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J・R=ローゼンハーゲン『アメリカのニーチェ ある偶像をめぐる物語』あらすじと感想~アメリカにおけるニーチェ受容の歴史

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J・R=ローゼンハーゲン『アメリカのニーチェ ある偶像をめぐる物語』概要と感想~アメリカにおけるニーチェ受容の歴史

フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)wikipediaより

今回ご紹介するのは2019年に法政大学出版局より発行されたジェニファー・ラトナー=ローゼンハーゲン著、岸正樹訳『アメリカのニーチェ ある偶像をめぐる物語』です。

早速この本について見ていきましょう。

神の死を宣告し、超人の到来を説いて狂気に倒れたドイツの哲学者は、じつは最もアメリカ的な思想家エマソンの熱心な愛読者だった。ニーチェの反基礎づけ主義の哲学が、ナチズムへの影響という問題を超えて、20世紀米国の文化やキリスト教、リベラリズムやプラグマティズム哲学全般に及ぼした大きなインパクトを跡づけた労作。ニーチェ翻訳・受容の歴史から、アメリカという国の姿が見えてくる。

Amazon商品紹介ページより

この本ではニーチェがアメリカにおいていかに受容されてきたかを見ていきます。前回の記事「ニーチェは読む人によって姿を変える?ニーチェとはどんな存在なのか」でもお話ししましたがニーチェは読む人によってその姿が変わってきます。つまりニーチェ解釈にはその人その人の個性が出てきます。ニーチェがどのように受容されたかを知ることで当時の人たちの思想を知ることにもつながっていきます。

著者はこの本について「序」で次のように述べています。

アメリカの読者がニーチェの哲学のどこに惹かれたのか、そしてニーチェの哲学から何を引き出したのかを、本書は考察する。ニーチェの反基礎づけ主義(普遍的真理の否定)が、その徹底したキリスト教道徳批判、啓蒙主義的合理性批判、民主主義批判によって、いかに多くのアメリカ人に自分の宗教的理念への疑い、道徳的確信への疑い、民主性原理への疑いを引き起こしたか。本書はそのダイナミックな歴史的推移を分析する。(中略)

ニーチェのラディカルな思想への心強い関心の裏にはつねに、彼の人生の物語に対する飽くなき好奇心が伴っていた。それゆえ、本研究の中心テーマの一つは、アメリカでのニーチェをめぐるレトリックの移り変わりである。ニーチェを真剣に読むことによって、いつの時代も読者は自分白身をそしてアメリカを捉え直してきた、というのが本書の眼目である。

法政大学出版局、ジェニファー・ラトナー=ローゼンハーゲン、岸正樹訳『アメリカのニーチェ ある偶像をめぐる物語』P35-36

本書が物語るのは、アメリカの「ニーチェ主義者」の歴史ではない。ニーチェの決然とした挑戦を前にして、それに抵抗したり思索をめぐらしたりすることによって、アメリカの読者が自己についてまた同時代のアメリカについて、自分の価値観を形成してゆく歴史である。

二十世紀を通じて、二ーチェに知的「救世主」を見出した者もいれば、ニーチェの思想も人格も拒絶した者もいる。ある者はニーチェを読んで、良き生についての伝統的観念を捨てよという勧告として受け止めた。別の者はニーチェの思想との対決によって、自分の民主主義や神や普遍的真理への信念をいっそう強めることになった。

だが、熱狂的に反応した者も激怒した者も、いずれも歴史学者から見れば、過去の道徳概念を捉え直す試みの出発点として役に立つ。本書は、ニーチェの聖人伝の研究でもなければ、ニーチェ弾劾の論文集でもない。現代アメリカ思想がダイナミックに、限りなく作り直されてゆくなかでの、ニーチェの重要な役割を述べた物語である。
※一部改行しました

法政大学出版局、ジェニファー・ラトナー=ローゼンハーゲン、岸正樹訳『アメリカのニーチェ ある偶像をめぐる物語』P42

ニーチェがいかに多様に理解されていたかがこの本を読めばわかります。

「ニーチェとは~~である」と言うことは自分の思想表明に他ならないことを感じます。それほどニーチェは謎多き存在なのだなと実感しました。

ニーチェは読む者によって姿を変えるということを感じるのにこの本は非常にいい例を提供してくれます。非常に興味深い1冊でした。

以上、「J・R=ローゼンハーゲン『アメリカのニーチェ ある偶像をめぐる物語』アメリカにおけるニーチェ受容の歴史」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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