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平雅行『鎌倉時代の幕府と仏教』概要と感想~「武士の仏教=禅」は神話だった!?衝撃の事実が明かされる一冊

鎌倉時代の幕府と仏教
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平雅行『鎌倉時代の幕府と仏教』概要と感想~「武士の仏教=禅」は神話だった!?衝撃の事実が明かされる一冊

今回ご紹介するのは2024年に塙書房より発行された平雅行著『鎌倉時代の幕府と仏教』です。

早速この本について見ていきましょう。

幕府僧個々の事績の解明を積み重ねて鎌倉仏教界の歴史的実態を究明し、鎌倉幕府の宗教政策とその歴史的変遷を解明して、鎌倉仏教の展開史を全体的視角から捉えなおす。

【目次】
序章 鎌倉仏教研究の課題と総括的検討
第一章 幕府勤仕僧と鎌倉幕府
第二章 鎌倉時代の国家構造について
第三章 北条氏の仏教界進出
〔補論〕醍醐寺蓮蔵院親雅と報恩院隆舜
第四章 鎌倉における顕密仏教の展開と鎌倉幕府
第五章 鎌倉幕府の延暦寺政策
第六章 青蓮院の門跡相論と鎌倉幕府
第七章 後醍醐中宮御産祈禱についてー呪詛否定論の批判ー 

塙書房商品紹介ページより

今作の著者平雅行氏の著作はこれまでも当ブログで『歴史のなかに見る親鸞』『日本中世の社会と仏教』など様々な本を紹介してきました。平氏の語る仏教史は非常に刺激的でこれまでの先入観や常識を打ち破る新鮮な発見に満ちています。

本書でもそれは健在で、本書冒頭からいきなり次のような言葉が出てきます。

本研究は鎌倉新仏教史観の破綻を顕在化させ、その息の根を止めるものでもある。東国鎌倉では顕密仏教が、無視することが不可能なほどの厚みと深みと広がりをもっていた。その事実を突きつけることよって、武士の仏教=禅、鎌倉の仏教=禅という神話が、歴史的実態を無視した空論であることを白日のもとにさらす必要がある。

塙書房より発行された平雅行著『鎌倉時代の幕府と仏教』P21

いかがでしょうか。これはびっくりですよね。度肝を抜かれた方も多いのではないでしょうか。

「武士の仏教=禅、鎌倉の仏教=禅という神話が、歴史的実態を無視した空論である」というのは私達には想像もできない話ですね。私達はずっとそう思い込んできましたし、教えられてもきました。

ですが、歴史学者による厳密な史料研究が進んできた現在、これは確たる事実としてデータが揃いつつあります。平氏はまさにそうした緻密な研究成果の基にこうした驚きの説を述べています。

私達がこれまで教えられてきた仏教史観には当時の思想的流行に沿って根拠のないまま語られたものが多かったことがこの本では明らかにされます。こうした事実についてはこれまで当ブログでも様々な本を紹介してきましたが、それにしても「武士=禅」「鎌倉=禅」すらそうした根拠なき神話だったというのにはさすがにがっくり来ます。もうこれまで教わってきたことの何を信じてよいのやらと「とほほ」な状況です。

ですがこれも学問的な研究の進展あってこそです。こうした研究成果の下、私達僧侶がいかにして生きていくか、それが試されていると強く思います。平氏の著作はどれもとてつもないエネルギーが込められています。平氏の熱気が伝わってくるのですよね。これほど熱く仏教史について語って下さる氏の言葉に私達僧侶がどう応えるかです。私は氏に負けず熱い思いで仏道を歩む所存です。私は今、燃えています。

いやあ、この本には驚かされました。これは盲点でした。通説的に語られるイメージと現実の乖離を本書では知ることになります。ぜひおすすめしたい一冊です。

また、この本と合わせて今枝愛眞著『中世禅宗史の研究』という本もおすすめしたいです。

平氏の『鎌倉時代の幕府と仏教』では幕府と顕密仏教の関係性を詳しく学ぶことができましたが、この本では禅宗の歴史を詳しく見ていくことができます。

鎌倉時代における禅宗はどのような状況だったのか、また五山制度はいつどのようにできたのかも本書では学ぶことができます。『鎌倉時代の幕府と仏教』とセットで読むとより深く味わえる参考書となっています。

ぜひ合わせて手に取って頂ければと思います。

以上、「平雅行『鎌倉時代の幕府と仏教』概要と感想~「武士の仏教=禅」は神話だった!?衝撃の事実が明かされる一冊」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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