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三好徹『チェ・ゲバラ伝』あらすじと感想~キューバ革命を代表する革命家の生涯と思想を知るのにおすすめの伝記

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三好徹『チェ・ゲバラ伝 増補版』概要と感想~キューバ革命を代表する革命家チェ・ゲバラの生涯と思想を知るのにおすすめの伝記

今回ご紹介するのは2014年に文藝春秋より発行された三好徹著『チェ・ゲバラ伝 増補版』です。

早速この本について見ていきましょう。

世界の記憶遺産にもなった英雄。決定版伝記!

南米だけでなく、世界中で愛される英雄・ゲバラ。裕福な一族に生まれた男は、なぜ医者の道を捨て、革命に身を投じたのか?

南米アルゼンチンの裕福な家に生まれ、医師になるも、貧困と圧制と腐敗の覆う現実を憂い、キューバ革命へと身を投じたチェ・ゲバラ。彼はどのように生き、そして死んだのか。その情熱と友情。遺した言葉は「ユネスコ世界記憶遺産」にも登録され、いまなお全世界で語られる伝説の男、ゲバラを描いた不朽の傑作評伝、増補版。

Amazon商品紹介ページより
エルネスト・ゲバラ(1928-1967)Wikipediaより

この作品はアルゼンチン生まれの革命家チェ・ゲバラ(本名エルネスト・ゲバラ)の伝記になります。

私がこの本を読もうと思ったのは、キューバの歴史を学ぶ過程でチェ・ゲバラの存在に釘付けになったからでした。

それまでチェ・ゲバラという名前自体は知ってはいたものの、実際この人物がどのような人物で何を成し遂げたのかということはほとんど知りませんでした。

そしてこの伝記を含めて多くの本に書かれているように、ゲバラは無類の読書家で、彼が愛読していたのが『ドン・キホーテ』だったということを知り私は感銘を受けたのでありました。

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私が『ドン・キホーテ』を読もうと思ったのはゲバラのおかげです。「ゲバラほどの男が愛していた『ドン・キホーテ』は一体どんなにすごい本なのだろう」、そう思ったからこそ私は『ドン・キホーテ』に初めて手を伸ばしたのです。

今では『ドン・キホーテ』は私のライフワークのようなものになっています。この作品は一生読み続けていくことでしょう。

私にとってチェ・ゲバラという存在は私とドン・キホーテを繋いでくれた大恩人なのでありました。

その大恩人のことを知れる素晴らしい伝記が本作『チェ・ゲバラ伝』になります。

この本のまえがきではこの作品について次のように述べられています。少し長くなりますがこの本の雰囲気が感じられる重要な箇所ですのでじっくりと読んでいきます。

人が革命家になるのは決して容易ではないが、必ずしも不可能ではない。しかし、革命家であり続けることは、歴史の上に革命家として現われながらも暴君として消えた多くの例に徴するまでもなく、きわめて困難なことであり、さらにいえば革命家として純枠に死ぬことはよりいっそう困難なことである。

エルネスト・チェ・ゲバラの生涯は、このもっとも困難な主題に挑み、退くことをしらなかった稀有の例であった。革命家には勝利か死かしかないというおのれの、あえていうならばロマンティックな信条の命ずるままに自分の行動を律して生涯を終えた。革命にもしロマンティシズムがあるならば、「チェ」は文字通りその体現者だったのである。

かれが南米ボリビアのジャングルの中で壮烈な死をとげてから、すでに多くの日々がわれわれの上を通り過ぎた。かれの第二の故郷といってもよいキューバにおいてさえも、街のいたるところに写真や肖像が掲げられているとはいえ、それはかなり色褪せてみえる。

そして、人びとが「チェ」について語るときも、その口調や表情にはかつてのドラマチックな昂ぶりはうしなわれ、ごく親しかった一部のものを除いては、もはや歴史上の人物を語るときの淡々たるそれなのだ。

また、かれのゲリラ戦争日記が公刊されたさいに起こったジャーナリズムの熱狂の波は、わが国にも及んだものであったが、いまではすべてが日常的な静けさをとり戻している。それでいいのである。チェのような人物にとっては、あのようなブーム、あのような騒々しさ、あのような浮薄は、むしろかれの欲せざるものであったろう。かれが求めたものは、ひたすら行動であり、名誉も権力も眼中になかった。安逸や地位や金銭などはもちろんのこと、死の危険さえもかれは軽蔑した。

たしかに、革命家が死を怖れていては何もなしえないことは事実である。人類の歴史がもった多くの革命家たちは、みな、死の危険をもいとわなかった点では、かれに劣らないだろう。

しかしまた同時に、歴史は、革命がいったんひとつの国家、ひとつの民族の中で達成されるやいなや、革命家であったものがいつしか権力の中枢にある政治家として変身し、戦いの場から遠ざかるか、もしくは同志の血であがなった体制を守ることのみに汲々としたことを教えている。

それどころか、かれらの中には、かつての同志といえども、自己の権力を守るために容赦なく粛清したものも少くない。あるいはほかの国や民族が助けを求めているからといって、自分を投げ出すことはしない。武器や弾薬や兵士を送るにすぎない。

といって、それを非難することは誰にもできまい。なぜなら、革命につきものの反革命を抑えるという常識的かつ当然の理由が用意されている。なにも新しい危険に身をさらす必要はない。革命に到達するまで生き残り得たことだけでも幸運なのであり、そして幸運とは何度も訪れることを期待できぬものである。

このような原則に、チェは挑戦した。それはフィデル・カストロの言葉を借りれば〝意思のカ、英雄的な精神、そして人間の偉大さが何をなしうるかの崇高な証〟であるようにわたしには思われる。

そして、以下の文章はそれがわたしの独り合点ではないことをひとりでも多くの人に理解してほしいために「チェ」への連帯をこめて綴ったものである。
※一部改行しました

文藝春秋、三好徹『チェ・ゲバラ伝 増補版』P9-11

チェ・ゲバラは私たちの想像のはるか上を行く人物です。普通では考えられぬほど高潔に理想を追い求め、そして最後にはその理想を抱いたまま散っていきます。

上の引用にありますように、普通ならば革命を達したならば革命家ではなくなるはずなのです。自分たちの保身のために普通ならば陥ってしまうものをゲバラは自分から放棄しました。彼は最後の瞬間まで理想を追い求めたのです。

そんな彼の生涯を臨場感たっぷりに追っていけるのがこの伝記です。

これは非常に面白いです。チェ・ゲバラの驚くべき生涯を私たちは目の当たりにすることになります。これはぜひぜひおすすめしたい作品です。

そして最後にもうひとつ。

私はドン・キホーテとの縁を繋いでくれた恩人チェ・ゲバラのお墓を2019年に訪れています。

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ここはゲバラの博物館にもなっていてゲバラが身につけていたものや様々な資料が展示されています。

そしてその中でも私が一番感動したのはゲバラが実際に読んでいたというセルバンテスの『格言集』の展示でした。「これをゲバラが手に取って読んでいたんだ」と、全身が震えるような思いになりました。あの本を見た時の鳥肌は忘れられません。

そんな体験記が上の記事になります。ゲバラに興味のある方はぜひ上の記事もご覧ください。

以上、「三好徹『チェ・ゲバラ伝』~キューバ革命を代表する革命家チェ・ゲバラの生涯と思想を知るのにおすすめの伝記」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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