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洗礼の聖地~イエスとヨハネのヨルダン川 僧侶上田隆弘の世界一周記―イスラエル編⑧
エリコからさらに車で20分ほど東に向かうとそこにはヨルダン川が流れている。
ヨルダン川はイスラエルの北部から最後は死海へと流れ込み、イスラエルとヨルダンの国境線にもなっている。
ヨルダン川は茶色く濁った水が穏やかに流れていた。川の底が細かい土だからなのだろうか。
国境線にもなるほどの川ならどれほどの大きさなのだろうと思っていたが、写真の通り、そこまでの大きさではなかった。
対岸はすでにヨルダン領だ。
川岸ではクリスチャンのグループが洗礼式を執り行っていた。
本来は全身でこの川の中に浸かるのだそうだが、このグループでは神父により頭に水をかけられることによる洗礼を行っていた。
クリスチャンにとってこのヨルダン川で洗礼を受けるのは非常に大きな意味がある。
それもそのはず、この地は洗礼者ヨハネがイエスに洗礼を授けた聖地として知られているからだ。
洗礼者ヨハネとはイエスに先立って、このヨルダン川で神の教えを説いていた人物だ。
『新約聖書』によると、ヨハネは人々にこのように告げていた。
「悔い改めよ。天の国は近づいた」
この言葉はイエスが言っていたものだとぼくは思い込んでいたが、イエスに先立ってこのヨハネが人々に伝えていたのだ。
そしてヨハネは救世主、すなわちイエスが間もなく現れることをこの言葉によって表していたのである。
そしてこの偉大な人物が神の子イエスに洗礼を授けるという重要な役割を果たすことになる。
イエスはヨハネから洗礼を受けたあと、神の霊が鳩の姿となって自分のもとに降ってくるのを見た。(神が人間の世界に干渉するときは鳩の姿や虹の姿などをとる)
そして「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」という声が天から聞こえてくるのをイエスは感じたのであった。
イエスは洗礼によって自らが神の子であるということを確信し、自らの為すべきことをなそうとしていく。
そしてイエスは前の記事で紹介した誘惑の山へ赴き、そこで断食修行をし、悪魔の誘惑と戦うことになる。
「美しい川」という言葉を聞いたときに、みなさんならどのような川を想像するだろうか。
いろんな姿の川があるとは思うが、きっと透明で澄んだ川を想像するのではないだろうか。
ぼくもその一人だ。
だが、この茶色い色をしたヨルダン川を眺めていると、その想像とは裏腹に、この川はとても美しく感じられたのだ。
川岸の緑の合間から穏やかに注ぎ込んでくる水の流れ。
乾いた大地の隙間をヨルダン川は静かに流れている。
ここでイエスは洗礼を受け、2000年経った今も、多くの人が洗礼を受けに遠路はるばる訪ねてくる。
この川の流れはどれだけ多くの人たちの思いを受け入れてきたのだろう。
そのことに思いを馳せると、この川の持つ重みを感じずにはいられなかった。
続く
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