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エッカーマン『ゲーテとの対話』あらすじと感想~ゲーテの人となりや思想を知るための必読書!

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エッカーマン『ゲーテとの対話』概要と感想~ゲーテの人となりや思想を知るための必読書!

ゲーテ(1749-1832)Wikipediaより

今回ご紹介する『ゲーテとの対話』はエッカーマンにより1836年に第1,2巻、1848年に第3巻が発表されました。

私が読んだのは岩波書店、山下肇訳『ゲーテとの対話』2013年第37刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

著者とゲーテの、ほぼ10年におよぶ親しい語らいは、文学、芸術、個人生活、諸外国の文化など多岐に及んだ。それらをまとめた本書は、読者もまたゲーテと語り合っているかのような愉しさに溢れる。

Amazon商品紹介ページより

もしエッカーマンがゲーテとの対話を後世に伝えてくれなかったならば、ゲーテの晩年はもとより、私たちがゲーテについて知っていることの半ば近くは世に知られぬままに終わったのではあるまいか。

ゲーテ自身の書いたものはむろんたくさん残っているが、それが一般に読まれることははなはだ少ない。ゲーテの知恵は、そのきわめて多くがエッカーマンの記述を通じて私たちに親しいものとなっているのであって、彼の『対話』は、ゲーテの著作以上にゲーテについて私たちのために語っているといってよい。

エッカーマンは、ゲーテとのそういう日毎の対話を通じてゲーテを私たちに知らせてくれただけでなく、晩年のゲーテの仕事に対して他の何人も及ばない愛と尊敬と理解をよせ、それによってゲーテの創作活動のかけがえのない支えともなった。私たちは彼の『対話』を通じて、二人のそういう、世にもめずらしい師弟のまじわりにふれることができる。
※一部改行しました

岩波書店、小栗浩『人間ゲーテ』P175-176

エッカーマンは1823年にゲーテと出会い、彼の秘書を務めた人物です。その頃のゲーテはすでに73歳。晩年の時代でした。エッカーマンはその後ゲーテが亡くなる1832年までずっと師であるゲーテに付き従い、彼との対話を記録し続けていたのでありました。その記録をまとめたものがこの『ゲーテとの対話』になります。

引き続き『人間ゲーテ』よりこの作品の解説を見ていきます。

『ゲーテとの対話』には、冒頭に「まえがき」と「序章」が置かれている。読者は、何よりもゲーテの言葉を読みたいと思うから、その伝達者にすぎないエッカーマンの言葉などにはほとんど注意を払わずに、読みとばすか省くかしてしまう。じじつまた、ゲーテの言葉をできるだけ真実に伝えるために、自分自身はつとめて透明な、ただの媒体になることをエッカーマンは願ったのであり、それが見事に成功したところに、この無類の実直な人物の無類の独創性があるといってよい。

ニーチェが、エッカーマンの『対話』をドイツ散文の至宝とたたえたのは奇矯の言ではない(ニーチェ、『人間的、あまりに人間的』Ⅱ・一〇九)。自分の文体の対極と思われるほどの、質実この上ないエッカーマンの散文に、ゲーテを世に伝えるための唯一最良の形式を感じ取ったゆえにこの言葉が語られたのにちがいない。

「序章」はエッカーマンが自分の生い立ちを語ったものであるが、ゲーテの話のきき手としての自分がどういう人間であるか、したかってゲーテはどういう角度からとらえられているかを説明している。その意味で、この文章は『対話』への入門ということができるが、しかし私たちはまた、一九世紀の前半を生きた一人の人間の興味ある生き方にふれることができる。
※一部改行しました

岩波書店、小栗浩『人間ゲーテ』P176

この『対話』の特徴としてエッカーマンがひたすら聴き手に回り、自然にゲーテの言葉を引きだしその魅力を余すことなく伝えているという点があります。それは、エッカーマンの師に対するこの上ない尊敬や2人の師弟関係、そして何より彼の人柄がかかわっているのでありました。

上の解説にも出てきましたようにこの作品は世界中の作家、哲学者に大きな影響を与えました。ニーチェはその筆頭としてよく挙げられますが、日本でも水木しげるがこの作品をこよなく愛していたことが知られています。水木しげるは戦地にまでこの本を持っていき、大切にしていたそうです。

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私が『ゲーテとの対話』を読んでまず驚いたのは、まったく古さや難しさを感じないという点でした。師匠であるゲーテと率直に話し合っている様子がすっと浮かんできます。ものすごく読みやすいです。ゲーテの人となりが自然と見えてくるようでした。当時すでに名声の絶頂にあった偉大なるゲーテの素の声を聴くことができます。エッカーマンは稀代の聞き上手だなと読んでいてつくづく感じました。師匠と弟子の信頼関係が感じられてとても心地よく読むことができます。

また、この本では『ファウスト』についてのゲーテ自身の解説や見解も聞くことができます。私は『ファウスト』の難しさにこれまでかなり苦戦していたのですが、『対話』を読んだことでその面白さを感じることができるようになりました。これは私の中で非常に大きな発見でした。

もし『対話』を読んでいなかったらその面白さを感じることができずじまいだったかもしれません。それほど有益な言葉をこの本から聞くことができます。

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この本は間違いなく名著です。ゲーテ作品を読みたいと思った方にはぜひ、彼の作品を読む前にこの『対話』を読んで頂きたいです。ゲーテの人となりが生き生きと描かれています。

非常におすすめです。ぜひ読んで頂きたい作品です。私はこの作品のおかげで『ファウスト』を楽しめるようになり、ゲーテを好きになることができました。この作品はゲーテを読む人にとって必読書だと思います。

以上、「エッカーマン『ゲーテとの対話』ゲーテの人となりや思想を知るための必読書!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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