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A・モンロー『紙と人との歴史』あらすじと感想~紙の発明と普及が世界をどのように変えたのか~仏教や中国、日本の歴史を知るためにも

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A・モンロー『紙と人との歴史』概要と感想~紙の発明と普及が世界をどのように変えたかを知るのにおすすめ!仏教や中国、日本の歴史も詳しく出てきます!

今回ご紹介するのは2017年に原書房より発行されたアレクサンダー・モンロー著、御船由美子、加藤晶訳の『紙と人との歴史 世界を動かしたメディアの物語』です。

早速この本について見ていきましょう。

その発明以来、様々な思想や宗教の運び手となり、東は仏教と共に朝鮮半島を経て日本へ、西はコーランと共にイスラム、アラブを経てヨーロッパへ。聖書も文学も楽譜も、そして政治的声明も、紙が伝えて世界に広がった。メディアとしての紙のあゆみをドラマチックに描く。

Amazon商品紹介ページより

この本は紙の発明やそれがどのように普及し世界を変えていったかをかなり詳しく見ていける骨太の作品となっています。

この作品は訳者あとがきで次のように絶賛されています。

「ページを繰る手が止まらない……見事な作品」(文芸評論誌『リテラリー・レビュー』)、「よい物語を見抜く目をもち、読み手を楽しませるスタイルを熟知した、素晴らしい作家である」(『タイムズ』紙)、「詳細で学術的な内容でありながらも流麗な文体で、紙が人類の文化にいかに大きな影響を及ぼしたかが綴られている」(作家、トリストラム・ハント)など、専門的な内容を読み物として楽しめる作品に仕上げたことで高い評価を受けている。世界各地にまたがる壮大な物語を、教科書的に概説するのではなく、連綿と続く大河小説のように描き出した著者の力量は見事としかいいようがない。

原書房、アレクサンダー・モンロー、御船由美子、加藤晶訳『紙と人との歴史 世界を動かしたメディアの物語』P445-446

絶賛の言葉が並んでいますが、この中でもトリストラム・ハントによる賛辞に注目です。

トリストラム・ハントは『エンゲルス マルクスに将軍と呼ばれた男』という作品を執筆した作家で、この本の面白さに私は度肝を抜かれることになりました。

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当ブログではマルクス・エンゲルスを学ぶ上でこの作品を参考に「マルクス・エンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」という連載記事も書いています。

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(1)エンゲルスを学ぶ意味とは~マルクスに多大な影響を与えた人物としてのエンゲルス像 これから先、「マルクスとエンゲルスの生涯と思想背景に学ぶ」シリーズと題して全69回、更新を続けていきます。これを読めばマルクスとエンゲルスの思想が出来上がる背景をかなり詳しく知ることができます。 そしてこれはマルクス・エンゲルスを知るだけではなく、宗教、思想、文化、政治、いや人間そのもののあり方についても大きな示唆を与えてくれるものになっています。

そのトリストラム・ハントが絶賛しているならばこの『紙と人との歴史 世界を動かしたメディアの物語』も面白いに違いありません。私は「あとがき」から本を読み始める派なのでこの賛辞を目にし、わくわくしながら本編を読み始めたのでした。

そして実際に読んでみると大当たり!この本はものすごい本でした!同じく「あとがき」でこの本についてまとめられた箇所がありますのでそちらを引用します。

本書でおもに描かれるのは、「文字を運び、人類の歴史を大きく動かした素材」としての紙の物語である。紙は誕生から二〇〇〇年以上にわたり、無数の信念や希望、発見、考察をのせて世界を駆け巡り、さまざまな知識、思想、宗教、学問を広める役割を果たしてきた。

中国の漢王朝で発明された紙は、「まるで紅葉が山々を染め上げていくように」中国全土へと広がった。やがてイスラム帝国に到達すると、科学と芸術の発信地、バグダードを経由してヨーロッパにたどり着き、ルネサンス、宗教改革、科学革命の原動力となった。近代に入り印刷機とタッグを組むと、紙はますますその数と伝搬の勢いを増し、各地で革命の引き金となる。

安価で持ち運びしやすい紙は、高価な羊皮紙、入手しづらいパピルス、かさばる甲骨や粘土板や木簡に取って代わり、さまざまな思想や情報を、書き手から遠く離れた場所で暮らす人々のもとへと運んだ。階級や性別を問わず誰もが新たな情報や知識や思想に触れられるようになったのも、大量生産が可能で安価な紙の力に負うところが大きい。

こうして紙というモノの足跡をたどっていくと、実際に目に見えるかたちの証拠があるからか、文化や宗教の歴史がぐっとリアルに感じられるからおもしろい。

原書房、アレクサンダー・モンロー、御船由美子、加藤晶訳『紙と人との歴史 世界を動かしたメディアの物語』P446-447

この作品はとにかく情報量がはんぱないです!

2世紀前半に中国で発明された紙がいかに普及していったのか、そしてそれが世界に広がっていく過程でどんなことが起こったのかというのをこれでもかというくらい詳しく見ていきます。

そもそも紙が発明される前の段階、つまり文字がどのように生み出されたのかというお話から中国の歴史、道教、仏教、イスラム教、キリスト教などとにかく多岐にわたって紙の歴史が語られます。

正直、あまりに情報量が多すぎて私はそれらすべてを記憶するのはあきらめました。一読するだけでは無理です。何度も何度も繰り返してノートに書き付けて勉強するというスタイルをとらなければかなり厳しいです。それほどの情報量です。これには私もびっくりでした。

ですが内容が難しいとか読みにくいとかそういうわけではありません。

先ほどのあとがきで「世界各地にまたがる壮大な物語を、教科書的に概説するのではなく、連綿と続く大河小説のように描き出した著者の力量は見事としかいいようがない。」と述べられていましたように、壮大な歴史小説のように読むことができます。シンプルに、読み物として面白いです!これは非常にありがたいです。

この本はとにかく情報量が多いですが私の中で特に印象に残っているのはやはり仏教と紙の関係性です。

そしてこのことを考えていくとやはり中国の歴史とは切り離すことはできませんし、さらには日本の歴史も絡んできます。

これらのことを「紙」という切り口から大きく論じていくこの本は非常に興味深かったです。

やはり中国という国はすさまじい技術と文化を持っていたのだなというのを改めて思わされました。日本仏教の歴史を学ぶにしてもやはり中国史は避けては通れないということを痛感しました。中国史はこれまでどうも苦手意識がありなかなか手が出ていなかったのですがこれから先はそうも言ってられないなと感じました。

この本はとにかくスケールが大きいです。読めばきっと驚くと思います。そして「宗教は宗教のみにあらず」ということを強く感じると思います。「紙」という物質、そしてそれが受容される時代背景がいかに宗教や文化に影響を与えたかというのが一目瞭然です。これは宗教や文化を考える上で非常に興味深いものでありました。

情報量が多く、骨太な本となっていますがぜひおすすめしたい逸品となっています。

以上、「A・モンロー『紙と人との歴史』紙の発明と普及が世界をどのように変えたのか~仏教や中国、日本の歴史を知るためにも」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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