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南里空海 野町和嘉『ヴァチカン ローマ法王、祈りの時』あらすじと感想~ヨハネ・パウロ2世やヴァチカンの貴重な写真が満載の一冊!

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南里空海 野町和嘉『ヴァチカン ローマ法王、祈りの時』あらすじと感想~ヨハネ・パウロ2世やヴァチカンの貴重な写真が満載の一冊!

今回ご紹介するのは2000年に世界文化社より発行された南里空海 野町和嘉著『ヴァチカン ローマ法王、祈りの時』です。

早速この本について見ていきましょう。

世界平和と宗教の和解に取り組むローマ法王の深い祈り、ヴァチカンの美しい光と影、天へ届かんとする宗教美術…。新時代を迎えたヴァチカンを特別取材。豊富なカラー写真と文章でその全貌を伝える。

ヴァチカン市国は、イタリア・ローマ市内にある総面積44ヘクタールの世界最小の独立国。そして世界10億のカトリック教徒の総本山である。1999年12月24日、聖ピエトロ大聖堂に琴の「さくら」の調べが響き三千年紀への「大聖年の扉」が開いた。本書では新時代を迎えたヴァチカンを特別取材。世界平和、宗教の和解に取り組むローマ法王の深い祈り、ヴァチカンの美しい光と影、天へ届かんとする宗教美術…。祈りを見失った現代の私たちにローマ法王とヴァチカンの全存在が問いかける。

Amazon商品紹介ページより

この作品では本紹介にもありますように、通常なかなか見ることも取材することもかなわない貴重なヴァチカンの写真を見ることができます。

私もヴァチカンについてはこれまで様々な本を読んできましたが、「祈りの時」に特化して儀式の最中の模様を取材しているこの本は非常に貴重なものだと思います。私にとってもこの作品はとてもありがたいものとなりました。

著者はこの本のまえがきで次のように述べています。この本の大きな流れやその願う所について書かれた箇所ですので少し長くなりますがじっくり読んでいきます。

カトリック教徒でもない私が、また神学を学んだり、西欧文明、文化に興味を持って研究している者でもない私が、ヴァチカンに取り組もうと思ったのは、新聞に載っていた記事が契機だった。一九九八年九月二十七日付の『朝日新聞』の「第三千年紀―過去の非認め未来へ」という記事だった。

法王ヨハネ・パウロニ世は就任から一〇〇回以上も「われを赦したまえ」と、この一〇〇〇年間の教会の誤り、犯した罪の非を認め悔い改め、そして諸宗教問の対話を深め仰解をして、二〇〇〇年を迎えたい……という内容だった。

この記事を読み、ローマ法王と、法王を頂点として世界に約一〇億人のカトリック教徒を抱える総本山ヴァチカンとは、いったいどのような存在なのか。また、ヴァチカンという宗教国家を通して宗教不在の日本という国を振り返ってみたいと思った。

日本は第二次世界大戦で、人間の幸福を求めて進歩や発展をしたはずの科学や技術が一瞬にして大量に人の命を奪う凶器と化すことを身をもって体験した。そして、戦後、その科学や技術革新にさらに高度経済成長と溢れる情報が加わって、効率とか能率とか数字が人間を支配する社会構造が生み出されていった。数字の枠に押し込められた人にとっても、そこからはみ出してしまった人にとっても、生きやすい時代ではないことを、病んでしまった今の社会が物語っている。―サラリーマンの自殺の増加、多発する少年たちの残忍な反乱……目を覆いたくなるような数々の悲惨劇に、日本のニ一世紀は見えてこない。

数字に振りまわされて、自分の帰る家庭も学校も地域も社会も見失い、心を救うはずの宗教も—既成の宗教も新興宗教も、相次ぐ事件や犯罪で覚束なくなってしまった。

人間を超えた存在、人間の力では及ばない存在……、〝畏れ〟を抱く大きな存在があることを見失ってしまった現代、果たして宗教は人の心を救うことができるのか。

新しい千年紀を迎えるにあたり、西暦二〇〇一年、この西暦とはキリストが生誕してからの歳月を表し、A・D(Anno Domini)と表記するが、これはラテン語の「主の年」を意味する。「主の年」すなわち「神の年」。新しい世紀の始まりに、宗教国家ヴァチカンを通し、また、ローマ法王の祈る姿を通して、私は人間の根幹をなしている宗教を問い直したく、大聖年の扉の開くヴァチカンへと向かった。

世界文化社、南里空海 野町和嘉『ヴァチカン ローマ法王、祈りの時』P4

ここで述べられるように著者は宗教とは何か、宗教は私達にとってどのような意味を持つのかという一貫した問いを持ってこの作品を綴っていきます

そして聖なる年を迎えるヴァチカンへの取材を通して、私達は祈りというものについても考えることになります。

また、この作品において大きな比重を占めているのが当時の法王、ヨハネ・パウロ二世の存在です。

ヨハネ・パウロ二世(1920-2005)2004年6月ホワイトハウスで行われた
大統領自由勲章授与式にて。Wikipediaより

この作品ではヨハネ・パウロ二世の生涯についてもまとめられていて、彼がいかに突出した存在だったかがよくわかります。

こちらも写真がたくさん掲載されていて、祈りの場に臨むヨハネ・パウロ二世の貴重な姿を見ることができます。この作品で語られる解説もとてもわかりやすく、ヴァチカンやヨハネ・パウロ二世についての入門書としてもこの本は優れていると思います。

ヴァチカンに興味のある方にぜひおすすめしたい一冊です。

以上、「南里空海 野町和嘉『ヴァチカン ローマ法王、祈りの時』~ヨハネ・パウロ2世やヴァチカンの貴重な写真が満載の一冊!」でした。

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ヴァチカン: ローマ法王、祈りの時

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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