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フォイエルバッハ『キリスト教の本質』あらすじと感想~マルクスに強い影響を与えた作品!「人間が神を作った」と主張するフォイエルバッハ

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フォイエルバッハ『キリスト教の本質』概要と感想~マルクスに強い影響を与えた作品!「人間が神を作った」と主張するフォイエルバッハ

今回ご紹介するのは1841年にフォイエルバッハによって発表された『キリスト教の本質』です。私が読んだのは1937年に岩波書店より発行された船山信一訳の『キリスト教の本質』2016年第45刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

ドイツの哲学者フォイエルバッハ(1804-72)は、独自の人間学的唯物論に拠ってキリスト教的世界観の根底をゆるがす批判を展開、若き日のマルクスに決定的な影響をあたえた。本書はその主著であり、人間が人間にとって神であり、神が人間を造ったのではなく人間が神を造ったのだ、と彼の根本思想が展開されている。(全2冊)〈上巻〉

人間は宗教の始めであり宗教の中点であり終りである、と第1部をしめくくったあとフォイエルバッハは第2部「宗教の真実でない本質」(本巻所収)へと進む。第1部の論調とはうって変り、ここでは宗教の非人間的な本質をえぐり激しい論駁をくわえる。このことを著者は、「宗教を宗教がもっている矛盾へと解消するのだ」といっている。(全2冊)〈下巻〉

岩波書店、フォイエルバッハ、船山信一訳『キリスト教の本質』2016年第45刷版(上巻)、2016年第37刷版(下巻)表紙より
フォイエルバッハ(1804-1872)Wikipediaより

フォイエルバッハはドイツの哲学者で、若きマルクスが強烈な影響を受けた哲学者として知られています。

マルクスとフォイエルバッハのつながりについては以下の「フォイエルバッハの唯物論~マルクスの「宗教はアヘン」はここから生まれた「マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」(11)」の記事でお話ししています。「宗教はアヘン」というマルクスの有名な言葉はこのフォイエルバッハから着想を得ています。マルクスの唯物論の基礎を作った人物こそこのフォイエルバッハと言えるかもしれません。ぜひ以下の記事もご参照ください。

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さて、本作の『キリスト教の本質』ですが、読んでいて驚くほど真っすぐにキリスト教を批判しています。それも単に教会への批判というよりも、もっと根源的に宗教そのものに切り込んでいく考察がなされています。

そして上の本紹介にありましたように、この作品は「人間が人間にとって神であり、神が人間を造ったのではなく人間が神を造ったのだ」というフォイエルバッハの根本思想が語られます。

この思想自体は上巻の最後に次のように説かれています。

われわれの最も本質的な課題はこのことをもってはたされた。われわれは神が世界の外にもっている自分の本質・神の超自然的な本質・神の超人間的な本質を人間的本質の成分へ還元した。人間的本質の成分は神の本質の根本成分なのである。われわれは結論において再び始めへ帰って来た。人間は宗教の始めであり、宗教の中点であり、終りである。

岩波書店、フォイエルバッハ、船山信一訳『キリスト教の本質』2016年第45刷版(上巻)P369

これぞドイツの哲学者というまどろっこしさも感じますが、恐るべきことがここで書かれています。

この箇所は上巻のまとめにあたり、ここまでの流れを総括しての言葉ですのでここだけ読んでもなかなかわかりにくいのですが「神が人間を作ったのではなく、人間が神を作ったのだ」という主張がここに凝縮されています。

私は専門家ではないのでこのことについてここで簡潔に解説することはできません。上で紹介した「フォイエルバッハの唯物論~マルクスの「宗教はアヘン」はここから生まれた「マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」(11)」の記事ではこのことについて解説された箇所を引用していますので、より詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。

フォイエルバッハは「神が人間を作ったのではなく、人間が神を作ったのだ」という恐るべき主張をこの本で展開します。

先ほども述べましたが、これぞドイツの哲学者という難解な抽象概念がずらりと並んだ文章にはかなり面も食らいました。

これはその一例として写真を撮ってみたのですが、頭がくらくらするような文章です。カントやヘーゲルもそうですがなぜドイツ哲学はこんなにややこしいのかと頭を抱えたくなります。

こういう文章をひたすら学び続けていたのがマルクスやエンゲルスです。

それは『資本論』もそうなってしまうなと思ってしまいました。あの難解で有名な『資本論』もこうしたドイツ哲学の伝統から生まれてきたのだということを感じました。

とはいえフォイエルバッハの『キリスト教の本質』はそこまで苦しい作品ではありません。カントやヘーゲルに挫折した私でも読み切ることができました。キリスト教に対する批判の箇所もわかりやすいとまでは言えなくとも、まったくわからないということはありません。

宗教に対する厳しい批判は私にとってもどきっとするものがたくさんありました。

フォイエルバッハのこうした思想を吸収してマルクス・エンゲルスは自らの思想を育てていった。そのことを知ることができたのはありがたい経験でした。

以上、「フォイエルバッハ『キリスト教の本質』~マルクスに強い影響を与えた作品!「人間が神を作った」と主張するフォイエルバッハ」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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