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平雅行『鎌倉仏教の中世』概要と感想~鎌倉新仏教史観は間違いだった!?歴史学が解き明かす中世仏教の真の姿とは

鎌倉仏教の中世
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平雅行『鎌倉仏教の中世』概要と感想~鎌倉新仏教史観は間違いだった!?歴史学が解き明かす中世仏教の真の姿とは

今回ご紹介するのは2025年に法藏館より発行された平雅行著『鎌倉仏教の中世』です。

早速この本について見ていきましょう。

治承・寿永の内乱をほぼ無傷で乗り越え中世社会を貫く文化体系へと発展した顕密仏教。それなくして中世について語ることはできない。顕密仏教を基軸に多様な角度から新たな鎌倉仏教像を描き出し、中世史像を再構築する意欲作。

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本作『鎌倉仏教の中世』の著者平雅行氏の作品は当ブログでもこれまで『歴史のなかに見る親鸞』『日本中世の社会と仏教』などをご紹介しました。特に『歴史のなかに見る親鸞』は真宗僧侶たる私にとって非常に刺激的な作品でありました。

その平雅行氏の新刊が法藏館より出版されたということで私も勇み手に取ってみたのですが、本書もこれまでの作品に劣らず刺激的です。

上の本紹介にもありますように、本書はこれまで平氏が提唱してきた中世仏教界の姿を文庫で一般読者に伝えんとする作品となっています。

本書あとがきで平氏は次のように述べています。

本書は、新たな鎌倉仏教像を、できるだけ分かりやすい形で市民の方々に提供しようとするものである。私はこれまで『親鸞とその時代』『改訂 歴史のなかに見る親鸞』(いずれも法藏館)、『法然』(山川出版社)の三著で、鎌倉新仏教史観を批判しながら、法然・親鸞をどう捉えなおすことができるかを論じてきた。それに対し本書は、顕密仏教を中心に多様な角度から、新たな鎌倉仏教像の具体相を語ろうとするものだ。本書をはじめとするこれらの論著によって、私の鎌倉仏教研究の全体像をほぼ提示できたと考える。(中略)

本書は以下の三点の捉え方に特徴がある。

①律令体制の崩壊を契機に、古代仏教は多大な犠牲を払いながら中世仏教へと自己変革を遂げ、その結果、顕密仏教は中世社会を貫く文化体系にまで昇華・発展した。

②旧仏教の腐敗・堕落への批判として仏教革新運動が登湯したのではなく、治承・寿永の内乱で鎮護国家仏教が無力さを露呈したことが革新運動の引き金になった。

③顕密仏教は平安末・鎌倉初期という危機の時代を無傷で乗り切っただけでなく、むしろ焼け太りすらして、中世仏教界の中核として盤石の態勢を築きあげた。

以上の三点が本書の特徴である。私たちはこれまで、鎌倉時代の仏教革新連動を過大評価しすぎてきた。もちろん、鎌倉時代に個性的で魅力的な思想家が数多く輩出されたのは事実であり、その思想史的意義が大きいのも確かだ。しかし、社会的影響力という点からすれば・貞慶・明恵らの穏健改革派への支持は一部に留まったし、法然・親鸞・道元・日蓮らの急進改革派に至っては、その支持はさらに少数でしかない。なぜ、そうなったのか。本書はその経緯を解明しながら、新たな鎌倉仏教像を提示しようとした。
※スマホ等でも読みやすいように一部改行しました。

法藏館より発行された平雅行著『鎌倉仏教の中世』P293-294

この引用を読んで驚かれた方もおられるのではないでしょうか。

そうです。従来の仏教史学では比叡山や興福寺などの旧仏教が堕落していたから鎌倉新仏教が生まれてきたとされてきましたが、もはやこの説は通用しなくなっています。近年の研究の進展により、こうした旧仏教堕落論がもはや成立不可能となっているのです。

また、上の引用の後半に書かれていますように、法然、親鸞、道元、日蓮らの教団は彼らが存命していたころにはそこまで大きな勢力にはなっていません。浄土真宗に関しては室町後半から戦国期にかけて本願寺が急拡大したため現在のような巨大教団になったまでです。つまり、親鸞が亡くなってから150年以上もほとんど社会に影響を及ぼすことのない小教団だったのです。そしてその時代まで依然として強力だったのが旧仏教と揶揄されてきた比叡山や興福寺ということになります。

私達がこれまで歴史の教科書や様々な場で教えられてきた仏教の歴史が実は全く実態とかけ離れたものだった・・・。そのことを本書ではひとつひとつ見ていくことになります。

本書の中でも個人的に特に印象に残っているのが「僧兵と強訴」に関する解説です。僧兵による強訴というと、僧侶の堕落というイメージが強烈に結びついているかもしれませんが、実はこの強訴こそ民衆の救済と結びついていたとしたらどうでしょう。虐げられた人々の声を拾い上げた最後の手立てだったとしたらどうでしょう。

平氏はこの僧兵と強訴の問題について、「そもそも強訴とはなぜ生まれてきたのだろうか」というところから掘り起こし、その意義を探っていきます。これはぜひ読んで頂きたい箇所です。「僧兵=仏教の堕落」とこれまで批判され続けてきましたが、そこには中世ならではの論理があったのです。私達の当たり前を中世に当てはめることで見えなくなるものがたくさんあるということをこの箇所から学ぶことができます。

私はこれまでも平氏の著作や多くの仏教史、日本史の本を読んできましたのである程度耐性はありましたが、初見の方がこの本を読めば度肝を抜かれることは間違いないと思います。それほど私達が持っている常識というのは危ういものだったのです。ぜひぜひこの本を読みその衝撃を体感して頂けたらと思います。

以上、「平雅行『鎌倉仏教の中世』概要と感想~鎌倉新仏教史観は間違いだった!?歴史学が解き明かす中世仏教の真の姿とは」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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