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服部正明『古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界』あらすじと感想~ショーペンハウアーとインド思想のつながりも知れる名著

古代インドの神秘思想
目次

服部正明『古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界』概要と感想~ショーペンハウアーとインド思想のつながりも知れる名著

今回ご紹介するのは講談社より2005年に発行された服部正明著『古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界』(大文字版)です。

早速この本について見ていきましょう。

インド学の碩学による最良のインド思想入門個体の本質アートマンと最高実在ブラフマンの一致とは何か。インド精神文化の源泉となった特異な叡知、神秘思想の本質を、初期ウパニシャッドをもとに平易に解説

Amazon商品紹介ページより

この本は古代インド思想の奥義とも言えるウパニシャッド哲学について説かれた作品です。

そしてこの記事のタイトルにも書きましたように、この本の序盤では古代インド思想とショーペンハウアーのつながりについても説かれます。

ショーペンハウアー(1788-1860)Wikipediaより

これまで当ブログでもショーペンハウアーについて見てきましたが、彼と古代インドのつながりやそれがヨーロッパ社会に与えた影響も詳しく知れたのはとても興味深かったです。

そしてこの本のメインテーマ、ウパニシャッドについてですが、やはり手強い相手です。古代インド思想という、私たちがなかなか接することがない何とも謎な存在ですが、この本では難解な哲学としてというより、神秘思想とのつながりを中心に解説されていきます。

巻末の赤松明彦氏による解説ではそのことについて次のように述べられていました。

本のタイトルが、「古代インドの神秘思想」ということで、当時流行のオカルティズムと一緒にされてしまうのではないかという危惧の念をもらされたこともあった。本文中にもそれへの断りが述べられている(三ぺージ、四四ぺージ)。とは言っても、この本は、「初期ウパニシャッドの核心をなす思想を、神秘思想としてとらえながら、それを思想史的な連関のもとに解明すること」(四九ぺージ)を徹頭徹尾めざしたものである。「神秘思想としてとらえる」というこの軸には、いささかのぶれもない。

では、初期ウパニシャッドの核心をなしている思想とはどのようなものか。定式として言えば、それは「アートマンとブラフマンの合一の思想」、「個体の本質であるアートマンと最高実在ブラフマンとの一体性の自覚」ということになる。そして、これを「神秘思想」としてとらえるということは、その思想が、「絶対者との合一の体験」によって支えられているとみなすということにほかならない。おおよそ神秘思想である限り、その根底には神秘体験がある。したがって、本書に登場するウパニシャッドの思想家たちは、いずれも神秘体験家として描かれることになる。

講談社、服部正明『古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界』(大文字版)P267ー268

ここで述べられるように、ウパニシャッドは単に抽象的で難解な哲学というのではなく、「絶対者との合一の体験」がベースにあります。つまり、そこには「実践」があるのです。

哲学と宗教的実践が一体のものとしてあるところにインド思想の面白さがあるように感じました。

この本ではそんなウパニシャッドの概要を知ることができます。

一応位置づけとしては入門書ということで著者も初学者にも伝わるように書いてはいて下さっているのですが、やはりウパニシャッドは只者ではありません。簡単にすぐにわかるかと言われたら正直厳しいです。ですが古代インドの思想を知る上でこの本は非常に大きな示唆を与えてくれるのは間違いありません。私もこの本を読んでよかったなと思っています。

以上、「服部正明『古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界』~ショーペンハウアーとインド思想のつながりも知れる名著」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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