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高橋健二編訳『ゲーテ格言集』あらすじと感想~ドイツ大詩人の珠玉の言葉を堪能!「さすがゲーテ大先生!」と唸りたくなる一冊

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高橋健二編訳『ゲーテ格言集』概要と感想~ドイツ大詩人の珠玉の言葉を堪能!「さすがゲーテ大先生!」と唸りたくなる一冊

今回ご紹介するのは1952年に新潮社より発行された高橋健二編訳『ゲーテ格言集』です。私が読んだのは2016年122刷改版です。

早速この本について見ていきましょう。

『若きウェルテルの悩み』『ファウスト』等で知られる巨人が発した、輝く言葉の数々。
身近な15の項目に分類し、出典を明示。主要著作リストも付した。
昭和27年刊行の新潮文庫版の本書は125刷、103万部超えのロングセラー。


偉大なる詩人であり作家であると同時に、最も人間的な魅力にあふれたゲーテは、無限に豊富な知と愛の言葉の宝庫を残している。彼の言葉がしばしば引用されるのも、そこには永久に新鮮な感性と深い知性と豊かな愛情とが、体験に裏づけられて溶けこんでいるからである。本書は、彼の全著作の中からと、警句、格言として独立に書かれたものの中から読者に親しみやすいものを収録した。

Amazon商品紹介ページより
ゲーテ(1749-1832)Wikipediaより

上の本紹介にもありましたように、なんとこの本は125刷を超える大ベストセラーとなっています。これは確実に『ファウスト』よりも多くの人に読まれているでしょう。

これだけ多くの人の手元に届いたということはやはりゲーテの言葉に魅力があるからこそでしょう。しかも長編作品と違ってこちらは格言集。読んでいくにも非常に手軽です。ひとつひとつの短い文章を自分のペースでじっくり味わうことができます。

上の本紹介とも少し重なりますが巻末の訳者あとがきを見ていきましょう。本書について次のように述べられています。

偉大な作家であると同時に、最も人間的な人間であったゲーテは、無限に豊富な知と愛のことばの宝庫を残している。おそらくゲーテのことばほどしばしば引用されているものは少ないであろう。彼のことばには、新鮮な感性と深い知性と豊かな愛情とが、体験に裏づけられて、溶けこんでいるからである。

そしてゲーテ自身、短いことばに深い含蓄を織りこむことを好んだ。従って、「ファウスト」を初めとして、作品の中に、意義深いことばが数多く見出されるのであるが、特に独立した形で、格言や警句を非常にたくさん書いている。

作品表を見てもわかるように、格言詩とか警句詩とかいう詩群がたくさんあって、そこに含まれている詩句はおびただしい数にのぼっている。さらに散文の格言を集大成した「格言と反省」は、この種のものとして質量ともに、世界文学に比類のないものである。優美な詩人は同時に精力的な格言警句の作者でもあった。

本書では、ゲーテの全著作の中からと、最初から格言や警句として独立に書かれたものの中からと、ほぼ半々に、ことばが選ばれている。ゲーテのことばを集めた本は、ドイツでも数十種ある、訳者が座右にしているものでも数種ある。しかし、ドイツ人とわれわれとでは感じ方が違うので、本書では全くそういうものを離れ、直接ゲーテの著作から、われわれに興味ぶかく感じられるものを選んでみた。そして、ゲーテが特に関心を持っていたばかりでなく、われわれも関心を持つ項目に分けて排列した。項目の分け方は便宜的なものであって、厳密なものではないが、読者には親しみやすいかと思う。出所を明示しておいたから、年代と著作表を見れば、背後にゲーテを思い浮かべることができるであろう。

ゲーテは往々しばしば、矛盾したことを言っている。正反対のことが言えることを示している。それもまた意義ふかいことである。
※一部改行しました

新潮社、高橋健二編訳『ゲーテ格言集』2016年122刷改版P230-231

というわけで、この作品は編訳者の高橋健二氏が膨大なゲーテの言葉の中から「これは」という珠玉の言葉を厳選した一冊になります。

その最初の言葉は、

太陽が照れば塵も輝く。(「格言と反省」から)

新潮社、高橋健二編訳『ゲーテ格言集』2016年122刷改版P7

という、いきなりぐっと来る含蓄ある言葉となります。

他にも、

人間のあやまちこそ人間をほんとうに愛すべきものする。(「格言と反省」から)

新潮社、高橋健二編訳『ゲーテ格言集』2016年122刷改版P7

鉄の忍耐、石の辛抱。(一七八〇年の五月末の日記から)

新潮社、高橋健二編訳『ゲーテ格言集』2016年122刷改版P7

と、最初の一ページ目から素晴らしい言葉の連続です。

ここから先、以下の項目でゲーテの言葉が語られていきます。


序に代えて
愛と女性について
人間と人間性について
科学、自然、二元性について
神、信仰、運命について
行動について
芸術と文学について
幸福について
自我と自由と節度について
個人と社会について
人生について
経験の教え
人生の憂うつ
身辺雑感
生活の知恵

そのどれもがゲーテらしさ溢れる素晴らしい言葉となっています。

この記事でも私のお気に入りの言葉を紹介したいのですが長くなってしまうので遠慮します。ですが、この本を読めば人それぞれお気に入りの言葉にきっと出会うことができます。それほど多彩で、奥深い言葉がこの本には溢れています。

ぜひ、偉大なる万能の詩人ゲーテの言葉に触れてみてはいかがでしょうか。その言葉は、必ずや私たちの力になってくれることでしょう。

以上、「高橋健二編訳『ゲーテ格言集』~ドイツ大詩人の珠玉の言葉を堪能!「さすがゲーテ大先生!」と唸りたくなる一冊」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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