『コーヒーで読み解くSDGs』あらすじと感想~危機的状況だったコーヒー業界が今どのように変わろうとしているのかを知るのにおすすめ!
『コーヒーで読み解くSDGs』概要と感想~危機的状況だったコーヒー業界が今どのように変わろうとしているのかを知るのにおすすめ!
今回ご紹介するのは2021年にポプラ社より発行されたJose.川島良彰、池本幸生、山下加夏著『コーヒーで読み解くSDGs』です。
早速この本について見ていきましょう。
あたなの知らない、
コーヒーとSDGsの世界。
コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなう
コーヒーで未来を変える旅。コーヒーには、
SDGsのアイデアがあふれている!#コーヒー危機と世界経済
#コーヒーがもたらす健康と福祉
#コーヒー生産とジェンダー平等
#コーヒーが生み出す働きがい
#コーヒーで守る海、陸の豊かさ
#コーヒーで平和と公正をSDGsは、環境、経済、社会に関わる
17の目標を掲げていますが、
それらの目標は、コーヒー業界が
SDGs以前から取り組んできた課題の
縮図でもあります。大学教授、国際NGOの元職員、コーヒーハンターという
Amazon商品紹介ページより
3人の著者がコーヒーを通して
SDGsを紐解き、解説していくことで、
誰もがコーヒーを通じてSDGsに
貢献できることに気付く。
コーヒーの価値観を変え、SDGsを理解できる
これまでにない一冊。
前回の記事で紹介したアントニー・ワイルド著『コーヒーの真実』では世界のコーヒー業界の暗部を知ることとなりました。
その本を読んで頭を抱えた私ですが、本書『コーヒーで読み解くSDGs』ではそんな危機的なコーヒー業界を変えるべく奮闘している人々やその活動を知ることができました。
本書について「はじめに」では次のように述べられています。
私が初めて「サステイナブルコーヒー」という言葉を知ったのは、1995年にアメリカスぺシャルティコーヒー協会の年次総会に参加し講演を聞いたときでした。私は日本の大手コーヒー会社の社員として、ハワイ島をべースに世界中のコーヒー産地で農園開発や買い付けに携わっていましたが、そんな私でさえ、当時はその言葉の意味がいまひとつ納得できませんでした。
その後、コーヒーの国際価格が大暴落し「コーヒー危機」と言われた2001年から2003年にかけては、生産者にとって損益分岐点の半分程度の相場が続き、生産者の夜逃げや一家離散を目の当たりにして、売れないコーヒーが廃棄されていくのを胸を締め付けられる思いで見てきました。銀行管理となったコーヒー畑は、樹が切り倒され、牧草地に変わっていきました。持続不可能になったコーヒーやコーヒー畑を見て、そのころ頻繁に耳にするようになったサステイナブルコーヒーという言葉の重さを痛感したのです。
しかしその最中も消費国のコーヒー業界は、国際価格が暴落していることを消費者に告げもせず、値下げもせずに利益を享受していたのです。帰国する度に、社内外で生産者が生きていけない産地の現状を伝え、品質に見合った価格を支払う必要があると訴えましたが、私の話に耳を傾ける人はいませんでした。コーヒーの危機を現場で見てきた私は、生産国と消費国の間にはこれほどまでに大きな壁があり、また消費国のコーヒー業界と一般消費者の間にはそれ以上の壁があることを思い知らされたのです。
1990年代から中南米の生産国では、環境保護に留意した栽培や精選方法の研究が始まり、労働者の労働・住居環境や子弟の教育に取り組む農園が増えてきました。しかしコーヒーの国際相場が低迷すれば、それを継続することも不可能になります。消費者が、安全で美味しいコーヒーを飲み続けるためには、生産者が安心して生産できる環境が必要です。それをもっと多くの人々に知らせなくてはならないと痛感しました。
この本の執筆者として名を連ねている我々3人は、大学教授(池本幸生)、開発援助に携わる国際NGOの元職員(山下加夏)、コーヒーハンター(川島良彰)として、それぞれの世界で長く活動してきました。実は、この3人がそれぞれ異なる立場で、よりサステイナブルな未来を築くために必要だと判断し、手がけた仕事が、まさにコーヒーだったのです。
2020年に一気に普及啓発が進んだSDGsを、3人でコーヒーを通して紐解き、解説していくことで、コーヒーを通じてSDGsに貢献できることを、皆さんに気づいてもらいたいと思い、本の執筆を2人に提案したことから、この本は生まれました。
本書が、皆さんが持たれているコーヒーの価値観を変える一助になれば幸いです。
ポプラ社、Jose.川島良彰、池本幸生、山下加夏『コーヒーで読み解くSDGs』P3-5
この本ではSDGsの項目に沿ってコーヒー農園の様々な活動や新たなビジネスの仕組みについて学ぶことができます。
先ほども述べましたが『コーヒーの真実』で頭を抱えていた私にとってまさに元気をくれた作品でした。
このことについて「おわりに」の池本幸生氏の次の言葉が印象に残っています。
日本ではコーヒーの美味しさについて蘊蓄を傾ける人たちはたくさんいますが、生産国での環境や、そこで働く人たちの生活のことがまったく抜け落ちていることが多いように思います。2000年代の初めに起こった「コーヒー危機」のことさえ知らない人もいます。これらの問題を知らずに、本当に美味しいコーヒーについて語ることはできるでしょうか。
「他人の不幸の上に自分の幸福は築けない」という言葉があります。私たちは、私たちが「美味しい」と言って飲んでいるコーヒーが、コーヒー生産者の貧困や環境破壊という大きな犠牲の上に成り立っているかもしれないと知ったとき、それでも「美味しい」と満足していられるでしょうか。
そう言うと、「じゃあ、どうしたらいいんですか?」と開き直る人もいますが、私たちは何もかも完璧でなければならないというわけではありません。私たちにできることは限られています。その中で、できることからやっていくことが必要なのです。本書を読んで、どんな問題があり、何が行われているのかを知ることは、その第一歩となるでしょう。SDGsのゴールを見て、何をすべきかを考えるのは本末転倒です。あなたが関心を持ち、実行していることがSDGsのどれに当たるのかを考えるべきなのです。
ポプラ社、Jose.川島良彰、池本幸生、山下加夏『コーヒーで読み解くSDGs』P278
私はまさに「じゃあどうすればいいのだろう」と頭を抱えていた側です。開き直ってはいませんでしたが、何をしたらよいのか途方に暮れていたのは事実です。そんな中このように言って下さるのはとても心が軽くなりました。そして私にできることを一つずつやっていこうという気持ちになりました。これは本当にありがたいことでした。
また、第16章で語られたルワンダのコーヒーについてもとても印象に残っています。
この章ではルワンダで起きた民族虐殺の悲劇やその後の混乱について語られます。私も以前ボスニア紛争を学ぶ過程でこのルワンダの虐殺について学ぶことになりました。
あまりに衝撃的なルワンダの虐殺でしたが、その悲劇の地で「涙のコーヒー」としてコーヒー産業が復活を遂げ、さらには新たなプロジェクトが進んでいるということでした。
かつて自分が学んだ悲劇の地とコーヒーが繋がったこと。そしてコーヒーが復興の一助になるということを知れて私としては前向きな気持ちになれた一冊でした。
文章も読みやすく、写真も多く掲載されていますので気軽に手に取れる作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「『コーヒーで読み解くSDGs』~危機的状況だったコーヒー業界が今どのように変わろうとしているのかを知るのにおすすめ!」でした。
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