若狭徹『もっと知りたい はにわの世界』概要と感想~知れば知るほど奥深い埴輪の世界のおすすめ入門書!

若狭徹『もっと知りたい はにわの世界ー古代社会からのメッセージー』概要と感想~知れば知るほど奥深い埴輪の世界!
今回ご紹介するのは2009年に東京美術より発行された若狭徹著『もっと知りたい はにわの世界ー古代社会からのメッセージー』です。
早速この本について見ていきましょう。
愛すべき癒しの造形「はにわ」の声に耳を傾け、古墳時代にタイムスリップしてみませんか古墳の始まりとともに生まれ、その終焉ととともに姿を消した「はにわ」約300年の歴史を、著者の見解にもとづいてビジュアルにたどります。再現イラストや復元写真も交えて古墳時代の人々の暮らしを生き生きと浮かび上がらせた、画期的入門書です。人や動物のほか家や武具など多彩な埴輪の魅力を味わいながら、その形やしぐさの意味を知ることができます。
Amazon商品紹介ページより

はにわ・・・。
はにわといえば誰しもが何となく上の画像のようなユーモラスでちょっと不気味な存在をイメージするのではないかと思います。
ですが、このはにわとはそもそも何者なのでしょう。なぜこのような不思議な姿をしているのか、なぜこれが古墳に置かれたのでしょう。そう考えてみると意外とわからないことがたくさんありますよね。
本書では身近ながらも不思議な存在「はにわ」を楽しく学べるおすすめ入門書となっています。
著者は冒頭でこの本について次のように述べています。
心躍る、はにわ世界へのいざない
博物館に展示された古代遺物の中で、ひときわ高い人気を誇るのが埴輪である。私が携わる博物館の感想ノートには、子どもたちの手によって「踊る埴輪」や「馬の埴輪」の絵があちこちに描かれ、「はにわサイコー!」の丸文字が添えられている。そんな「サイコー」な埴輪たちを、近年の考古学の成果をふまえつつ「再考」しようというのが本書のねらいである。
ところで埴輪には、古代の器物をかたどったものが多く認められる。王が所持していた武器や甲などの威信財はもとより、居館に実在したであろうさまざまな家や、大海を渡った船までもが造形されている。それらは、考古学だけでなく、工芸史・建築史・船舶史などの分野にとっても欠かせない重要な資料となる。
しかしながら、埴輪が愛される最大の理由は、私たち人間の姿をリアルに写した人物埴輪の存在にほかなるまい。その表情やしぐさをみるだけで、遠い古代の人々の息吹を、理屈ぬきで体感したような気持ちで満たされるからである。
もっとも、埴輪がつくられた古墳時代より古い縄文・弥生時代にも、土偶や木偶という人形が存在した。とくに縄文時代には数多くの土偶がつくられたが、その表現はすこぶる抽象化されており、呪的な意味合いが強い。すばらしい歴史資料にはちがいないが、今の私たちからみると、親しみの対象としてはやや遠い存在に思える。
その一方で、埴輪には、ダイナミックで具象的な造形美がみなぎっており、かつ群像としての場面表現、服飾や社会組織、人と動物との関わりなど、人間集団のありようを生き生きと感じさせてくれる。私たちが自らのルーツを探訪しようとする心情を、自然とよび覚ます歴史的な存在として働くのである。
人物埴輪の研究は、まず風俗的な観点から始められた。やがて発掘調査による出土資料が増えると、埴輪群像の意味は何かという根源的な問いかけが始まった。それは豊かな発想で、多様に、しかし無批判に発信され続けた。
そして今は、意味論が乱立した反省をふまえて積極的な解釈をさし控え、埴輪の型式を徹底的に分類する「科学的」な研究が指向されている。現在、研究者たちの議論は、「埴輪は埴輪の中だけ」で禁欲的に行われるか、あるいは『日本書紀』など古典の記事との比較検討によって深められている。この双方とも、重要で、最も基本的な研究姿勢であることは疑いない。
けれども、埴輪とて「生々しい人間社会」の産物にほかならず、千数百年前そこに込められた強いメッセージは、今でも雄弁に語りたがっているように思えてならない。そこで本書では、従来の視点に加え、古墳や埴輪を生み出した古墳時代豪族の地域経営や社会戦略、みせびらかしの心性など、少し違ったスパイスをふりかけつつ、埴輪世界を「サイコー」していく所存である。
東京美術、若狭徹『もっと知りたい はにわの世界ー古代社会からのメッセージー』P2,3
本書『もっと知りたいシリーズ』はこれまでも当ブログでもたくさんの本を紹介してきました。やはり何と言ってもこのシリーズは図版が豊富!しかも解説も入門者向けに非常にわかりやすいものになっており、ガイドブックとして実に優秀です。日本仏教や日本の美術に関する充実していて、これらもぜひおすすめしたいです。


そしてそもそもなのですが、私がこの『もっと知りたいシリーズ』を知ったのはフェルメールがきっかけでした。

この本で紹介されていた『デルフトの眺望』があまりに素晴らしく、私は一瞬でフェルメール絵画の虜になってしまいました。そしてその絵の解説がまた素晴らしいのなんの!その絵に込められた奥深い意味や、フェルメールの生きた当時のオランダの時代背景までわかりやすく説かれていたのでありました。

そしてこのフェルメールにはまったあまり、私は実際にそのオリジナルを見にいくことにもなりました。詳しくは上の記事でお話ししていますが、それほどはまることになったのもこの『もっと知りたいシリーズ』のおかげです。
今作『もっと知りたい はにわの世界』も信頼のクオリティーです。


はにわの不思議な世界の入門書として非常におすすめです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「若狭徹『もっと知りたい はにわの世界』概要と感想~知れば知るほど奥深い埴輪の世界のおすすめ入門書!」でした。
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もっと知りたいはにわの世界 古代社会からのメッセージ (アート・ビギナーズ・コレクションプラス)
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