすめのガイドブック!」でした。
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図説 ヒエロニムス・ボス: 世紀末の奇想の画家 (ふくろうの本)
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