エドワード・ギボン『ローマ帝国衰亡史』あらすじと感想~ローマはなぜ滅びたのかを考察!偉人達も愛した歴史書の名著!
エドワード・ギボン『ローマ帝国衰亡史』概要と感想~ローマはなぜ滅びたのかを考察した!偉人達も愛した歴史書の名著!
今回ご紹介するのは2000年にPHP研究所より発行されたエドワード・ギボン著、中倉玄喜訳の『〈新訳〉ローマ帝国衰亡史』です。
早速この本について見ていきましょう。
多くの作家、政治家が多大な影響を受けたといわれる『ローマ帝国衰亡史』全12巻。この歴史的名著が一冊で読める、待望の縮刷新訳版。
ローマ人は、なぜかくも壮大な帝国を築き、そして滅んでいったのか? 西洋古代の大帝国一千五百年の歩みを通して、近世最大の歴史家であるギボンが描いた「滅びの理」とはいかなるものか?
歴史的事実の羅列にとどまらず、人間の行動の背後にある「歴史の法則」といったものにまで考察を加えた『ローマ帝国衰亡史』。それゆえ、1776年二月に原書の初巻が発売されるや、たちまち希代の名著としての地位を確立する。ノーベル文学賞をしたイギリスの首相ウィンストン・チャーチル、インドの首相ネルー、経済学者アダム・スミス、哲学者バートランド・ラッセル……。本書は、多くの著名人をも魅了したこの不朽の傑作のなかから、各時代の代表的な章をそれぞれ選び、編訳して一冊にまとめたものである。
西欧の画期的繁栄を精神面で支えるなど、欧米で多くの読者を魅了してきたギボンの『ローマ帝国衰亡史』。この歴史的名著が一冊で読める待望の決定版である。
Amazon商品紹介ページより
この作品は1776年に発表された『ローマ帝国衰亡史』という壮大な作品を編訳し一冊にまとめたものになりますが、それでも500ページを超える大作になっています。
この作品について訳者のはしがきでは次のように解説されています。この本の魅力についてわかりやすくまとめられていますのでぜひご紹介したいと思います。
ギボンの『ローマ帝国衰亡史』は、世界をうごかした人々に感銘をもって読まれた歴史書としても有名です。なかでも著名な読者としては、英首相ウィンストン・チャーチル(同じく英首相クレメント・アトリー)、インドル首相ジャワハルラル・ネルー、経済学者アダム・スミス、などを挙げることができます。また哲学者バートランド・ラッセルも、この本に魅せられた一人でした。
チャーチルは、後年、『第二次大戦回顧録』でノーべル文学賞を得ていますが、その文学的才能は、青年時代に「衰亡史」の文体を模写して英文(国語)をよく学んだことによって培われたものでした。
この本とはじめて出遭ったときのことを、チャーチルは自伝のなかで次のように語っています。「時間に余裕のあるインドでのこの兵役の間に、少しでも教養を身につけようと思い、読書をすることにした。そこで、まずギボンからとりかかった。父もギボンが好きで、大事なところは暗記していたそうだ。このローマ史を読み出して、その物語と文章とにまったく圧倒されてしまった。馬屋から帰ってきて、外の日差しが強烈な日中の長い時間、夕暮れせまって次のポロの時間がくるまでの間、私はギボンをむさぼり読んだ」、と。
のちに当のインドの指導者となったネルーも、獄中でギボンのローマ史を読んだときの印象を、「流れるような旋律をもった文章を、どんな小説よりも夢中になって読んだ」と語っています。
また、ギボンと同時代の人であった、『国富論』の著者アダム・スミスは、書簡をとおして次のような讃辞をかれに贈っています。「わたしが直接知っている人たちだけでなく、文通している広範な人たちまで、だれもが認めていることですが、あなたは御著によって今日の欧州文壇の最高峰に立たれたわけです」、と。
PHP研究所、エドワード・ギボン、中倉玄喜訳『〈新訳〉ローマ帝国衰亡史』P1-2
1776年に発表された『ローマ帝国衰亡史』は時代を超えて読み継がれてきた名著です。上で述べられたように錚々たる偉人達にも愛されてきた作品です。私も上の解説を読んでこの作品がいかに偉大かを知り、読む前から期待でいっぱいになりました。
そしてこの本は現代を生きる私たちにとっても大きな意義があります。訳者は次のように述べています。少し長くなりますが重要な箇所ですのでじっくり読んでいきます。
本書を手にすることの意義は、そうした文学的興趣だけにとどまるものではありません。ギボン独自の魅力もさることながら、それよりはるかに重要な意義が、じつはローマ史を知ること自体のなかに存在しています。それは、わが国の行く末、さらには読者各位の人生とも、ふかく係わりのある問題です。
『帝国衰亡史』初巻の刊行から二世紀余。今日、西洋文明は人類史上初の「世界文明」となってすでに久しきにいたっています。その影響はまさに甚大であり、恒常的でもあります。意識されるとされざるとにかかわらず、近代日本の歩みと現状とが、そのことを如実に物語っています。また、将来どのような国が世界の指導的大国となろうと、次代の世界文明が現代西洋文明の延長上に在るものであることに、疑問の余地はありません。
さらに、文明の創造にも係わることとして、国家間の競争においては、先進諸国の一員とはなり得ても、筆頭とはなり得ず衰えていった国が数多くあることを、歴史は教えています。すなわち、新興国からやがてその文明圏で第一等の国となり、時代を画した国は、ごく少数にすぎません。現代日本もまた、必然、右のいずれかの途をたどります。
では、わが国が衰微の途を回避し、東洋文明の顕揚にもつながる歴史的繁栄への途を歩むためには、いったい、どのようなことが求められているのでしょうか?
方途は、ただひとつ。それには、しかるべき文明的判断のうえに立ち、あらためて、西洋いわゆる欧米についてよく学び、学びつくして、あらゆる面で欧米を越える以外にありません。
ここに、その努力の一環として、西洋の母体である古代ローマ帝国の歴史に、すべての日本人があえて—若干の—関心をよせるべき理由があるといえましょう。
さらに、ローマ史を一瞥することには、もうひとつ、大きな意義があります。それは、洋の東西に通じた、十全な世界観が得られるということです。すなわち、われわれは、日本人にして「世界人」ともなるのです。「世界人」たることは、なにより一個の人間として、素晴らしい存在です。その存在は、思いにおいて、広く地球規模であり、考えにおいては、ひとつの伝統的価値観にしばられることがありません。
そしてその視野の広さと思考の柔軟さゆえに、いかなる困難にも屈することがなく、やがてはそれぞれの人生において勝利します。また、人類全体の姿に通じているがゆえに、社会人としても、おのずと自国の正しい発展にも寄与し、ひいては世界の調和と繁栄にも寄与します。じつに、公私の両面からみて、あるべき存在といえましょう。
以上のように、ローマ史との邂逅は、われわれ現代の日本人にとって、意外にも、きわめて重要な意義をもつ出来事にほかなりません。本書『〈新訳〉ローマ帝国衰亡史』は、そうした出会いにもっともふさわしい書物であり、今回そのために邦訳、刊行されるにいたりました。
では、早速これから、皆さんとともに、そのギボンの名著をひもとくことにいたしましょう。
PHP研究所、エドワード・ギボン、中倉玄喜訳『〈新訳〉ローマ帝国衰亡史』P5-6
あれほどの繁栄を誇ったローマ帝国がなぜ崩壊していったのか。
単に蛮族が侵入したから崩壊したという単純な見方でいいのだろうか。
繁栄を謳歌するローマ帝国内で何が起こっていたのか。
それらを考えるのにこの作品はうってつけです。
そして歴史の流れを追いながら現代にも通ずる教訓がこの本では語られます。これが深いのなんの・・・!
小説のように読みやすいギボンの文章に加えて様々な考察が語られていく本書はやはり名著中の名著です。
そして章と章の間に置かれた訳者解説も非常に充実しています。
本編だけではわかりにくい箇所もこの解説のおかげでその流れも掴みやすくなります。
この本を読んでローマ帝国についてもっと興味が湧いてきました。知的好奇心が刺激される名著です。
ぜひおすすめしたい1冊です!
以上、「エドワード・ギボン『ローマ帝国衰亡史』~ローマはなぜ滅びたのかを考察!偉人達も愛した歴史書の名著!」でした。
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