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すばらしきかなアヤソフィア~修理中もなんのその!トルコ編③

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すばらしきかなアヤソフィア~修理中もなんのその! 僧侶上田隆弘の世界一周記―トルコ編③

ブルーモスクでの悲しみを癒すべく、今度はアヤソフィアへと向かう。

ブルーモスクからアヤソフィアまでは徒歩で5分ほど。

ブルーモスクのある広場からすぐに見えてしまうほどの距離。観光客にとってこれもイスタンブールのありがたいところだ。

さて、このアヤソフィアはというと、元々はキリスト教の大聖堂として建てられたがその後イスラム教のモスクへと転用され、現在は博物館として公開されている建造物だ。(このことはよく覚えていてほしい)

その歴史は古く最初に建てられたのは西暦360年にまでさかのぼる。当初は今のような姿ではなく、木造の屋根を持つ建物だったそう。

その後戦乱により何度も焼失するも、537年に再建されたのが現在のアヤソフィアの姿の原型になっている。

さあ、もう少し近づいてみよう。

ブルーモスクとは対照的に、赤っぽい色をしている。

では、この堂々たるアヤソフィアに入場してみよう。

入口からすでに圧倒されてしまう。

巨大でなめらかな大理石が床や壁を形作っている。

入り口でこうなのだからドームは一体どうなっているのだろう。

さあ、足を踏み入れてみる。

あぁ・・・なんと美しいのだろう・・・

・・・申し訳ない。ぼくは言葉を失ってしまった。

このアヤソフィアの美しさを言葉にするだけの力を、ぼくは残念ながら持ち合わせていない。

それほどまでにぼくは打ちのめされてしまったのだ。

この写真を見て、お気づきになられた方もいるかもしれない。

そう、左側は修理中のため、足場が組み立てられている。

だが、そんなことを全く吹き飛ばしてしまうほどの美しさがこのアヤソフィアにはあったのだ。

もう少し中に入ってみよう。写真右側の柱が気になる。

ドームを支える柱の大きさを感じていただけるだろうか。

ぼくはこの柱の質感に魅力を感じた。大理石というのは強さとなめらかさを感じさせる。

そして正面を見上げてみると、大きな円の中心に人の絵のようなものが見える。

もう少し寄ってみよう。

これでよく見える。

この絵は聖母マリアとイエスのモザイク画だ。

このモザイク画の存在がアヤソフィアを貴重な文化遺産たらしめているのだ。

最初に述べたように、アヤソフィアはもともとキリスト教の大聖堂として建てられた。

そしてこのモザイク画は9世紀ころに描かれたものだ。

だが、1453年にオスマントルコによってイスタンブールが占領されると、このアヤソフィアはイスラム教のモスクとして転用されることが決まる。

オスマントルコの皇帝がアヤソフィアのあまりの美しさに、これを破壊するのは忍びないと考えたからであった。

とはいえ、モスクとして使うのにキリスト教の絵が飾られていては困ったことになる。

そこで漆喰をつかってこの絵を塗りつぶし、聖堂内をモスク様式に改造していったのだ。

長らくイスラム教のモスクとしての役割を果たしていたアヤソフィアだったが1934年、ついにその役割を終える。

当時の大統領の政策によってアヤソフィアをモスクとして使用することを禁じ、博物館として利用することが決定されたのだ。

当時、トルコは政教分離の原則を進めようとしていた。

宗教が力を持ちすぎないように。

そのような動きのもと、アヤソフィアの博物館化が決まった。

そしてそれに向けての工事や修理の過程で、塗られていた漆喰が剥がれ落ち、そこから隠されていた聖母子像を発見。

そのおかげで、現在こうして僕たちは聖母子像を見ることができるのである。

つまり、この聖母子像を見るだけで、キリスト教からイスラム教、イスラム教から世俗国家という流れを知ることができるのだ。

何はともあれ、このアヤソフィア、本当に素晴らしい。

晴れ晴れとした気分でイスタンブールを飛び立てそうだ。

続く

※2021年4月追記 
2020年の7月よりエルドアン大統領によってアヤソフィアは再びモスクとして使用されることになりました。それに伴って今後この建物がどのようになっていくかはわかりません。今後の動きがどうなるか気になるところです。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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